量子物理学、デジタル生物学、気候研究の分野において、世界中の研究者は新たな発見の新境地を目指すべく、アクセラレーテッド コンピューティングという普遍的な科学機器を活用しています。
NVIDIA は、今週ミズーリ州セントルイスで開催される SC25 カンファレンスにて、昨年世界で発表された新たな科学システムの 80 以上に、NVIDIA アクセラレーテッド コンピューティング プラットフォームが搭載され、合計 4,500 エクサフロップスの AI パフォーマンスに貢献していることを発表しました。
その中でも最新のものは、テキサス先進コンピューティング センター (TACC) にある、300 ペタフロップスのシステム「Horizon」で、学術用スーパーコンピューターとしては米国最大となります。
NVIDIA GB200 NVL4 と NVIDIA Vera CPU サーバーを搭載し、NVIDIA Quantum-X800 InfiniBand ネットワーキングで相互接続された Horizon は、2026 年の稼働開始を予定しており、科学と工学分野における画期的な進歩を加速し、米国の研究コミュニティに発見とイノベーションのための前例のないコンピューティング能力を提供します。
これは、ヘルスケア、天候・気象モデリング、ロボティクス、製造、量子コンピューティング研究、材料科学などの分野で、各国や民間企業による世界的な研究を推進している NVIDIA アクセラレーテッド スーパーコンピューターの新たな波における最新の事例です。
NVIDIA のフルスタックのアクセラレーテッド コンピューティング プラットフォームは、GPU、CPU、DPU、NIC、スケールアウト スイッチのほか、CUDA-X ライブラリや NVIDIA AI Enterprise ソフトウェアを含み、システムが持続可能かつ前例のないスピードで科学を進歩させるために必要な統合アーキテクチャ、拡張性、効率性を提供します。
Horizon が TACC にもたらす科学イノベーション
4,000 基の NVIDIA Blackwell GPU を搭載する Horizon スーパーコンピューターは、FP4 精度で最大 80 エクサフロップスの AI コンピューティングを提供できます。Horizon は、以下を含む特定の科学モデリングおよびシミュレーションのアプリケーションをサポートするために設計されています。
- 疾病のメカニズムのシミュレーション: 研究者は、分子動力学ソフトウェアと AI を活用したシミュレーションを用いて、ウイルスの研究を計画しています。
- 宇宙全体の恒星や銀河のモデリング: 天体物理学者は、星や銀河の形成方法の探求やジェイムズ ウェッブ宇宙望遠鏡で最近発見された遠い銀河のシミュレーションの実施を計画しています。
- 原子スケールでの新素材研究: 科学者は、乱流、複雑な結晶構造を持つ固体、量子材料の伝導性の研究を計画しています。
- 地震波のマッピングによる地震対策: 研究者は、地震ハザード マップの精度向上や、地震発生時の断層破断のシミュレーションの実施を計画しています。
TACC の高性能コンピューティング担当ディレクターである John Cazes 氏は次のように述べています。「Horizon により、科学者は前例のない規模で野心的な科学研究の推進が可能になります。この新しいシステムは、研究コミュニティが AI 駆動型の取り組みを推進し、ウイルス感染の分子動力学の解読、遠くの銀河からのデータの探索、数十年先の地震活動のシミュレーションに取り組む方法に変革をもたらすでしょう」
アルゴンヌ国立研究所およびロスアラモスの国立研究所に新しい AI スーパーコンピューターを設置
米国エネルギー省 (DOE) は先日、NVIDIA と提携し、イリノイ州アルゴンヌ国立研究所 (ANL) とニューメキシコ州ロスアラモス国立研究所 (LANL) に 7 つの新しい AI スーパーコンピューターを構築することを発表しました。
ANL では、NVIDIA Blackwell GPU と NVIDIA ネットワーキングを搭載した 2 つの AI スーパーコンピューティング システムが、DOE の科学機器とデータ資産のネットワークと接続され、研究者が科学およびエネルギー分野向けの強力な AI モデルを開発できるようにします。
研究所の複合施設で最大のシステムである Solstice は、10 万基の NVIDIA Blackwell GPU を搭載します。NVIDIA GB200 NVL72 システムを搭載したこの規模のシステムは、AI トレーニング コンピューティング向けに 1,000 エクサフロップスという驚異的な性能を発揮します。これは、2025 年 6 月時点 TOP500 リスト全体の AI トレーニング コンピューティングの合計 (約 650 エクサフロップス) を 50% 以上上回ります。
もう 1 つの ANL システムである Equinox は、1 万基の NVIDIA Blackwell GPU を搭載します。同研究所には、Minerva、Janus、Tara の 3 つの NVIDIA アクセラレーテッド システムが追加され、AI 推論と労働力開発を支援します。
LANL では、HPE が Mission および Vision システムを構築、提供し、両システムにはNVIDIA Vera Rubin プラットフォームと NVIDIA Quantum-X800 InfiniBand ネットワーキング プラットフォームが搭載されます。Mission は国家核安全保障局向けの機密情報を取り扱うアプリケーションを実行します。Vision は基盤モデルやエージェント型 AI を含むオープンな科学研究を強化します。
どちらも 2027 年の運用開始を予定しています。
これら 7 つの DOE システムは、今年、ローレンス バークレー国立研究所との共同発表に続くものです。Doudna は、2026 年に稼働予定の科学的発見のためのスーパーコンピューターで、NVIDIA Vera Rubin アーキテクチャと NVIDIA Quantum-X800 InfiniBand を搭載し、核融合エネルギー、材料科学、創薬、天文学の分野で 11,000 人以上の研究者を支援できる態勢を整えています。
欧州のユーリッヒ スーパーコンピューターが Linpack ベンチマークでエクサフロップの壁を突破
大西洋の向こう側の欧州では、スイス国立スーパーコンピューティング センターやイタリアの CINECA スーパーコンピューティング センターのシステムを含む NVIDIA アクセラレーテッド スーパーコンピューターが大陸全体の科学研究を推進しています。
ドイツでは、ユーリッヒ スーパーコンピューティング センターの JUPITER システムが、倍精度 (FP64) 演算性能を測定する HPL ベンチマークで、エクサフロップス (毎秒 100 京回の浮動小数点演算) のパフォーマンスを達成しています。

9 月より稼働した JUPITER は、NVIDIA Quantum-2 InfiniBand と相互接続された 24,000 基の NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip を搭載する欧州初のエクサ スケール コンピューターです。高解像度の地球規模の気候シミュレーションを含む様々な応用分野で既に活用されています。
ユーリッヒ スーパーコンピューティング センターのディレクターである Thomas Lippert 氏は次のように述べています。「JUPITER の 1 エクサフロップス以上のコンピューティング能力により、研究者はキロメートル単位の解像度で、地球全体のシミュレーションを実行できるようになりました。このコンピューティング能力の飛躍によって、欧州の研究者は科学分野全体で更なるレベルでの複雑さや規模の AI モデルおよびシミュレーションの実行が可能になります」

過去 1 年 では、他にも以下のような主要な欧州のスーパーコンピューターが発表されています。
- Blue Lion — 2027 年初頭に稼働予定。ドイツのライブニッツ スーパーコンピューティング センター (LRZ) に設置され、NVIDIA Vera Rubin プラットフォームを搭載し、気候、乱流、物理学、機械学習の研究を支援
- Gefion — DCAI が運用するデンマーク初の AI スーパーコンピューターは、NVIDIA DGX SuperPOD システムによりソブリン AI 能力を提供し、国内のイノベーターによる量子コンピューティング、クリーン エネルギー、バイオテクノロジーなどの分野での研究を推進
- Isambard-AI — ブリストル大学に設置されているイギリスで最も強力な AI スーパーコンピューターは、国民保健サービス データでトレーニングされたマルチモーダル基盤モデルである Nightingale AI や、ウェールズ語およびその他のイギリス言語で高品質の AI リーズニングを可能にする取り組みである UK-LLM などのプロジェクトで活用

日本、韓国、台湾のスーパーコンピューターが産業全体の研究を推進
ソブリン AI 投資と民間セクターの取り組みを通じて、NVIDIA のアクセラレーテッド AI インフラが、日本、韓国、台湾での科学研究を支援しています。
日本の主要な国立研究機関である理化学研究所は、SC25 において、NVIDIA GB200 NVL4 システムを搭載した 2 つの新しいスーパーコンピューターを日本国内に導入することを発表しました。1 つは科学のための AI 研究向けに 1600 基の GPU が搭載されたシステム、もう 1 つは量子コンピューティング研究向けに 540 基の GPU が搭載されたシステムを構築します。

理化学研究所は、「富岳NEXT」(開発コードネーム)の構築に向けて富士通および NVIDIA と共同設計を進めています。本システムは、地球システムのモデリング、創薬研究、先端製造アプリケーションを推進するスーパーコンピューターで、FUJITSU-MONAKA-X CPU を搭載し、NVLink Fusion を介して NVIDIA 技術と接続することを基本設計の中で検討します。
東京工科大学は、NVIDIA DGX B200 システムを活用した AI スーパーコンピューターを構築し、100 基以下の GPU で約 2EFLOPS の FP4 理論性能を実現しています。このシステムは、大規模言語モデルの開発やデジタルツインの構築に利用されるほか、学生の AI 教育の基盤システムとしても活用されます。
産業技術総合研究所は近年、量子コンピューティングに特化した世界最大級研究用スーパーコンピューター ABCI-Q を稼働し、本システムには 2,000 基以上の NVIDIA H100 GPU を搭載しています。

韓国政府は、ソブリン クラウドと AI ファクトリーに 5万 基以上の NVIDIA GPU を展開する予定です。業界リーダーの Samsung、SK Group、Hyundai Motor Group も、NVIDIA Blackwell GPU を搭載した AI ファクトリーを構築し、研究と製造を加速しています。
台湾では、NVIDIA が Foxconn Hon Hai Technology グループと協力して、1 万基の NVIDIA Blackwell GPU を搭載した AI ファクトリーのスーパーコンピューターを構築し、研究者、スタートアップ企業、産業におけるイノベーションを推進しています。
そのほかにも NVIDIA アクセラレーテッド スーパーコンピューティングに関する詳細や、NVIDIA のハイパースケールおよびハイ パフォーマンス コンピューティング担当バイス プレジデント イアン バック (Ian Buck) による SC25 での対談をご覧いただけます。
