AI があらゆる業界の生産性向上を支援: 生成 AI が切り開く効率化の新時代

投稿者: Cliff Edwards

2022 年 11 月 22 日、ほぼすべての業界にとって転換点となる出来事が起きました。

史上最も高度な AI チャットボットである ChatGPT が、OpenAI によってリリースされたのです。この瞬間から、あらゆる業務の効率化を支援する生成 AI アプリケーションへの需要が沸き起こりました。その用途は、企業における顧客からの問い合わせ対応や、科学的大発見を目指す研究者の作業の効率化までさまざまです。

以前は興味本位で AI を取り入れていた企業も、今ではその最新アプリをできるだけ早く導入、展開しようと躍起になっています。生成 AI は、テキスト、画像、音声、アニメーション、3D モデル、さらにはコンピューター コードまでもゼロから作成できるアルゴリズムを備えており、その能力は急速に進化し続け、人々の働き方やプライベートを一変させています。

クエリの処理には大規模言語モデル (LLM) が使用されており、これによって、以前は人が手作業で情報を検索したり、要約したりしていた時間が大幅に削減されています。

その効果は絶大なものです。PwC によると、AI は 2030 年までに 15 兆ドルを超える世界経済への貢献を果たす可能性があります。また、AI の導入により、インターネット、モバイル ブロードバンド、スマートフォンの発明を合算したものを超える規模の経済効果が見込まれています。

この生成 AI の原動力となっているのは、アクセラレーテッド コンピューティングです。これは、CPU と共に GPU、DPU、ネットワークを使用することで、科学、分析、エンジニアリングだけでなく、消費者や企業のユース ケースにわたってアプリケーションを高速化させるものです。

アクセラレーテッド コンピューティングと生成 AI の組み合わせは、創薬金融サービス小売通信エネルギー高等教育公共機関といったあらゆる業界で早期に導入され、業務、サービス、生産性の変革に役立てられています。

インフォグラフィックをクリックして表示: 次世代の AI 変革の推進

創薬分野における生成 AI の活用

今日、創薬分野では、放射線科医が医用画像から異常を検出したり、医師が患者に関する知見を電子健康記録 (EHR) から引き出したり、研究者が新薬をすばやく発見したりするために AI が利用されています。 創薬プロセスでは従来 5,000 種類以上の化合物の合成といった膨大なリソースが必要になるものの、成功率はわずか平均 10% に留まっています。また、成功しても新薬候補が製品化されるまでには通常 10 年以上かかります。

生成 AI モデルを使用できるようになったことで、以前は数週間から数ヶ月かかっていたタンパク質のアミノ酸配列の読み取りと標的タンパク質の構造の正確な予測を、今ではわずか数秒で行えるようになりました。

バイオテクノロジ分野の世界的リーダーである Amgen は、NVIDIA BioNeMo モデルを使用することで、リード分子のスクリーニング用と最適化用のモデルのカスタマイズにかかる時間を 3 ヶ月から数週間に短縮しました。こうしたトレーニング可能な基礎モデルを使用することで、特定の疾患に関する研究用のバリアントを作成し、希少疾患の標的治療薬を開発することが可能になります。

生成 AI とアクセラレーテッド コンピューティングは、タンパク質の構造予測から、大規模な実世界のデータセットや合成データセットによるアルゴリズムの安全なトレーニングに至るまで、病気の蔓延の抑制、個別化医療の実現、患者の生存率向上に役立つ新たな研究分野の開拓に貢献しています。

金融サービス業界における生成 AI の活用

最近実施した NVIDIA の調査によると、金融サービス業界における AI の主要なユース ケースは、カスタマー サービスとディープ アナリティクスです。これらのユース ケースでは、自然言語処理と LLM を使用して、顧客からの問い合わせへの対応を改善し、投資に関するインサイトを引き出しています。その他の一般的な用途としては、バンキング体験のパーソナライズ、マーケティングの最適化、投資ガイダンスに活用されているレコメンダー システムがあります。

高度な AI アプリケーションは、ポートフォリオ計画やリスク管理からコンプライアンス対策や自動化まで、銀行業界における不正防止の強化を始めとするあらゆる側面を変革できる可能性を持ち合わせています。

ビジネス関連の情報の 80% は非構造化データ (主にテキスト) であるため、生成 AI の用途として最有力候補となります。Bloomberg News は、金融/ 投資コミュニティに関連する記事を 1 日 5,000 件作成しています。これらの記事は、タイムリーな投資判断に利用できる市場の膨大な非構造化データを活用したものです。

NVIDIA、ドイツ銀行Bloomberg などの企業は、分野に特化した独自データでトレーニングした LLM を作成し、金融アプリケーションに活用しています。

金融向け Transformer (FinFormer) は、コンテキストを学習して金融分野の非構造化データの意味を理解するためのツールで、Q&A チャットボット、金融テキストの要約や翻訳、カウンターパーティ リスクの兆候に関する早期警告、データの迅速な取得、データ品質の問題の特定などに活用できます。

これらの生成 AI ツールは、モデルのトレーニングとファインチューニングに独自データを組み込み、データ キュレーションによって AI バイアスを防止し、ガードレールを使用して金融分野に特化したやり取りに制限するフレームワークを利用しています。

今後は、フィンテックのスタートアップ企業や大手国際銀行が LLM や生成 AI の利用を拡大して、社内外の利害関係者に対応する高度なバーチャル アシスタントを開発したり、高度にパーソナライズされた顧客向けコンテンツを作成したり、文書の要約を自動化して手作業を削減したり、テラバイト単位の公開データや非公開データを分析して投資に関するインサイトを生成したりすることが予想されます。

小売業界における生成 AI の活用

カスタマー ジャーニー全体の 60%がオンラインで開始されるようになったことで、消費者間のつながりは以前よりいっそう強化され、個々の消費者が持つ知識量もかつてないほど増えています。そうした中で AI は、小売企業が消費者の変化する期待に応え、増加する競合他社との差別化を図るために不可欠なツールとなっています。

小売企業においては、顧客体験の向上、ダイナミック プライシング、顧客セグメンテーションの作成、提案のパーソナライズ、画像検索などに AI が利用されています。

生成 AI は、バイヤー ジャーニーのあらゆる段階で顧客と従業員をサポートします。

AI モデルを特定のブランドや製品のデータでトレーニングすれば、的確な製品説明文を生成して SEO による検索順位を向上させ、顧客は探していた製品を簡単に見つけられるようになります。生成 AI ではメタタグに含まれる製品属性を使用できるため、たとえば、「低糖質」や「グルテン フリー」といった特定の用語を含む包括的な説明文を生成することが可能です。

また、AI バーチャル アシスタントは、ERP システムをチェックして、顧客に商品の在庫状況や発送日を知らせるためのメッセージを生成したり、注文変更の処理をサポートしたりすることができます。

IT スタートアップ企業を対象とした NVIDIA Inception のグローバル ネットワークの一員である Fashable は、生成 AI を利用して服のデザインをバーチャルで作成することで、製品開発中に消費する布地を削減しています。モデルのトレーニングに独自データと市場データの両方を使用することで、環境へのファッション デザインの影響を軽減し、小売企業が最新の市場トレンドや嗜好に合わせて服をデザインしやすくなります。

小売企業において AI は今後、消費者の注目を集めたり、より良いショッピング体験を提供したり、顧客が求める製品を適切なタイミングで提示し、それを収益増につなげるために活用されることが予想されます。

通信業界における生成 AI の活用

通信業界を対象とした NVIDIA の調査によると、通信事業者の 95% が AI を利用しており、3 分の 2 が自社の将来の成功にとって AI が重要になると思うと回答しています。

カスタマー サービスの向上、ネットワーク運用や設計の合理化、現場技術者のサポート、新たな収益化機会の創出など、生成 AI は通信業界を刷新する可能性を秘めています。

通信事業者においては、ネットワーク機器やサービス、パフォーマンス、チケットの問題、現場調査などに関する独自データを診断用 AI モデルのトレーニングに使用できます。これらのモデルにより、技術的な問題のトラブルシューティングの迅速化、ネットワーク設計の提案、ネットワーク構成のコンプライアンス チェック、機器の故障予測、セキュリティ脅威の特定と対応を実現できます。

ハンドヘルド端末で動作する生成 AI アプリケーションは、機器をスキャンして仮想チュートリアルを生成し、現場技術者に修理方法を案内できます。さらに、バーチャル ガイドを AR で強化すれば、技術者が没入型の 3D 環境で機器を分析したり、離れた場所にいるエキスパートに連絡してサポートしてもらったりすることができます。

通信事業者にも新たな収益機会がもたらされます。現在では世界中の通信事業者が、大規模なエッジ インフラストラクチャと膨大なデータセットへのアクセスにより、企業や行政機関の顧客に対してサービスとしての生成 AI を提供しています。

生成 AI の進歩に伴い、通信事業者は今後このテクノロジを利用して、ネットワーク パフォーマンスの最適化、カスタマー サポートの向上、セキュリティ侵入の検出、保守業務の強化を行うことが予想されます。

エネルギー業界における生成 AI の活用

エネルギー業界では、予知保全やアセットの最適化、スマート グリッドの管理、再生可能エネルギーの予測、グリッドのセキュリティなどに AI が活用されています。

インフラの老朽化や行政機関による新たなコンプライアンス規制など、データに関するニーズの増大に対応するため、生成 AI に注目が集まっています。

米国では、電力会社が発電および 送電インフラの点検、保守、改修に毎年数十億ドルを費やしています。

ビジョン AI を点検作業に使用する場合には、つい最近まで、手作業で収集してタグ付けした何千枚ものグリッド アセットの写真をアルゴリズムのトレーニングに使用し、そのトレーニング データを頻繁に更新することで、新しいコンポーネントに対応させる必要がありました。しかし、今ではこの作業を生成 AI に任せられます。

少量のトレーニング用画像データだけで、物理的に正確な何千枚もの画像がアルゴリズムによって生成されるため、現場技術者が行っていたグリッド機器の腐食、破損、障害物の特定や山火事の検出に役立つコンピューター ビジョン モデルのトレーニングが可能になります。こうした予知保全により、ダウンタイムを短縮してグリッドの安定性と回復力を強化すると同時に、現場にチームを派遣する必要性を縮小することができます。

生成 AI は、手作業による調査や分析の必要性を削減するのにも役立ちます。McKinsey の調査によると、従業員は 1 日最大 1.8 時間、つまり週の労働時間の 20% 近くを情報検索に費やしています。エネルギー企業においては、会議の議事録、SAP レコード、メール、現場のベスト プラクティス、標準マテリアル データシートを始めとする公開データなどの独自データで LLM をトレーニングすることによって、生産性を向上させることができます。

こうしたナレッジ リポジトリを AI チャットボットに接続すれば、エンジニアやデータ サイエンティストが技術的な質問に対する回答を即座に入手できます。たとえば、保全技術者がタービンの油圧装置のピッチ制御の問題に対応しているときに、「X 社のモデル タービンのピッチ制御の問題を修正するには、油圧または流量をどのように調整すればよいか」とボットに質問します。すると、モデルが適切にトレーニングされていれば具体的な手順を指示してくれるため、分厚いマニュアルから回答を探す手間を省くことができます。

エネルギー業界においては今後、新しいシステムの設計、カスタマー サービス、自動化といった AI アプリケーションで、安全性とエネルギー効率を強化し、運用コストを削減するために生成 AI を活用することが予想されます。

高等教育/研究での生成 AI の活用

AI は、インテリジェントな個別指導システムから作文の自動採点まで、長年にわたって教育分野でも採用されてきました。大学では、AI を活用して教師と学生の体験を向上させる取り組みを進めている中、AI に焦点を当てた研究イニシアチブの構築のためのリソースも増やしています。

たとえば、フロリダ大学の研究者は学界で世界最速クラスのスーパーコンピューターにアクセスし、これを GatorTron の開発に利用しました。GatorTron は、EHR に保存されている臨床記録内の医療用語をコンピューターが読み取り、解釈できるようにする自然言語処理モデルです。医療のコンテキストを理解するモデルにより、AI 開発者は、自動カルテ作成によって医師をサポートする音声文字起こしアプリなど、多数の医療アプリケーションを作成できます。

ヨーロッパでは、ミュンヘン工科大学が参加する産学連携により、ゲノミクス データでトレーニングされた LLM を幅広いゲノム タスクで一般化できることが実証されました (従来のアプローチでは、それぞれに専用モデルが必要でした)。ゲノミクス LLM は、DNA が RNA からタンパク質に翻訳される流れを科学者が理解し、創薬や医療に役立つ新しい臨床アプリケーションを実現できるようにすることが期待されます。

こうした画期的な研究を実施し、意欲に溢れた学生や有能な学術専門職員を呼び込むために、高等教育機関には全学的なアプローチを検討し、予算のプール、AI イニシアチブの計画、分野間での AI リソースと利益の分配を行うことが求められます。

公共機関における生成 AI の活用

今日の公共機関における AI の最大の活用機会は、公務員の業務の効率化とリソースの節約です。

米国連邦政府は 200 万人以上の民間従業員を雇用しており、その 3 分の 2 は専門職や行政職に従事しています。

こうした行政職の多くは、文書の作成、編集、要約、データベースの更新、監査やコンプライアンス用の支出の記録、市民からの問い合わせへの対応といった時間のかかる業務を手作業で行っています。

これらのコストの制御と定型業務の効率化のために、政府や行政機関は生成 AI を活用できます。

生成 AI による文書要約機能は、政策立案者や職員、公務員、調達担当者、委託事業者の生産性を大幅に向上させる可能性を秘めています。たとえば、人工知能国家安全保障委員会 (NSCAI) が最近公表した 756 ページにわたる報告書を考えてみてください。報告書や法律文書の多くは、数百ページにもわたる学術的または法的な内容の濃い文章ですが、AI を活用することでそうした複雑な内容をすばやく噛み砕き、数秒で要約を生成できるため、その分の人的リソースを節約できます。

また、LLM を活用した AI バーチャル アシスタントやチャットボットを活用すれば、関連性の高い情報をオンラインで即座に提供し、財務省、IRS (内国歳入庁)、DMV (自動車管理局) といった機関のフォーン バンクで働く職員の過重な負担を軽減することができます。

AI コンテンツ生成機能では、簡単なテキスト入力だけで、公務員による刊行物の作成、メールのやり取り、また、報告書、プレス リリース、公共広告の作成と配信が可能です。

さらに、文書の処理を支援する AI の分析機能によって、メディケア、メディケイド、退役軍人省、USPS (郵便公社)、国務省などの組織による重要なサービスの提供をスピードアップできます。

生成 AI は、予算の制約が厳しい行政機関において、行政サービスを迅速に提供し、好意的な国民感情を実現するうえで、きわめて重要なツールとなる可能性があります。

事業の成功に欠かせなくなった生成 AI

生成 AI は、あらゆる分野の組織で従業員の生産性を変革し、製品を改善して、質の高いサービスを提供するために活用されています。

生成 AI の実用化には、膨大な量のデータだけでなく、AI に関する深い知識や、モデルを迅速に展開、維持できる十分なコンピューティング能力が必要になります。企業はすばやく導入を進めるために、DGX Cloud 上で動作する NVIDIA AI Enterprise ソフトウェアに含まれる生成 AI 用の NeMo フレームワークを利用できます。NVIDIA の学習済みの基礎モデルにより、独自のビジネス ユース ケース向けにカスタマイズされた生成 AI ソリューションをシンプルなアプローチで構築、実行できます。

生成 AI は、企業の生産性向上と作業の自動化を支援し、従業員と顧客に新たな機会をもたらす強力なツールです。詳細についてはこちらをご確認ください。