NVIDIA の創業者/ CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) が行った基調講演で CES 2025 が幕を開けました。90 分間の基調講演では、ゲーミング、自動運転車、ロボティクス、そしてエージェント型 AI を進化させる新製品の数々が紹介されました。
6,000 人を超える聴衆を前にフアンは、AI が「驚異的なペース」で進歩していると語りました。
「画像、言葉、音を理解する知覚 AI に始まり、次にテキスト、画像、音を作成する生成 AI となりました」そして今、私たちは「フィジカル AI、つまり、進行、推論、計画、行動ができる AI」の時代を迎えています。
NVIDIA の GPU とプラットフォームがこの変革の中心であり、ゲーミング、ロボティクス、自動運転車 (AV) を含むさまざまな産業でのブレイクスルーを実現していると、フアンは説明しました。
主な発表内容
フアンの基調講演では、NVIDIA の最新のイノベーションが AI の新しい時代を実現しているのかが示され、以下のような画期的な発表がありました。
- 新たに発表された NVIDIA Cosmos プラットフォームは、ロボット、自動運転車両、視覚 AI 向けの新しいモデルとビデオ データ処理パイプラインによってフィジカル AI を進化させます。
- 新しい NVIDIA Blackwell ベースの GeForce RTX 50 シリーズ GPU は、目を見張るビジュアル リアリズムと前例のないパフォーマンスの向上を実現します。
- RTX PC 向けの AI 基盤モデルには、デジタル ヒューマン、ポッドキャスト、画像、ビデオを作成するための NVIDIA NIM マイクロサービスと AI Blueprint が搭載されています。
- 新しい NVIDIA Project DIGITS は、コンパクトなパッケージで、NVIDIA Grace Blackwell のパワーを開発者のデスクトップにもたらします。
- NVIDIA はトヨタ自動車と提携し、NVIDIA DriveOS を実行する NVIDIA DRIVE AGX 車載コンピューターにより、安全な次世代車両の開発を推進します。
フアンは基調講演の冒頭で、NVIDIA の 30 年にわたる歩みを振り返りました。1999 年に NVIDIA はプログラマブル GPU を発明しました。それ以来、現代の AI はコンピューティングの仕組みを根本的に変えてきました、とフアンは語ります。「テクノロジ スタックのあらゆるレイヤーが、わずか 12 年で驚くべき変革を遂げました」
GeForce RTX 50 シリーズでグラフィックスを革新
「GeForce により AI が広く一般に届くようになり、今や AI が GeForce に戻ってきています」とフアンは言います。
そしてフアンは、これまでで最もパワフルな GeForce RTX GPU である NVIDIA GeForce RTX 5090 GPU を披露しました。この GPU は 920 億のトランジスタを搭載し、毎秒 3,352 兆回の AI 演算 (TOPS) を実現します。
フアンは「これが、Blackwell アーキテクチャの NVIDIA の最新の GeForce RTX 50 シリーズです」と言うと、黒い GPU を高く掲げ、この GPU が高度な AI を活用していかに画期的なグラフィックスを実現するかについて説明しました。「この GPU はまさにビーストです」
「機械設計さえも奇跡です」とフアンは語り、グラフィックス カードに 2 つの冷却ファンがあることを説明しました。
この GPU シリーズには、今後さらに多くのバリエーションが登場します。デスクトップ GPU である GeForce RTX 5090 と GeForce RTX 5080 が 1 月 30 日に、GeForce RTX 5070 Ti と GeForce RTX 5070 は 2 月に発売予定です。また、ノート PC 用の GPU は 3 月に発売予定です。
DLSS 4 では、マルチ フレーム生成が導入されました。この機能は DLSS テクノロジの全スイートと連携して、パフォーマンスを最大 8 倍向上させます。また、PC の遅延を最大 75% 削減できる NVIDIA Reflex 2 も発表されました。
最新世代の DLSS は、計算した 1 フレームごとに 3 つの追加フレームを生成できる、とフアンは語りました。「その結果、AI が計算を大幅に削減するため、信じられないほど高いパフォーマンスでレンダリングが可能になります」
RTX Neural Shaders は、小さなニューラル ネットワークを使用して、リアルタイムのゲームプレイ中のテクスチャ、マテリアル、ライティングを向上させます。RTX Neural Faces と RTX Hair は、顔や髪のリアルタイムのレンダリングを進化させます。生成 AI を使用し、これまでで最もリアルなデジタル キャラクターのアニメーション化が可能になります。RTX Mega Geometry は、現在の標準よりも最大 100 倍の三角形をレイトレースすることを可能にし、さらに細やかな表現を実現します。
Cosmos がフィジカル AI を加速
グラフィックスの進化に加え、フアンは NVIDIA Cosmos 世界基盤モデル プラットフォームを紹介し、ロボティクスと産業用 AI のゲームチェンジャーであると説明しました。
AI の次のフロンティアはフィジカル AI であるとフアンは言明します。彼は今この瞬間を、大規模言語モデルが生成 AI に与えた変革的な影響になぞらえました。
「一般的なロボティクスに 『ChatGPT の瞬間』がすぐそこまで来ています」
大規模言語モデルと同様に、世界基盤モデルはロボットや AV 開発の発展に不可欠であるものの、すべての開発者が独自のモデルをトレーニングするための専門知識とリソースを持っているわけではない、とフアンは言います。
Cosmos は、生成モデル、トークナイザー、ビデオ処理パイプラインを統合して、AV やロボットなどのフィジカル AI システムの稼働を可能にします。
Cosmos が目指すのは、AI モデルに予測やマルチバース シミュレーションの機能をもたらすことであり、これが実現すればあらゆる可能性のある未来をシミュレートして最適なアクションを選択できるようになります。
Cosmos モデルはテキスト、画像、ビデオのプロンプトを処理し、ロボティクスや AV シミュレーションのための、細部まで凝ったバーチャルな環境を構築します。
Cosmos を最初に導入する企業としては、1X、Agile Robots、Agility、Figure AI、Foretellix、Fourier、Galbot、Hillbot、IntBot、Neura Robotics、Skild AI、Virtual Incision、Waabi、XPENG などの主要なロボティクス企業や主要な自動車会社、ライドシェアリング界の大企業の Uber が挙げられます。
Cosmos はオープン ライセンスであり、GitHub から入手可能です。
AI 基盤モデルで開発者を支援
ロボティクスや自動運転車以外にも、NVIDIA は AI 基盤モデルで開発者やクリエイターを支援します。
フアンは、デジタル ヒューマン、コンテンツ制作、生産性、開発を強化する、RTX PC 向け AI 基盤モデルを発表しました。
「NVIDIA GPU が今はどのクラウドでも利用できるため、これらの AI モデルもどのクラウドでも実行できます。どの OEM でも利用できるため、これらのモデルを文字通り手に入れることができるようになりました。今使っているソフトウェア パッケージに統合して AI エージェントを作成し、顧客がソフトウェアを実行したい場所に展開できます」とフアンは言います。
GeForce RTX 50 シリーズ GPUによって加速
NVIDIA NIM マイクロサービスとして提供されるこれらのモデルは、新しい GeForce RTX 50 シリーズ GPU によって高速化されます。
これらの GPU は、モデルを効率的に実行するよう設計されており、FP4 コンピューティングのサポートが追加されています。これにより、AI 推論性能が最大 2 倍に向上し、前世代のハードウェアよりも小さなメモリ フットプリントで実行できます。
クリエイター向けの新しいツールの可能性について、フアンは次のように説明します。「私たちは、エコシステムが活用できるブループリントを多数作成しています。これらはすべて完全にオープン ソースなので、ブループリントを取得して変更を加えることができます」
主要な PC メーカーやシステム ビルダーは、GeForce RTX 50 シリーズ GPU を搭載した NIM 対応の RTX AI PC を発売します。「AI PC があなたの家にやって来ます」とフアンは語りました。
これらのツールは AI 機能を PC にもたらします。その一方で、NVIDIA は安全性とインテリジェンスが最も重要である自動車業界でも AI 主導のソリューションを推進しています。
自動運転車両のイノベーション
フアンは NVIDIA DRIVE Hyperion AV プラットフォームを発表しました。これは、生成 AI モデル向けに設計され、高度な安全機能と自動運転機能を提供する新しい NVIDIA AGX Thor システムオンチップ (SoC) 上に構築されています。
フアンは言います。「自動運転車の革命がここで起きています。すべてのロボットと同様に、自動運転車の構築には 3 つのコンピューターが必要です。AI モデルをトレーニングするための NVIDIA DGX、テスト走行と合成データ生成のための Omniverse、そして車内のスーパーコンピューターである DRIVE AGX です」
初のエンドツーエンド AV プラットフォームである DRIVE Hyperion では、高度な SoC、センサー、安全システムを統合した包括的なスイートを提供します。Mercedes-Benz、JLR、Volvo Cars といった自動車会社が、すでに DRIVE Hyperion を採用しています。
フアンは、自動運転車両の進化において合成データが重要な役割を果たしていることを強調しました。現実世界のデータには限りがあるため、自動運転車両のデータ ファクトリーのトレーニングには合成データが不可欠であると説明しました。
NVIDIA Omniverse AI モデルと Cosmos で詳細な運転シナリオを構築
NVIDIA Omniverse AI モデルと Cosmos を活用したこのアプローチは、常に詳細な合成運転シナリオを生成し、トレーニング データを桁違いに強化します。
Omniverse と Cosmos を使用することで、NVIDIA の AI データ ファクトリーは「数百回の運転を数十億マイルの有効走行距離」に拡張できるとフアンは述べ、安全で高度な自動運転に必要なデータセットを大幅に増やせると語りました。
「自動運転車用のトレーニング データを山ほど有することになるでしょう」と付け加えました。
世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車が、次世代車両を NVIDIA DRIVE AGX Orin 上で構築し、安全認証を受けた NVIDIA DriveOS オペレーティング システムを実行するである、とフアンは述べました。
「コンピューター グラフィックスが驚異的なペースで革命を起こしたのと同じように、今後数年間で AV 開発のペースが飛躍的に加速するでしょう」とフアンは述べています。こうして生まれる車両は、安全に機能する高度な運転支援機能を提供します。
エージェント型 AI とデジタル製造
NVIDIA とパートナーは、エージェント型 AI 向けの AI Blueprint を発表しました。ここには効率的な調査を可能にする PDF からポッドキャストへの変換のほか、大量のビデオや画像の分析を可能にするビデオ検索およびビデオ要約などが含まれます。これにより、開発者は AI エージェントをどこでも構築、テスト、実行できます。
AI Blueprint により、開発者はカスタムのエージェントを展開してエンタープライズ ワークフローを自動化できます。こうした新しいブループリントでは、NVIDIA NIM マイクロサービスや NVIDIA NeMo などの NVIDIA AI Enterprise ソフトウェアが、CrewAI、Daily、LangChain、LlamaIndex、Weights & Biases などの主要なプロバイダーのプラットフォームと統合されています。
また、フアンは、エンタープライズ アプリケーション向けの生成 AI モデルの開発を強化するために設計された新しいツール、Llama Nemotron を発表しました。
開発者は NVIDIA NIM マイクロサービスを使用して、顧客サポート、不正検出、サプライ チェーンの最適化などのタスクを実行する AI エージェントを構築できます。
これらのモデルは NVIDIA NIM マイクロサービスとして入手でき、あらゆるアクセラレーテッド システムで AI エージェントを強化できます。
NVIDIA NIM マイクロサービスはビデオ コンテンツ管理を合理化し、メディア業界の効率を向上させ視聴者のエンゲージメントを高めます。
NVIDIA のイノベーションは、デジタル アプリケーションの枠を越え、AI がロボティクスによって物理世界に革命を起こす道を切り開いています。
「私がこれまで話してきたテクノロジはすべて、実現するテクノロジです。こうしたテクノロジにより、一般的なロボティクスに今後数年間で、非常に急速な進歩、驚くべき進歩が見られるようになるでしょう」
合成モーション生成用の NVIDIA Isaac GR00T Blueprint
製造業では、合成モーション生成用の NVIDIA Isaac GR00T Blueprint により、開発者は指数関数的に多くの大規模な合成モーション データを生成して、模倣学習を使用してヒューマノイドをトレーニングできるようになります。
フアンは、NVIDIA の Omniverse を使用してヒューマノイド トレーニング用の何百万もの合成モーションを生成し、ロボットを効率的にトレーニングすることの重要性を強調しました。
Mega ブループリントは、Accenture や KION といったリーダー企業が倉庫自動化に採用しているロボット フリートの大規模なシミュレーションを可能にします。
これらの AI ツールは NVIDIA の最新のイノベーションの土台となっています。そのイノベーションとは、Project DIGITS と呼ばれる個人用 AI スーパーコンピューターです。
NVIDIA が Project DIGITS を発表
NVIDIA Grace Blackwell をすべてのデスクに、すべての AI 開発者の手元に届けるために、フアンが発表したのが、NVIDIA Project DIGITS です。
「もう 1 つお見せしたいものがあります。約 10 年前から始まったこの素晴らしいプロジェクトがなければ、このすべてが実現しなかったことでしょう。社内では、このプロジェクトは Project DIGITS (Deep Learning GPU Intelligence Training System) と呼ばれていました」
フアンは、NVIDIA の AI スーパーコンピューティングの歩みにおける遺産について取り上げ、2016 年に初の NVIDIA DGX システムを OpenAI に提供した経緯を語りました。「そして明らかに、それは人工知能コンピューティングに革命をもたらしました」
新しい Project DIGITS は、このミッションをさらに前進させます。「すべてのソフトウェア エンジニア、すべてのエンジニア、すべてのクリエイティブ アーティスト、つまり、今日コンピューターをツールとして使用しているすべての人が、AI スーパーコンピューターを必要とするようになるでしょう」とフアンは述べます。
GB10 Grace Blackwell Superchip を搭載した Project DIGITS は、NVIDIA の最小かつ最もパワフルな AI スーパーコンピューターであることをフアンは明らかにしました。デバイスを見せながら、フアンは語りました。「これは NVIDIA の最新 AI スーパーコンピューターで、NVIDIA AI スタックすべてを実行できます。NVIDIA ソフトウェアはすべてこの上で実行されます。DGX Cloud も同様です。」
コンパクトかつパワフルな Project DIGITS は、5 月に提供開始予定です。
ブレイクスルーの年
フアンは基調講演を締めくくるにあたり、「素晴らしい年でした」と述べ、NVIDIA の大きな成果である Blackwell システム、フィジカル AI 基盤モデル、そしてエージェント型 AI とロボティクスにおける数々のブレイスルーを強調しました。
最後にフアンは「皆様のパートナーシップに感謝します」と基調講演を締めくくりました。
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