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変幻自在のレトロウイルス、そして引きおこされる病気をGPUで解明

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変異。感染力のある粒子。細胞の侵食。いや、ゾンビ映画の話をしようというわけではありません。これはレトロウイルスの日常です。

ウイルスはどんどん変化していくことなどから、世界中で健康被害を引きおこしています。多段階のプロセスによって感染していくのも、解析や治療を難しくしています。少なくとも、いままではそうでした。

でもこのたび、ベックマン先端科学技術研究所のKlaus Schulten教授率いる理論・計算生物物理学グループが、世界でもトップクラスにパワフルなコンピュータに搭載されたGPUテクノロジを活用し、未成熟のレトロウイルスに関するシミュレーションを高速化することに成功しました。

RSV未成熟レトロウイルス・カプシドのモデル RSV未成熟レトロウイルス・カプシドのモデル

そして、この変幻自在の生物を捕らえつつあるのです。

感染した細胞から飛びだすウイルスは、RNAゲノムがタンパク質で覆われた未成熟状態にあります。Schulten教授らは、感染力のないこの状態にウイルス粒子を固定し、変異・成熟しないようにしたいと考えています。

このプロジェクトに参加している博士課程修了後の研究者のJuan Perilla博士は、次のように述べています。「感染力を持つ前にウイルスのライフサイクルが回らないようにじゃまする方法を、我々は探しているわけです」

ウイルスはきわめて小さく、形も一定しないため、つい最近まで、ウイルス粒子の構造を原子レベルで研究するのは困難でした。

Perilla博士は、次のようにも述べています。「レトロウイルスは、とても特徴的な段階を経て感染力を持つようになるので、未成熟なレトロウイルスは簡単に区別できます。ただ、その構造の特定には、いろいろと難しい点があります。」


低温顕微鏡検査結果から作成した密度マップにウイルス・サブユニットをひとつずつ置き、未成熟レトロウイルスの原子モデルを生成します。


低温顕微鏡検査結果から作成した密度マップにウイルス・サブユニットをひとつずつ置き、未成熟レトロウイルスの原子モデルを生成します。

スーパーコンピュータのスピードでシミュレーション

ウイルスは、自らのタンパク質を並べ替え、RNAゲノムをDNAへ変換できるようにする逆転写と呼ばれる過程を経て成熟します。ウイルスが成熟すると、そのDNAが宿主細胞のゲノムを侵食します。侵食でウイルスに感染した細胞からは、未成熟ウイルスのコピーが宿主の血流に放出されます。こうして放出されたウイルスが他の細胞に感染するには、まず、成熟する必要があります。

この複雑なプロセスのどこかで変異が起こることがあります。これが、レトロウイルスの治療を難しくしている理由です。このプロセスの研究で有用なモデルが、RSV(Rous sarcoma virus)と呼ばれる、鳥に感染するウイルスです。ただ、このウイルスの未成熟状態を高い解像度で捉えるのは、いままで困難でした。

そこで研究者らが目を向けたのが、米オークリッジ国立研究所にあるTitanやイリノイ州米国立スーパーコンピュータ応用研究所にあるBlue Watersなど、世界最速クラスのGPU搭載コンピュータによるシミュレーションです。

このプロジェクトに参加している物理学専攻のイリノイ大学大学院生、Boon Chong Goh氏は、次のように述べています。「GPUを使うと実行速度が2倍になります。つまり、計算結果が得られるターンアラウンド・タイムが半分になります。2カ月待たなければ得られなかった結果が1カ月で得られるのです。」

このシミュレーションにより、今年、RSVの未成熟レトロウイルス格子について原子レベルの構造モデルがついに解明されました。この1月からは、未成熟HIVウイルスの研究がBlue Watersスーパーコンピュータを使って進められています。

この研究成果は、テキサス州オースティンのSC15 Supercomputing Conferenceでも論文と動画で発表されました。この動画Chemical Visualization of Human Pathogens: the Retroviral Capsids(ヒト病原体レトロウイルス・カプシドの化学的可視化)では、構造の構築、シミュレーション、解析、可視化に使われた手法が説明されています。この構造は、ターゲットとして薬学的に未開発であると考えられています。


George Millington

George has more than 16 years of experience developing high-impact PR and social media programs for a wide range of IT, consumer tech, Green IT, and financial services organizations. Currently serving as a senior public relations manager at NVIDIA, George is responsible for promoting the Tesla GPU accelerator product line for the high-performance computing market, the CUDA parallel computing platform and programming model, and the OpenACC parallel programming standard.

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