テスラモーターズCEOのイーロン・マスク、自律走行車の未来はすぐそこまで来ていると語る

投稿者: Tony Kontzer

自律走行自動車用のコンピューティング・プラットフォームをリリースしようと準備を進めるのであれば、やはり、自動車業界でイノベーションをリードするところと同乗するのがいいでしょう。

2015 GPU Technology Conferenceの基調講演でNVIDIAのCEO兼共同創立者、ジェンスン・フアン(Jen-Hsun Huang)がしたのがまさにそれでした。自律走行自動車用コンピュータのDRIVE PXを発表したあと、テスラモーターズCEOのマスクと対談をしたのです。

マスクは、いつもながらアクセル全開のトークで、サンノゼのマッケナリー・コンベンション・センターに集まった4000人を前に、こう語りました。「自律走行車は、もうすぐ、ごく当たり前のものになるでしょう。この問題は、もう解決したに等しいと私は思っています。なにをすればいいのかわかっていますし、数年のうちにはそこまで行けるはずです。」

マスクはSpace Xの共同創立者兼CEOでもあり、ポッド型輸送機という意欲的なアイデアを抱えていますし、先日は、人工知能の開発は「悪魔を召喚するようなもの」だと言い放ったこともあるのですが、今回の対談では次のように語り、今後は、NVIDIAによるGPUテクノロジの開発が鍵を握るという認識を示しました。

「TegraでNVIDIAが推進していることには注目しています。自律走行の未来を左右するものだと思うのです。」


NVIDIAのジェンスン・フアンCEOとの対談で、自動車の未来について野心的な見方を語るTeslaのイーロン・マスクCEO

もちろん、マスクも、自律走行車が簡単に実用化できると考えているわけではありません。機能の開発から製品化までは長い道のりがあります。たとえば、人間が運転する自動車より自律運転のほうが安全だという実績が2年も3年も積み上がるまで、規制当局は自律走行車を認可しようとしないだろうとマスクも考えています。

人間が運転する車からコンピュータが運転する車へとどのような形で移行すればいいのか、規制当局は悩むことになるだろうし、そのとき、人間と自動車の関係が根本的に変化することになるだろうという指摘もありました。

つまり、そのうち、運転席に座る人間が信用できなくなるということです。

「かなり先のことにはなりますが、危険すぎるとして人間による運転が違法となる時代が来るかもしれないわけです。」


Tesla車では大型スクリーンの駆動にTegraプロセッサが2個使われています。

自律走行車を時速10km前後で走らせるのはそれほど難しくないが、歩行者がいて交差点があり、障害物や目を引くものがいろいろとある都市部や郊外で時速20kmから80kmで走らせるのは大変だろうという指摘もありました。そこまでできてしまえば、「時速80km以上で高速道路を走るのは、また、簡単になります」とのことです。

考えなければならない点はまだあります。自律走行車が実用化されても、移行には時間がかかるというのです。いま、道を走っている車は20億台で、自動車産業が世の中に毎年送りだしている新車は1億台――つまり、明日から新車のすべてを自律走行車にしたとしても、移行には20年かかる計算になります。

「ぽんと移行できるわけではないのです。かなりの時間がかかります」とマスクは指摘しました。

セキュリティの問題もあります。フアンCEOからの質問に答える形で、マスクは、ハッカーに車を乗っ取られる脅威が問題になるのは、ハンドルとブレーキ・ペダルがなくなったときだろうとの見方を示しました。それまでは、なにか問題があれば、自動運転を解除してドライバが自分の手と足で運転すればいいわけです。


NVIDIA CEOのジェンスン・フアンは、自分もTesla Model Sを持っているのだが、Teslaの車は出荷後もOTA(Over The Air)でアップデートされ、最新の状態に保たれるのがいいと語りました。

このように懸念材料はいろいろとあるわけですが、それでもマスクは、近い将来、自律走行自動車への移行が不可避だと考えています。

「自律走行車はごく普通のものになるだろうと思っています。エレベータのように、ね。エレベータも、昔は、オペレータが動かしていましたが、そのうち、電気回路の指示で人が待つ階へと来るようになりました。自動車も同じ道を歩むだろうと思います。」

Teslaほどそのような変化をリードする企業はないと言えるでしょう。Teslaの革新的な高性能電気自動車は、タッチスクリーンやデジタル・ダッシュボードなどのイノベーションが満載となっていますし、最近は、高速道路を走る、駐車する、あるいは、事故を避けるといった場合に運転を助けてくれる自動運転機能も用意されているからです。