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NVIDIA のチーフ サイエンティストが、低コストでオープンソースの人工呼吸器設計を公開

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先日、NVIDIA のチーフ サイエンティストであるビル ダリー (Bill Dally) が、低コストで簡単に組み立てられる人工呼吸器のオープンソース設計を公開しました。

この人工呼吸器はほんの数週間で設計され、半導体やスーパーコンピューターへの重要な貢献をはじめテクノロジ分野で名高いキャリアを持つダリーによれば、既製の部品を使ってわずか 400 ドル (約 4 万 3,000 円) で手早く作れます。

これに比べると、従来の人工呼吸器は 2 万ドル (約 214 万円) 以上かかることもあります。しかも、それはこの救命機器に対する世界の需要が激増する前の価格です。

「人工呼吸器が底をつくほど多くの人が病気にかかるような事態にならないよう願っています」
オシロスコープや電圧計、他の実験装置を備えた自宅の簡易的な電子工学作業室から、ダリーはこのように語ります。

「ただ、もしもそうなったときのために、このようなものを確実に用意しておきたいのです」

人工呼吸器と新型コロナウイルス

ご承知のとおり、人工呼吸器は、世界を襲う医療危機に対処するため世界中で緊急に必要とされています。

NVIDIA のチーフ サイエンティストであるビル ダリーによる、低コストで簡単に組み立てられる人工呼吸器のオープンソース設計をご覧ください

COVID-19 に感染した患者の 0.3% から 0.6% が、人工呼吸器を必要とするほどの深刻な急性呼吸窮迫症候群 (呼吸不全の一種) にかかる、とダリーは説明します。

ダリーの狙いは、「シンプルを極めた」人工呼吸器を作ることでした。

彼の人工呼吸器は、たった 2 つの簡単に手に入る主要部品、つまり比例ソレノイド バルブと、バルブから患者へのガスの流れを調整するマイクロコントローラーを中核とします。

ダリーは 120 を超える特許を持っています。Caltech (カリフォルニア工科大学) と MIT (マサチューセッツ工科大学) で教育および研究の職に就き、スタンフォード大学ではコンピューター サイエンス学部長を務めました。

2009 年からは NVIDIA の研究チームを率いており、これには、AI、コンピューター ビジョン、自動運転車、ロボティクス、グラフィックスなどの分野に取り組む世界中のサイエンティスト 200 人以上が参加しています。

NVIDIA の CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) が社内のリーダーに COVID-19 のパンデミックに対する支援策を探るよう呼びかけたのを受け、ダリーはどのように貢献できるか探究を始めました。

ダリーはすぐに、テクノロジと医療分野のリーダーたちに電話やビデオ会議で連絡を取りました。

NVIDIA の CEO: 「うまく動いている!」

そして 4 月の初め、自宅退避をしていたタホ湖で、冷たく澄んだ水の上をカヤックしているときにインスピレーションが訪れました。

ダリーはオンラインで、ソレノイド バルブ (バルブの開け閉めに電磁石を使用するもの) を注文しました。

次いで、自宅のワイン セラー用に作った自家製冷却システムからマイクロコントローラー (安価で、必要最低限の機能だけを備えたコンピューター) を引き抜きました。

数日間、自宅の電子工学作業室に遅くまでこもり、数千行のコードを一気に書き上げると、一般的なパイプ継手と簡単に手に入る数個のバルブで作られた実動プロトタイプができあがりました。

ダリーはこの装置がゴム手袋をゆっくりと膨張させたり収縮させたりする様子をガレージで妻に撮影してもらい、4 月 4 日にその動画を NVIDIA の同僚に見せました。

「うまく動いている!」フアンは思わず声を上げました。

自宅の作業室で人工呼吸器の最初のプロトタイプを作る NVIDIA チーフ サイエンティストのビル ダリー

専門家の助言を集める

プロジェクトを引き続き進展させるために、ダリーは幅広い分野にわたる知人の専門知識を借りました。

主要部品の機械工学については、かつての教え子で、自動運転車やロボティクスの研究で知られるポール カープラス (Paul Karplus) 氏に助言を求めました。

また、医学部 4 年生のエマ トラン (Emma Tran) 氏には、医療分野の多くの人脈との連絡役を依頼しました。

スタンフォード大学医学部のチーフ レジデントであるアンドリュー ムーア (Andrew Moore) 博士、医療機器の著名な専門家で 2 つの企業の創業者であるブライアント リン (Bryant Lin) 博士、麻酔科医のルース ファニング (Ruth Fanning) 博士からも意見をもらい、ダリーは素早くそれを取り入れました。

人工呼吸器の性能のテストについては、没入型シミュレーション学習の第一人者であるデイビッド ガバ (David Gaba) 博士に依頼しました。

4 月 17 日金曜日、ガバ博士は精巧な肺シミュレーターでプロトタイプをテストしました。テストは、COVID-19 による肺疾患を起こした 2 つの段階の肺と正常な肺を模し、人工呼吸器をさまざまな設定にして行われました。

プロトタイプは期待どおりにうまく動いたとダリーは報告しています。

低コストで簡単に組み立てられる人工呼吸器のオープンソース設計について、詳しくは NVIDIA のチーフ サイエンティストであるビル ダリーの論文をお読みください

5 分で部品から動作可能な人工呼吸器に

ダリーが自宅の作業室で組み立てた人工呼吸器の最新プロトタイプは、変わらずシンプルなまま、信頼性の高いものです。

装置の空気供給部品は 5 分でボルト締めして組み立てられるとダリーは報告しています。それを簡易ディスプレイに取り付け、人工呼吸器全体をコンパクトなペリカンのキャリーケースに入れることができます。

空気の流れ、圧力、量を正確に調整できるため、「バッグ バルブ」の救急用人工呼吸器よりも良い治療ができるとダリーは言います。また、部品数も消費電力も少なく、低コストです。

そのほかにも、空気の流れを正確に測って供給する、バルブの不正確さを補う、最大圧力を制御する、患者の自発呼吸を可能にする、アラーム状況を監視するなどのセンサーを含め、さまざまな特徴があります。

ダリーは現在、米国食品医薬品局の緊急使用許可を得るのに必要な書類作成を進めています。

それが終わったら、次のステップでは、この人工呼吸器の製造開始への道を探ることになるでしょう。

この他の革新的なプロジェクトについては、Research at NVIDIAで詳細をご覧ください。


Brian Caulfield

Brian Caulfield edits NVIDIA's corporate blog. Previously, he was a journalist with Forbes, Red Herring, and Business 2.0. He has also written for Wired magazine.

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