Lilly が NVIDIA Blackwell 搭載の DGX SuperPOD を活用し、製薬業界最大規模で最もパワフルな創薬向け AI ファクトリーを展開

1,000 基以上の NVIDIA Blackwell Ultra GPU を搭載した AI ファクトリーが、基盤モデルとフィジカルAI、およびエージェント型 AI を活用した最新の科学研究を支援
投稿者: Rory Kelleher

医薬のパイオニアである Lilly が、製薬会社が完全に所有し、運営する最大規模の最もパワフルな AI ファクトリーを導入しています。これは、製薬企業初の DGX B300 システムで構成された NVIDIA DGX SuperPOD です。

1,016 基の NVIDIA Blackwell Ultra GPU を搭載し、NVIDIA GTC Washington D.C. で発表された このAI ファクトリーは、創薬タイムラインを短縮し、産業規模でゲノミクス、個別化医療、分子設計の分野で画期的な進歩を加速させます。

動画提供: Lilly

この AI ファクトリーは、創薬と開発のための大規模な生体医学基盤と最先端のモデルのトレーニングに使用されます。 一部のモデルは、Lilly TuneLab で利用可能になります。Lilly TuneLab は、10 億ドル分の Lilly の独自データを基盤に構築された創薬モデルへのアクセスをバイオテクノロジ企業に提供する、AI および機械学習のプラットフォームです。

TuneLab は、ヘルスケアとライフサイエンス向けに Lilly のモデルと NVIDIA Clara オープン基盤モデルを提供する最初の創薬プラットフォームであり、バイオテック エコシステム向けの AI アクセスをさらに拡大します。

TuneLab は、NVIDIA FLARE 上に構築された連合学習インフラを採用しています。これにより、バイオテクノロジ企業は強力な独自の AI モデルを活用し、自社のデータをプライベートかつ他のユーザーから分離することを可能にします。 より多くの企業が参加するにつれて、モデルは向上し、すべてのユーザーに恩恵をもたらします。

Lilly の最高 AI 責任者である Thomas Fuchs 氏は次のように述べています。「Lilly の基盤モデルは、化学者にとって新しい可能性を創出し、従来の手法では手の届かなかった新しいモチーフと原子の構成を発見することを支援しています。AI は、より優れ、より個別化された高精度の医薬品の開発と提供を加速する手段をもたらします」

Lilly の AI ファクトリーは、NVIDIA DGX SuperPOD と共に提供される NVIDIA のフルスタック AI ファクトリー アーキテクチャを搭載しています。これには、アクセラレーション コンピューティング、NVIDIA Spectrum-X Ethernet ネットワーキング、そして最適化された AI ソフトウェアが含まれており、規制の厳しいヘルスケアとライフサイエンス業界向けに、安全で拡張可能な専用プラットフォームを提供します。

NVIDIA Mission Control ソフトウェアにより、Lilly は、1,000 基以上の GPU 上で安全かつ効率的に DGX SuperPOD の管理、ワークロードのオーケストレーション、パフォーマンスの監視、AI オペレーションの自動化を実現できます。

創薬、精密医療分野における AI の応用

Lilly の科学者は、AI ファクトリーを活用してゲノム配列全体を分析し、患者の転帰を予測し、生化学の多様な可能性を模索することができます。

Lilly のエグゼクティブ バイス プレジデント 兼 最高情報およびデジタル責任者である Diogo Rau 氏は述べています。「150 年の歴史の中で、Lilly は常に科学と技術を密接に結びつけてきました。科学だけに焦点を当てるなら、実験、論文、もしくは治療法を得るだけです。しかし、この AI ファクトリーを通じて得られるアクセラレーテッド コンピューティングのように科学と技術を組み合わせれば、数百万の人々に治療をもたらす大規模な成果を達成することができるのです」

NVIDIA BioNeMo プラットフォームを活用することで、Lilly は過去数百万回の実験の成果と公開された研究を組み合わせた AI モデルをトレーニングし、これまで以上に高い精度とスピードで新しい抗体、ナノボディ、新規分子の生成とテストを実現できます。

AI ファクトリーは、新しいバイオマーカーの発見と、変性疾患のための遺伝子治療の設計にも応用することができる、とFuchs 氏は述べています。

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そのインパクトは創薬を超えて広がります。

AI ファクトリーの活用により、Lilly はメディカル ライティングやその他の内部ワークフローを支援し、臨床試験を高速化する大規模言語モデルを構築できます。

また、オープンソースの MONAI フレームワークと組み合わせることで、AI ファクトリーは精密医療における Lilly の画像ベースの研究を加速できます。 大規模な画像データセットに対するディープラーニングにより、処理時間を数ヶ月から数日に短縮し、より迅速で、より個別化された治療が可能になります。

フィジカルおよびエージェント型 AI を活用した研究とバイオものづくり

AI ファクトリーは、フィジカル AI の活用を含め、Lilly の需要の高い医薬品を製造する能力を向上させ、サプライチェーンの信頼性を強化します。

動画提供: Lilly

NVIDIA Omniverse プラットフォームや NVIDIA RTX PRO Server などの技術を活用することで、製薬会社は製造ラインのデジタル ツインを構築し、現実世界で物理的な変更を加える前に、サプライチェーン全体のモデル化、ストレステスト、最適化を行うことができます。

デジタル ツインは、生産環境の安全性を向上させ、品質保証とその他のバイオものづくり業務を高速化し、最終的には患者の医薬品をより迅速に届けることができます。

Lilly はまた、工場において品質検査や、医薬品や注射器などの治療用部品といった製品の搬送にロボットを活用し、業務の最適化と生産ラインの稼働を実現しています。

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「患者が必要とする医薬品の提供に際し、機械のダウンタイムは大きな遅延をもたらす可能性があります」と、Fuchs 氏は述べています。 「私たちは、AI を活用してシステムの最適化と、ピーク パフォーマンスの推進に注力しています。」

NVIDIA Isaac プラットフォームの活用により、Lilly はインテリジェントなロボティクスを展開し、治療薬生産の近代化と、労働力の支援を実現できます。たとえば、NVIDIA Isaac Sim により、開発者は製薬ワークフローに適用できる AI 主導のロボティクス ソリューションをシミュレーションし、テストできます。

さらに、NVIDIA NeMo ソフトウェアを活用することで、Lilly はデジタルおよび現実世界のラボ全体でリーズニング、計画、行動できる AI エージェントを構築し、新しい分子の生成、シリコでの治療法の設計、そしてインビトロ試験を支援することができます。

「AI エージェントは、24 時間 365 日体制で稼働し、人が実験する時間や能力のないアイデアを模索することができます」と、Rau 氏は述べています。 「結局のところ、機械学習ではなく、人間の学習がすべてです。 機械は、新しい分子のための新しいアイデアを刺激することで、人間がより賢くなる手助けをしているのです。」

米国のリーダーシップと経済成長を推進

CB Insights によると、Lilly はすでに、AI 対応の製薬企業として第 1 位にランクされています。また、AI イノベーション スコアが最高であり、業界内の AI 対応医薬品開発プラットフォームとのパートナーシップが最も多い企業として評価されています。

新しい AI ファクトリーの導入により、Lilly は米国および世界的な製薬業界の AI ネイティブなリーダーになるでしょう。

コンピューティング能力の飛躍は計り知れないものです。

1992 年、Lilly の Cray スーパーコンピューターは、科学コンピューティングの頂点でした。 今日では、新しい AI ファクトリー内の NVIDIA Blackwell Ultra GPU 1 基が、約 700 万台の Cray システムに匹敵する性能を搭載しています。

AI ファクトリーは、1,016 基の Blackwell Ultra GPU で構成され、9,000 PFLOPS 以上の AI パフォーマンスを実現します。 つまり、毎秒 900 京を超える計算が可能になります。

NVIDIA とのコラボレーションは、Lilly のイノベーション戦略の基盤となるものであり、米国における製造、 研究開発拠点の拡大に向けた Lilly の 500 億ドルの投資計画に基づいています。この計画には、4 つの新施設に加え、インディアナ州に建設予定の Lilly Medicine Foundry と呼ばれる 45 億ドル規模の研究施設が含まれており、先進的な製造技術と医薬品開発を推進します。

これらのイニシアティブにより、製造業と建設業における 13,000 件の高賃金の雇用創出が見込まれています。また、Medicine Foundry は、エンジニア、科学者、運用担当者、研究室技術者など、約 500 件の新しい雇用を創出します。

独自のデータをインテリジェンスに変換することで、Lilly は患者を支援し、経済価値を創出し、先進製造業と規制産業における米国のリーダーシップを強化します。

「私たちはまだまだ、医薬品設計と開発における AI の可能性の表面をなぞっているに過ぎません」と Fuchs 氏は述べています。 「この新しい AI ファクトリーと、バイオテクノロジ コミュニティ全体でのコラボレーションは、医薬品の設計、構築、開発の方法を根本的に変えるでしょう。」

NVIDIA の創業者/CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) による GTC Washington D.C. の基調講演、および数々のセッションをご視聴ください。