NVIDIAはハードウェア・プラットフォームでもっともよく知られていますが、当社のソフトウェアも、最先端のGPUアクセラレーテッド・コンピューティングの発展において重要な役割を担っています。
このたび、その一連のソフトウェアをパッケージ化した「NVIDIA SDK」に、重要なソフトウェア更新を行い、当社の年次「GPUテクノロジ・カンファレンス」(GTC)で発表しました。当社の新しいPascalアーキテクチャを採用したNVIDIA SDKによって、開発者は、より簡単に当社のプラットフォーム上で優れたソリューションを開発できるようになります。
NVIDIAの目標は、より多くのソフトウェア機能を、さらに多くの開発者に提供することです。百万人以上の開発者が、すでに当社のCUDAツールキットをダウンロードしています。また、400を超えるGPUアクセラレーテッド・アプリケーションと、さらに数百のゲーム・タイトルで、当社のソフトウェア・ライブラリが利用されています。
ここでは、次の7つの主要領域で行われたソフトウェア更新の内容をご紹介します。
1)ディープラーニング
- 新機能 — cuDNN 5。当社のディープ・ニューラル・ネットワークのプリミティブからなるGPUアクセラレーテッド・ライブラリです。cuDNN 5には、Pascal GPUのサポート、動画などのシーケンシャル・データに用いられるリカレント・ニューラル・ネットワークのアクセラレーション、医療、石油・ガスなどの業界で利用されるさらなる拡張機能が追加されました。
- この機能の価値 — ディープラーニング開発者は、cuDNNの最適化されたルーチンを利用することで、低レベルのパフォーマンス・チューニングではなく、ニューラル・ネットワーク・モデルの設計やトレーニングに集中できます。cuDNNは、GoogleのTensorFlow、カリフォルニア大学バークレー校のCaffe、モントリオール大学のTheano、ニューヨーク大学のTorchなど、主要なディープラーニング・フレームワークを高速化しています。そして、これらのフレームワークが、Amazon、Facebook、Googleなどが利用するディープラーニング・ソリューションを支えています。
2)アクセラレーテッド・コンピューティング
- 新機能 — CUDA 8。並列コンピューティング・プラットフォームの最新バージョンです。CUDA 8によって、開発者は、統合メモリやNVLinkなど、Pascalの強力な新機能に直接アクセスできるようになります。また、このリリースには、ロボティック・パス・プランニング、サイバー・セキュリティ、ロジスティックス分析などに利用できる新たなグラフ分析ライブラリのnvGRAPHも含まれ、ビッグデータ分析の分野におけるGPUアクセラレーションの応用範囲が広がります。開発者からの高い評価が期待される新機能の1つに、CPUコードやGPUコードの潜在的なボトルネックを自動的に識別する、クリティカル・パス分析があります。また、ボリューム・データやサーフェス・データを視覚化するためのKitware ParaView用プラグインとして、NVIDIA IndeX 1.4が利用できるようになりました。NVIDIA IndeX 1.4は、高品質のレンダリングによる大規模ボリュームのインタラクティブ・ビジュアリゼーションをParaViewユーザーにもたらします。
- この機能の価値 — CUDAは、「GPUコンピューティングのバックボーン」と呼ばれるようになりました。当社がこれまで数百万個のCUDA対応GPUを販売してきた結果、もっとも重要な科学的アプリケーションの多くでCUDAが利用されるようになっています。CUDAは、HIVがタンパク質シェルによって自己の遺伝物質を保護する方法を理解する研究や、3Dループなど遺伝子のフォールディング・パターンの発見によってヒトゲノムの謎を解明する研究などで、重要な発見に貢献してきました。
3)自律走行車
- 新機能 — GTCでは、当社のエンドツーエンドの自律走行車用HDマッピング・ソリューションも発表しました(「How HD Maps Will Show Self-Driving Cars the Way」を参照)。当社は、この最先端システムを、自動車業界向けのディープラーニング・プラットフォームの一部であるNVIDIA DriveWorksソフトウェア開発キット上で構築しました。
- この機能の価値 — 認知、位置測定、プランニング、ビジュアリゼーションの各アルゴリズムを取り入れたDriveWorksは、自律走行車のコンピューティング・パイプラインを開発する自動車メーカー、Tier1サプライヤ、新興企業向けに、ライブラリ、ツール、リファレンス・アプリケーションを提供します。DriveWorksにエンドツーエンドのHDマッピング・ソリューションが追加されたことで、きわめて詳細なマップの作成や更新を、より簡単にすばやく行えるようになります。NVIDIA DIGITSやNVIDIA DRIVENETとともにこれらのテクノロジを利用すれば、運転がより安全かつ効率的になり、より楽しいものになるでしょう。
4)デザイン・ビジュアリゼーション
- 新機能 — GTCでは、当社のフォトリアリスティック・レンダリング・ソリューションであるNVIDIA Irayを、バーチャル・リアリティ(VR)業界にご紹介しました。新しいカメラを搭載したIrayを使用すれば、VRパノラマを作成して、それをVRのかつてない精度で見ることが可能になります(「NVIDIA、IrayによってインタラクティブなフォトリアリズムをVRにもたらす」を参照)。また、AdobeによるNVIDIAマテリアル定義言語のサポートについても発表しました。これにより、クリエイティブな専門家に、幅広く物理ベース・マテリアルの可能性を提供します。
- この機能の価値 — NVIDIA Irayは、デザインのフォトリアリスティックなモデルをすばやく作成する機能をデザイナーに提供し、市場投入に要する期間を短縮するため、さまざまな業界で利用されています。当社は、Dassault SystèmesやSiemens PLMをはじめ、大手ソフトウェア・メーカーにIrayのライセンスを供与しています。また、Irayは、Autodeskの3ds MaxやMayaなどの人気の高いソフトウェア用のプラグインとして、NVIDIAからも提供されています。
5)自律型マシン
- 新機能 — 当社は、周囲の環境とやりとりして学習する各種デバイスに、ディープラーニング機能を提供しています。前述のNVIDIA cuDNN 5は、一般的なディープ・ニューラル・ネットワーク向けのディープラーニングの推論パフォーマンスを高め、埋め込みデバイスでのより迅速な判断や、より解像度の高いセンサとの連動を可能にします。NVIDIA GPU推論エンジン(GIE)は、アプリケーション展開用のパフォーマンスの高いニューラル・ネットワーク推論ソリューションです。GIEによって、開発者は、NVIDIA GPUで最速の推論パフォーマンスを実現する、トレーニング済みの最適化されたニューラル・ネットワーク・モデルを開発できるようになります。
- この機能の価値 — ロボット、ドローン、潜水機などのインテリジェンス・デバイスには、自律機能が欠かせません。Jetson TX1開発者キットを支えるJetpack SDKには、高度なコンピュータ・ビジョンやディープラーニングを実現するライブラリやAPIが含まれており、開発者は、見て理解するだけでなく、環境とのやりとりまで行える、非常に高性能な自律型マシンを構築できるようになります。
6)ゲーム
- 新機能 — 当社は最近、リアルタイム・グラフィックス用の開発ツール、サンプル・コード、高度なライブラリと、ゲーム用のシミュレーションを統合したNVIDIA GameWorks用に、3つの新しいテクノロジを発表しました。それぞれ、「ボリューメトリック・ライティング」、「ボクセル・ベースのアンビエント・オクルージョン」、「ハイブリッド・フラスタム・トレース・シャドウ」です。
- この機能の価値 — 多くの開発者が、すでにこれらの新しいライブラリを『Fallout 4』などのAAAゲーム・タイトルに取り入れています。また、GameWorksテクノロジは、Unreal Engine、Unity、Stingrayといった多くの主要ゲーム・エンジンにも採用されています。これらのエンジンの利用は、建設業界でのバーチャルな建物の中を歩き回る体験や、トレーニング、さらには自動車の設計といった、ゲーム以外の用途にも拡大しています。
7)バーチャル・リアリティ
- 新機能 — 当社は、VR開発者向けのAPI、サンプル・コード、ライブラリのスイートであるVRWorksの機能を継続的に拡充しています。たとえば、Multi-Res Shadingは、ゆがんだVR画像のピクセル密度により適した解像度で画像の各部をレンダリングすることで、パフォーマンスを最大50%向上させます。VRWorksダイレクト・モードでは、VRヘッドセットを、一般的なデスクトップ・モードのWindowsモニターとしてではなく、VRアプリケーションでのみアクセスできるヘッドマウント・ディスプレイとして認識します。
- この機能の価値 — VRWorksによって、ヘッドセットやアプリケーションの開発者は、非常に高いパフォーマンスや、きわめて低いレイテンシのほか、プラグアンドプレイの互換性も実現できます。GTCでは、VRWorksが提供する機能を開発者がどのように利用しているかご覧いただけます。会場では、Sólfar Studios(「Everest VR」)、Fusion Studios(「Mars 2030」)、Oculus、HTCなどのパートナーとともに、これらの最新テクノロジのデモを行う予定です。