ドキュメンタリー シリーズ「I AM AI」のエピソード 2 は、トラック運転手にとっての安全性の向上がテーマです。
米国を横断する貨物のほとんどを運搬しているのが、トラック運転手です。労働時間が長いだけでなく、オンライン注文に対する需要が拡大し続けている現状と、吹雪やラッシュ アワーの渋滞の中でも運転しなければならない危険性も考え合わせれば、大きなストレスがかかる仕事です。
ドキュメンタリー シリーズ「I AM AI」のエピソード 2 では、トラック メーカーの Peterbilt 社、Kenworth 社、および DAF ブランドのトラックを製造している PACCAR 社が、運転手の負担を軽減するため AI をどのように利用しているかを取材しました。
米国ワシントン州北西部に技術センターを保有し、25,000 人の従業員を抱え、年間 170 億ドルの売上を達成している PACCAR 社は、セミトレーラーの運転の自動化に取り組んでいます。これにより、運転手の過大な負担を軽減できる可能性があります。
PACCAR 社は最近、シリコンバレーでイノベーション センターを開設しました。ここでは、次世代の製品開発をコーディネートするとともに、将来の車両性能にメリットをもたらす新技術を見きわめます。
PACCAR 社の先進技術担当ディレクターであるカール ハーガート (Carl Hergart) 氏は、次のようにコメントしています。「トラックはまさに、米国経済の血液のような存在です。私たちは可能な限り、トラック運転手にとっての安全性と快適性を高め、生産性も向上させたいと考えています。」
トラックが「見る」のを支援
高度に自動化されたシステムの研究の一環として、PACCAR 社のエンジニアは、トラックの外側全体 (グリル、バンパー、ミラーなど) にカメラやセンサーを設置した後、集められた膨大な量のデータを NVIDIA DRIVE PX 2 AI スーパーコンピューターで高速処理しています。DRIVE PX が処理し、フュージョンした画像データは、次に、ニューラル ネットワークに読み込まれ、トラックが何を「見ている」のかが分析されます。
運転手は、車内にあるスイッチを単純に切り替えるだけで、自動運転モードを開始できます。システムの内部では、さまざまなテクノロジが、変化し続ける周辺環境の地図情報をトラックにフィードし始めます。
PACCAR 社のパワートレイン制御主任エンジニアであるクリストファー バルトン (Christopher Balton) 氏は、次のように述べています。「トラックは、各センサーから、周辺環境のイメージを作ります。そして、その環境の中における自車の位置に基づき、これからどこへ向けて走行すべきかを決定します。」
転移学習のメリット
PACCAR 社の取り組みに大きく役立ったのは、「転移学習」と呼ばれるコンセプトです。これにより同社は、NVIDIA が普通車を使って構築したトレーニング データをシームレスに利用することが可能になりました。トラックを使って全国のすべての道路をマッピングするのが非現実的であることを考えれば、この判断はとても重要でした。
バルトン氏は、次のようにコメントしています。「私たちは、NVIDIA がまったく異なる環境でトレーニングしたニューラル ネットワークを、当社のトラックにそのまま適用できました。既存の学習内容を当社の環境に移せるというのは、とても有用です。」
PACCAR 社は、データそのものを作る必要がなかったため、開発のさらなる進化にリソースを集中させることが可能になりました。例えば、現在では、道路標示が薄くなっている道路や悪天候下での運転に対応するため、「レベル 4」システムの信頼性向上に取り組んでいます。
運転手は失業しない
ほとんどの AI 開発プロジェクトと同様、自動運転トラックの開発も、「ある日、運転手は全員、テクノロジに取って代わられてしまうのではないか」という不安を呼んでいます。
しかしハーガート氏は、次のように述べています。「私たちが目指しているのは、運転手を解雇することでは決してなく、むしろ、そのきつい仕事を楽にすることです。航空産業に目を向ければ、飛行機の自動操縦機能はずいぶん前に導入されていますが、現在でもコックピットに 2 人のパイロットが必要です。トラック業界でも、同様の状況になっていくと思います。」
AI イノベーターのページでは、ドキュメンタリー シリーズ「I AM AI」の他のエピソードもご覧いただけます。