NVIDIA DGX-2および加速されたPython ライブラリが、トレーディング戦略検証におけるバックテスト性能のベンチマークとして用いられるSTAC-A3 アルゴリズムにて、これまで類を見ない高速化をもたらす
NVIDIA の AI プラットフォームが、ヘッジファンド業界でトレーディング戦略検証として用いるバックテストの性能評価ベンチマークアルゴリズムの実行において、6,000 倍以上の高速化をもたらしています。
GPU によるこの莫大な高速化は、金融サービス業界全体にとって、大いに意味があります。
その数 1 万社を超えるヘッジファンドは、より高機能なモデルを設計し、より厳しいストレステストを課したとしても、バックテストにかかる工数は今までの数日ではなく、ほんの数時間で済みます。また、クオンツ担当、データ サイエンティスト、およびトレーダーは、よりスマートなアルゴリズムを構築し、より迅速に運用を開始することもできます。GPUを用いることでハードウェアにおいても何百万ドルという節約につながります。
グローバル アルゴリズム トレーディング マーケット 2016–2020 のレポートによれば、公開取引の約 90% は、金融取引アルゴリズムによるものです。ウォールストリートジャーナルによると、特にクオンツトレーディングは、今日では米国の株式市場での全取引のおよそ 3 分の 1 にまで成長しました。
今回の画期的なベンチマーク成果は、証券テクノロジー分析センター (STAC) によって検証されました。STAC は、会員として世界の 390 社以上の大手銀行、ヘッジファンド、金融サービステクノロジー企業を擁しています。
NVIDIA は STAC-A3 を使用して、コンピューティング プラットフォームの能力を実証しました。STAC-A3 は、トレーディング戦略が過去データに対し、どのような成果を成しえたか検証するバックテストアルゴリズムの性能を評価する金融業種向けベンチマークスイートです。
NVIDIA は、加速化された Python ライブラリを NVIDIA DGX-2 System 上で実行し、これまであったいくつかのSTAC-A3 ベンチマーク結果を打ち破りました。あるケースでは、1バスケット50金融商品を含む60分間検証において3,200 回のシミュレーションというこれまでの記録に対し、2,000 万回のシミュレーションを実行しました。これは STAC-A3.β1.SWEEP.MAX60というベンチマークです。詳細については、公式の STAC レポートおよびNVIDIAの解説資料をご参照ください。
STAC-A3 パラメータースイープ ベンチマークは、現実的なデータ量を使用し、単純化された取引アルゴリズムの多くのバリエーションをバックテストして、各シミュレーションにおける損益スコアを決定します。基礎となるアルゴリズムは単純ですが、多くのバリエーションを並行してテストすることで、現実に近い負荷をシステムに与えています。
元ウォールストリートジャーナルのクオンツ担当で、現在は STAC の分析調査担当ディレクターを務めるマイケル・デビッシュ (Michel Debiche) は、次のように述べています。「ある一群の過去のデータに対して多数のシミュレーションを実行できることは、多くの場合、トレーディング会社および投資会社にとって重要です。1 つのアルゴリズムの中でより多くのパラメーター組み合わせを検証することで、より最適化されたモデル、ひいては、より収益性の高い戦略立案につながる可能性があります。」
このベンチマークの結果は、16 基のNVIDIA V100 GPU の並列処理能力を持ったDGX-2 サーバーと、NVIDIA CUDA-X AI ソフトウェアに内包されるNVIDIA RAPIDS および Numba 機械学習ソフトウェアを用いたPythonプログラムによって達成されました。
RAPIDSは継続的に機能向上を施しているライブラリであり、一般的な Python におけるデータサイエンス タスクのGPUアクセレレーションを単純化します。Numbaを用いることで、データ サイエンティストはPythonで記述したコードを、GPUのネイティブ CUDAにコンパイルすることが可能であり、RAPIDS の機能を容易に拡張できます。
データ サイエンティストやトレーダーは、GPU プログラミングの深い知識がなくても、RAPIDS および Numba ソフトウェアを利用することで、このパフォーマンスを再現できます。
画像提供: Lorenzo Cafaro