自動車からゲーミングまで: CES 2018 における NVIDIA 発表内容のハイライト

投稿者: Brian Caulfield

先週ラスベガスで開催された CES 2018で、 NVIDIA は、自動運転の実現に向けた安全なソリューションの開発を目指すレースで、自社と競合他社との距離をあっさりと拡げました。

1,000 人近い参加が集まったプレス カンファレンスで、NVIDIA CEO のジェンスン フアン (Jensen Huang) は、NVIDIA が 320 社を超えるパートナーと自動運転分野で協業を進めていることを発表しました。これには、3 大陸での主要企業との新たな取り組みも含まれます。

これらの協業の中心となるのは、自律動作マシン向け DRIVE Xavier プロセッサです。フアンは、これまでに開発された中でもっとも複雑なシステム オン チップである Xavier のサンプルが、最初の発表から 1 年余り経ったこの四半期中に、特定のお客様に提供されることを明らかにしました。

「未来のクルマの複雑さは信じがたいほどです。ディープラーニング、コンピューター ビジョン、ハイ パフォーマンス コンピューティングを優れた効率で処理できる Xavier があってこそ実現できるものです」と、フアンは自動車業界や家電業界から会場に詰めかけたプレス、パートナー、専門家に向けて語りました。

また、車載用 AI の中心における自社の役割を理解する NVIDIA は、Volkswagen との提携、業界最大手の自動車関連サプライヤー ZF と Baidu との提携、ライドシェアリング サービス Uber との提携、そして、自律走行分野の主要企業チームが率いるスタートアップ Aurora との提携も発表しました。

フアンは次のように述べています。「将来、あらゆる車両が自動運転になるでしょう。毎年 1 億台のクルマ、数百万台のロボタクシー、数十万台のトラックが製造されるようになる。そして、そのすべてが自律するのです。さらに、そのドライビング体験は AI によって決まるでしょう。」

Xavier が AI コンピューティングの圧倒的な馬力を実現

Xavier は、上記のようなパートナーに、今後進むべき明確な道筋を示します。毎秒 30 兆回もの演算を処理できるにもかかわらず、消費電力はわずか 30 ワットに抑えられており、NVIDIA の旧世代のアーキテクチャに比べて 15 倍のエネルギー効率の向上を実現しています。また、ナンバー プレートよりも小さなボードに収まるにもかかわらず、今日の自動運転車の多くで使用されているトランク一杯のコンピューターと同等の性能を提供します。

「自動運転の複雑さ、未来のクルマに必要なソフトウェアの複雑さは信じがたいほどです」と、フアンは言います。「もちろん、DRIVE Xavier というまったく新しいタイプのプロセッサの開発があってこそ実現できるものです。Xavier は、ディープラーニングや認知を可能にする自律動作マシン向けプロセッサで、並列コンピューティングを行う能力のほか、コンピューター ビジョンやハイ パフォーマンス コンピューティングを、きわめて高いレベルのエネルギー効率で実行できる能力を備えています。」


NVIDIA CEO のジェンスン フアンが新しい自律動作マシン向け Xavier SoC を発表したのは 1 年と少し前のことです。

90 億個を超えるトランジスタを搭載した Xavier は、これまで開発された中でもっとも複雑なシステム オン チップであり、2,000 人を超える NVIDIA のエンジニアによる 4 年以上の取り組みと、研究開発への 20 億ドルに上る投資の成果だと、フアンは説明します。

「PC、ラップトップ、ゲーム コンソール、スーパーコンピューターと開発してきた今だからこそ言えるのは、自律走行車向けのコンピューターの開発は、例外なく、これまで世界が経験したことのないレベルの複雑さを伴うものだということです。」

「このコンピューターは常に稼働し、送信されるすべてのセンサーデータを監視します。生命を預かっているため、けっして失敗は許されない。これまで誰一人として書き方を知らなかったソフトウェアを実行しながら、正しい判断を下さなければならないのです。」

世界各国の自動車業界における新たな提携の数々

Xavier は、まさに世界各国の自動車業界の企業がかつてない性能を備えた次世代自動車の実用化に向けた準備を進めているタイミングで登場しました。

フアンは次のように言います。「私たちは、AI によってゆくゆくは自動運転車のマイル当たりのコストが社有車のコスト以下、あるいは少なくとも同等の水準にまで下がると考えています。そして、それが実現したら、自動運転車はモビリティ サービスに変革をもたらすと見込んでいます。」

フアンは、自動車業界にとっての AI の重要性を力説する Volkswagen の CEO、ヘルベルト ディース (Herbert Diess) 氏を壇上に迎え、AI とディープラーニングによっていかに新世代の Volkswagen 車の開発が具体化するかを語りました。


挨拶を交わす NVIDIA CEO のジェンスン フアンと Volkswagen CEO のヘルベルト ディース博士

AI によって自動車業界にどのような変革がもたらされるかを両者が説明するなか、Volkswagen のアイコン的車種「マイクロバス」をモデルとした新型「I.D. Buzz」が紹介されました。Volkswagen でのこの取り組みにおいて、NVIDIA DRIVE IX プラットフォームが重要な役割を果たすことになる、とディース氏は言います。

また、フアンは、Uber が自動運転車に搭載する AI コンピューティング システムに NVIDIA のテクノロジが採用されたことを発表しました。この協業では、Uber Advanced Technologies Group の自動運転車と自動運転貨物トラックに NVIDIA のテクノロジが利用されます。

さらに中国では、Baidu と世界最大手の自動車関連サプライヤーの 1 つである ZF と協業し、DRIVE Xavier、ZF の最新 ProAI 車載コンピューター、Baidu の Apollo Pilot をベースとする量産対応の AI 自動運転車プラットフォームの開発を進めます。

フアンは次のように述べています。「NVIDIA と Baidu は、この数年間、共に先頭に立ってディープラーニングと AI の大きな発展に尽力してきました。今回、ZF を新たに迎え、初の AI 自動運転車コンピューティング プラットフォームを中国向けに開発しました。」

より身近なところでは、NVIDIA は、自動運転分野の有名な先駆的企業チームが率いる自動車スタートアップである Aurora と提携し、自動運転車向けの最新モジュラーと、スケーラブルな DRIVE Xavier プラットフォームを提供しています。

「NVIDIA は、Aurora のような企業のために DRIVE Xavier を開発しました。当社の 2 組のワールドクラス エンジニアリング チームは、高度な自動運転車とサービスとしてのモビリティ (Mobility-as-a-Service) ソリューションの実現に必要な AI の能力と膨大な処理について、共通の理解を共有しています」と、フアンは言います。

ソフトウェアが次世代車両のあらゆる側面に AI をもたらす

これらのパートナーは、ますますパワフルになる NVIDIA DRIVE ソフトウェアスタックを利用できます。その範囲は今や、次世代自動車の車内での体験をあらゆる側面でカバーする 3 つの AI プラットフォームにまで拡大しています。

ニューラル ネットワークを利用して自動車の自動運転を可能にする、オリジナルの NVIDIA DRIVE AV 自動運転車開発プラットフォームを補完するものとして、フアンは 2 つの新しいソフトウェア プラットフォーム「DRIVE IX」と「DRIVE AR」を発表しました。

NVIDIA のインテリジェント エクスペリエンス ソフトウェア開発キットである DRIVE IX は、車両の内外に設置されたセンサーを使って、運転手と乗客の両方を支援する AI アシスタントを実現します。


NVIDIA DRIVE AR によって実現する AI の機能は、私たちがクルマを運転する方法を一変させるようなものになるだろう、と NVIDIA CEO のジェンスン フアンは言います。

DRIVE AR は、NVIDIA の拡張現実 SDK です。モバイル デバイスでは AR の機能をすでに体験できますが、AI 自動車向けのこのソフトウェア プラットフォームによって、コンピューター ビジョン、コンピューター グラフィックス、および AI が融合されます。

DRIVE AR は、運転中に重要な情報を提供する、アラートを生成する、安全かつ容易なナビゲーションを行う、といった用途に利用できる、次世代の拡張現実インターフェイスを実現します。「ドライビング体験を本当に決めるものは自動車メーカーが車載用に開発する AI だと、NVIDIA は考えています。」

他にも発表は目白押し

フアンが日曜に行った発表は、自動車業界に限られていたわけではありません。

1,000 億ドル超規模のコンピューターゲーミング市場における NVIDIA の能力を示すものとして、フアンは、巨大スクリーンでの PC ゲーミング体験を実現するまったく新しいタイプのディスプレイ、「Big Format Gaming Display」(BFGD) を発表しました。


NVIDIA のテクノロジによって発展するゲーミングがかつてないほどの飛躍を見せていると NVIDIA CEO のジェンスン・フアンは説明します。

「Big Format Gaming Display によって、私たちがこれまで経験したことがないような、驚くほど流動的で、G-Sync HDR に対応した、非常になめらかなゲーミング体験を実現する巨大ディスプレイで、PC ゲーミングを楽しめるようになります」とフアンは話しました。

この他、NVIDIA は、GeForce NOW (ベータ版) を PC ユーザーに拡大して、AAA クラスのゲーミングを 10 億台以上の PC に新たに提供すること、そして、ゲームプレイをカスタマイズできる新しい GeForce Experience 機能をロールアウトすることも発表しました。

しかし本当のサプライズは、フアンがゲーミングについて話したことではなく、ビジュアル コンピューティング、グラフィックス、および物理シミュレーションにおける NVIDIA の専門知識によって、いかに AI の採用が加速されるかをフアンが提示できたことにあります。

さらにフアンは、ゲーミングとシミュレーションにおける NVIDIA の専門知識、そして AI を利用してドライビングに革命をもたらす当社の取り組みが、いかに融合され得るかを示しました。


NVIDIA は、仮想自動車のシミュレーションがよりスマートかつ安全な実車の開発にいかに役立つかを、見事なデモで示しました。

フアンは、現実世界をシミュレートする NVIDIA の能力が、実用化に向けて AI ソフトウェアをトレーニングするための能力をどのようにして NVIDIA にもたらしたのかを、見事なデモで示しました。

フアンは次のように説明します。「クルマがきわめて複雑な世界を走行できるようにすること、そして、それを非常に安全な形で実現することは、実に信じられないほど困難な課題なのです。本日ご紹介するように、当社は非常に大きな進歩を遂げています。これは、世界の主要業界、人々の動き、そして、モノの動きの一例です。それには、クルマ、タクシー、サービスとしてのモバイルおよびモビリティ、トラック輸送が含まれます。」

一言で言うと、自動車業界であれゲーマーであれ、フアンが伝えたいシンプルなメッセージは、「game on (試合開始だ)」です。