Monarch Tractor、「有人運転はオプション」となる初の商用電動スマート トラクターを販売開始

投稿者: Scott Martin

ワイン、スピリッツ、ビールの大手メーカー、Constellation Brands に NVIDIA Jetson 搭載の Founder シリーズ MK-V トラクターの初回 6 台を納入

カリフォルニア州リバモアは、研究機関とブドウ園で有名ですが、初の商用スマート トラクター発祥の地として、新たな地位を手に入れようとしています。

地元のスタートアップ企業である Monarch Tractor は、Founder シリーズ MK-V トラクターの 6 台が出荷されることを発表しました。ワインやスピリッツの生産と、ビールの輸入を手がける Constellation Brands が初の顧客となり、12 月 1 日に行われた公式発表会でトラクターの鍵が手渡されました。

この発表は、2018 年に設立された Monarch が、エネルギー効率に優れた NVIDIA Jetson エッジ AI プラットフォームを搭載したスマート トラクターを提供する計画を打ち出して以来、2 年にわたった開発作業を締めくくるものです。このトラクターは、電動化、自動化、データ分析を組み合わせることで、二酸化炭素排出量の削減、現場の安全性の向上、農作業の効率化、利益率の向上によって農業を支援します。

MK-V トラクターは、エネルギー コストおよびディーゼル車による排出ガスを削減すると同時に、高価でかつ土壌を荒廃させる除草剤の削減にも貢献します。

「精密農業、自律性、AI により、データを活用することで化学薬品の使用量が減り、土壌にとっても、収益性の観点から農家にとっても、また消費者にとっても良い結果をもたらします」と Monarch Tractor の CEO であるプラビーン ペンメッサ (Praveen Penmetsa) 氏は述べています。

Constellation Brands への MK-V トラクターの納入に続き、家族経営の農場や大企業の顧客にもさらにトラクターの出荷が予定されています。

Monarch は、スタートアップ企業に技術支援や AI プラットフォームのサポートを行う NVIDIA Inception プログラムのメンバーです。

クリーン トラクターで農業 AI の波を牽引

Monarch Tractor の創業者には、スタートアップの Zoox (現在は Amazon 傘下) で働いていたシリコンバレーの EV 分野のベテラン メンバーが含まれます。ナパバレーの Mondavi ワイナリー出身のカルロ モンダヴィ (Carlo Mondavi) 氏は、サステナビリティを重視するブドウ栽培者であり、チーフ ファーミング オフィサー (農業最高責任者) でもあります。社長は元 Tesla Gigafactory の主任のマーク シュワガー (Mark Schwager) 氏、CTO はカーネギーメロン大学でロボティクスの博士号を取得しているザカリー オモハンドロ (Zachary Omohundro) 氏、そしてペンメッサ氏は自律性とモビリティのエンジニアです。

ペンメッサ氏は、この画期的な新型トラクターを、世界を変えるアプリケーションを実現した PC やスマートフォンのパラダイム シフトになぞらえています。Monarch の役割は、農業の自動化を支援するスマートなコンピューター ビジョン アプリケーション (精密な噴射器や収穫機など) を実現するハブであると彼は述べています。

2021 年、Monarch は同じくリバモアに拠点を置く Wente Vineyards で、商用利用のためのパイロット テスト モデルをスタートさせました。Wente でのトライアルでは、エネルギー使用量をディーゼル トラクターと比較して、Monarch により年間 2,600 ドル以上の経費を節約できたことが示されました。

Monarch は 1 億 1 千万ドル以上の資金を調達しています。その戦略的投資家には、日本の自動車部品メーカーである武蔵精密工業、農業機械メーカーの CNH Industrial、インドの機器メーカーおよびトラクターやインプルメントのディーラーである VST Tillers Tractors が含まれています。

また先日、鴻海科技集団の Foxconn と製造委託契約を結び、そのオハイオ州マホニング バレーの工場で、MK-V とそのバッテリー パックを製造することになりました。

AI の波が農業を席巻する中、開発者はより持続可能な農業活動を支援するために取り組んでいます。

NVIDIA Jetson プラットフォームは MK-V にエネルギー効率の高いコンピューティングを提供し、バッテリー性能の向上を実現しています。

Jetson 搭載の Monarch Founder シリーズ MK-V でできること

6 基の NVIDIA Jetson Xavier NX SOM (システム オン モジュール) を活用した Monarch の Founder シリーズ MK-V トラクターは、まさにスーパーコンピューティングを搭載した移動型ロボットと言えます。

Monarch は Jetson を活用し、カメラのみを用いて農地の畝 (うね) を安全に横断するトラクターを実現しました。「環境によっては GPS の信号が届かないことがあるので、特定の農業環境下ではこれは重要なことです。また、Monarch は完全な無人運転を目指しているので、安全性においても非常に重要です」とペンメッサ氏は述べています。

Founder シリーズ MK-V では、2 台の 3D カメラと 6 台の標準カメラが動作しています。6 基の Jetson エッジ AI モジュールを搭載し、さまざまなインプリメントと組み合わせることで、複数の農作業に対応したモデルを実行できます。

より持続可能な農業を支援するため、Monarch プラットフォーム用の転移学習を用いてファイン チューンし、精密散布などのオプションを開発できるコンピューター ビジョン アプリケーションが利用できます。

サービスとしての農場アプリケーション (Farm-Apps-as-a-Service) の提供

Monarch は、農場を AI で支援する主要なアプリケーションの中核を、そのプラットフォーム上で SaaS モデルで提供しています。

Founder シリーズ MK-V は、充電量が少ないときや進路を妨害する未確認物体があるときにアラートを送信するなど、そのプラットフォームにも基本的な機能を搭載しています。また、カメラベースのビジョン プラットフォームが人間を識別すると、スプレーの散布を停止します。

また、トラクターは日々作物データを収集、分析し、センサーや映像処理機能を備えた現行および次世代のインプリメントからのデータを処理できます。このデータは、リアルタイムでのインプリメントの調整、長期的な収穫量の予測、現在の成長段階やその他植物や作物の健康状態の把握に利用できます。

トラクターの利用範囲が広がることで、農業の改良に新たな一章が始まります。

「Monarch MK-V に搭載された NVIDIA アクセラレーテッド コンピューティングと Jetson エッジ AI の融合により、当社のお客様は、最先端のゼロエミッション トラクターで不要な除草剤の使用を削減できるようになりました。この革新的な技術は、地球環境、土壌、水路、生物多様性に貢献しています」とカルロ モンダビ (Carlo Mondavi) 氏は述べています。

ロボティクスのための NVIDIA Isaac プラットフォームの詳細と、NVIDIA Inception の詳細についてもぜひご覧ください。