ある程度の自律機能を備えている自動車は、既に発売されています。この記事では、今後発売される可能性のある自動運転車について解説します。
自動運転車は、もはや SF ではありません。今でも、混雑した高速道路で自動運転し、縦列駐車ができる自動車を購入できます。しかし、ドライバーと同じように運転できる自動車が発売されるまでには、まだ数年間待たなければなりません。
最初の自動車が低速の蒸気自動車からガソリン自動車を経て、現在、電気のみで走行する自動車へと発展したのと同様に、「ドライバーが不要な自動車」に向けた革命は段階的に進んでいます。複数台のサーバーのラックを搭載して、カリフォルニア州の高速道路を既に走行しているプロトタイプから、消費者が実際に乗ることができる自動運転車へと飛躍的に発展するために不可欠なことは、コンピューティング パワーの増強と省スペース化です。
NVIDIA の Xavier System-on-a-Chip などのブレイクスルーによって、その実現が近づいています。ラスベガスで今月開催されたコンシューマー エレクトロニクス ショー(CES)で詳細が公表された Xavier は、これまでに生産された中で最も複雑なシステム オン チップ (SoC) であり、90 億を超えるトランジスタを搭載しています。その研究開発には、20 億ドルの資金が投資されました。
こうしたコンピューティング能力によって、どのような機能を実現できるのでしょうか。完全な自律性の実現に向けた道のりを定義するために、Society of Automotive Engineers (一般的呼称: SAE International) は、極めて多様な要素がかかわるテクノロジ分野で明確なベンチマークを確立するために、自律機能について詳細な 6 つのカテゴリを策定しました (そのガイドラインは、NHTSA の以前の標準に取って代わります)。
以下に、各カテゴリの自動車と実現する可能性がある時期ついての要点をまとめています。
レベル 0 – 1970 年代の古典的なステーション ワゴン
消費者向け自動車の発売時期: 1900 年~現在
最も低いレベル 0 は、自動化なしで実質的にシートとハンドルから構成されます (自動変速装置は考慮されません)。このレベルは、映画「ナショナル ランプーン/ホリデー ロード 4000 キロ」で使用された Clark Griswold の側面がビニル樹脂のステーション ワゴンから、はるかに近代的な自動車まで、幅広い自動車を対象としています。
Volvo の Lane Departure Warning(車線逸脱警告)や Nissan の Moving Object Detection(移動物検知)など、視聴覚による警告を発するドライバー支援システムを搭載した現代の自動車も、このレベルに該当します。このレベルの自動車は、警告音や光の点滅以上の機能を持たず、運転と速度変更のために依然として人間のドライバーに完全に頼っています。
レベル 1 – 大衆向けの自動車
消費者向け自動車の発売時期: 2007 年
今日のほとんどの自動車には、速度制限を支援し、ブレーキ支援機能を提供するためにカメラやセンサーなどの機器が搭載されています。具体的な例としては、他の自動車に近づきすぎたときに自動車を減速させる Ford の Collision Warning with Brake Support(ブレーキ サポート機能を備えた衝突警告)や、カーブを曲がるときにスピードを設定し、車間距離を制御する Nissan の Intelligent Cruise Control(インテリジェント クルーズ コントロール)などがあります。このレベルではまだ、ハンドルから手を離すと非常に危険です。
レベル 2 – 一部の高級車で利用可能
消費者向け自動車の発売時期: 2014 年
今日のほとんどの高度なドライバー支援システムは、レベル 2 に該当します。これには、Tesla の Autopilot、Cadillac の Supercruise、Volvo の Pilot Assist などがあります。レベル 1 の自動車が速度またはステアリングのいずれかを制御するのに対して、レベル 2 の自動車は、両方を同時に制御することができ、車線維持支援などの機能を備えていることがあります。自律モードは特定の条件に制限され、高速道路や明確な車線のある道路以外の複雑な地域を運転する場合は、依然として人間のドライバーが運転する必要があります。
今日、レベル 2 の自律性を備えた自動車は路上を走行していますが、進歩の余地があります。
次のステップでは、自動車の内部と外部の両方に設置されたセンサーからの入力を組み合わせて、自動車がドライバーと周辺環境に、よりインテリジェントに反応できるようになります。これは自動運転ではありませんが、常にドライバーと乗っている人の安全性を確保するために、アクションを起こすことができます。NVIDIA は、これをスーパー レベル 2 と呼んでいます。これは、膨大なコンピューティング パワーを必要とするタスクです。
レベル 3 – 現在、Audi などの少数のメーカーのみが挑戦している
消費者向け自動車の発売時期: 2018 年
レベル 3 の自動車は、人間の操作なしで運転し、加速または減速し、他の自動車を追い越すことができます。また、事故現場や渋滞を回避することもできます。レベル 2 の自動車では、ドライバーが少なくとも人差し指や小指でハンドルに触れている必要があります。レベル 3 のシステムでは、特定の状況に限られますが、ドライバーはハンドルから手を離し、ブレーキやアクセルから足を離すことができます。しかし、自動車によって要求された場合は、まだ人間による運転に切り替える準備をしておく必要があります。
一部のメーカーは、自動運転から人間の運転への切り替えをリスクとみなし、Volvo などの主要な企業はレベル 3 をすべてスキップしています。「何か他のことをしていると、再び集中して運転を引き継ぐまでに 2 分以上かかるケースがあることが研究により示されています。これでは、切り替えはまったく不可能です。」と、Volvo の CEO であるホーカン サムエルソン (Hakan Samuelsson) 氏は Bloomberg のインタビューで述べています。
しかし、Audi の見解は異なります。このドイツのメーカーは、最初に市販されるレベル 3 のフラッグシップ自動車として Audi A8 を発表しました。2018 年に路上を走行する予定のこの自動車は、最大時速 60 km のスピードで自動運転し、渋滞や混雑時の低速な運転に対応し、人間による運転を再開するために 10 秒の猶予がドライバーに与えられます。
レベル 4 – 移動するオフィスや映画館
消費者向け自動車の発売時期: 2021 年
SAE のガイドラインによると、レベル 4 の自動車は、「人間のドライバーが介入要求に適切に対応しない場合でも」安全に走行できる必要があります。レベル 4 の自動車は、要求されたときにドライバーが運転しない場合、減速し、安全な場所で停車し、または自ら駐車します。このような状況は、オフロード ドライビングや地図に載っていない道路など、比較的厳しい運転条件で生じるおそれがあります。
前例のない 320 TOPS (Tera-Operations Per Second) のディープラーニング計算と多数のディープ ニューラル ネットワークを同時に実行する能力により、Xavier ベースの NVIDIA DRIVE Pegasus は、安全な自動運転に必要なすべてを提供します。
自動運転は、膨大なコンピューティング パワーを必要とするタスクです。今日のテスト用自動運転車は一般にトランク一杯のコンピューティング機器を搭載していますが、この状況は変化しています。NVIDIA は、コンパクトなパッケージで 30 TOPS を実現する NVIDIA DRIVE Xavier SoC でレベル 4 の自律性を実現することを計画しています (「NVIDIA DRIVE Xavier: 世界でもっともパワフルな SoC が劇的な AI 機能を実現」を参照してください)。
最初のレベル 4 の自動車は、2021 年に発売される予定です。自動運転車に対するメーカーのビジョンが実現した場合、その自動車は、単なる輸送手段ではなく、移動する小さなオフィス、シアター、ホテルの客室のようなものになります。
レベル 5 – 「マイノリティ レポート」の Lexus 2054
消費者向け自動車の発売時期: 2020 年代半ば
レベル 5 の自動車では、行き先を自動車に伝えた後、人間は一切関与する必要がなくなります。このような自動車は、制限なく人間のドライバーに可能なすべてのことを実行できます。レベル 5 の自動車は、都市のドライブからオフロード条件まで、あらゆる状況で運転できる自動交通手段となる可能性があります。
レベル 5 の自動車が消費者市場で発売されるまでには長い時間がかかるかもしれませんが、限られたエリアやジオフェンスが設定されたエリア内で、レベル 5 に近づく自動車が近いうちに発表される可能性があります (厳格に言えば、レベル 4 の自動車になります)。一方、内装が自動車というよりも航空機のファーストクラスのように見える Audi の Aicon などのコンセプト カーに乗れば、自動車の愛好家は、地元の映画館でチケットを買ってこの映画を見なくても、将来、路上を走行する自動車のイメージをつかむことができます。