GeForce RTX 50 シリーズのデスクトップ/ノート PC 向け GPU が、CES で発表されました。これらの GPU は、ビデオ、ライブストリーミング、3D などに対応できる新しいツールと機能を提供することで、次の時代の生成 AI とエージェント型 AI によるコンテンツ制作をサポートします。
NVIDIA Blackwell アーキテクチャを基盤とする GeForce RTX 50 シリーズの GPU は、クリエイティブな生成 AI モデルを前世代と比較して小さなメモリ フットプリント、最大 2 倍の速度で実行できます。第 9 世代の NVIDIA エンコーダーにて高度なビデオ編集とライブストリーミングに対応し、NVIDIA DLSS 4 と最大 32GB の VRAM を搭載していることから大規模な 3D プロジェクトを扱えます。
これらの GPU には、AI を活用した 2 種類の新しい NVIDIA Broadcast エフェクト、RTX Video と RTX Remix のアップデートのほか、NVIDIA NIM マイクロサービス (RTX AI PC 上で AI コンテンツの制作ワークフローをすぐに始められるように設計された、事前パッケージ済みの最適化されたモデル) などを含むさまざまなソフトウェア アップデートが適用されます。
生成 AI の時代に対応
クリエイターが生成 AI を活用すれば驚異的な効果が得られますが、モデルがますます複雑化し、その規模も拡大している現状にあっては、最新のハードウェアですら生成 AI を実行するのが困難になる場合があります。
GeForce RTX 50 シリーズは、この問題に対処できるように FP4 のサポートを追加しています。FP4 は、ファイル圧縮と似た、モデルのサイズを減らす低精度の量子化方式です。ほとんどのモデルに採用されているデフォルト方式の FP16 と比較して、FP4 が使用するメモリ量は半分以下であり、50 シリーズの GPU は前世代と比べて 2 倍を超えるパフォーマンスを発揮します。この処理は、NVIDIA TensorRT Model Optimizer が提供する高度な量子化方式により、品質をほとんど低下させずに実行できます。
例えば、FP16 を採用している Black Forest Labs の FLUX.1 [dev] モデルは 23GB を超える VRAM を必要とするため、GeForce RTX 4090 とプロフェッショナル向け GPU を使用しなければ対応できません。しかし FP4 では、FLUX.1 [dev] が必要とする VRAM は 10GB 未満になるため、より多くの GeForce RTX GPU でローカルに実行できるようになります。
FP16 を採用している GeForce RTX 4090 で FLUX.1 [dev] モデルが画像を生成するには、30 ステップで 15 秒の時間がかかります。FP4 を使用する GeForce RTX 5090 では、わずか 5 秒強で画像を生成できます。
新しい NVIDIA AI Blueprint は、FLUX.1 [dev] をベースとする 3D ガイド付き生成 AI に対応しています。これは NVIDIA NIM マイクロサービスとして提供され、テキストベース画像生成のさらに高度な制御を可能にします。このブループリントにより、クリエイターは手作業または生成 AI で作成されたシンプルな 3D オブジェクトを使用して Blender のような 3D レンダラーでレイアウトを行い、AI 画像生成をガイドすることができます。
その後は FLUX NIM マイクロサービスと ComfyUI を利用する事前パッケージ済みのワークフローにより、3D シーンの構成と一致する高品質な画像を生成できます。
この 3D ガイド付き生成 AI 向けの NVIDIA Blueprint は、2 月に GitHub からワンクリック インストーラーを利用して提供される予定です。
Stability AI は、同社の Stable Point Aware 3D (SPAR3D) モデルが今月から RTX AI PC 上で利用可能になることを発表しました。この Stability AI から提供される新しいモデルは、RTX アクセラレーションによって 3D デザインを変革し、リアルタイム編集と 1 つの画像から 1 秒未満でオブジェクトを生成する機能を実現することにより、3D コンテンツ制作において並外れたコントロールを提供します。
プロフェッショナルグレードのビデオをすべてのユーザーに
GeForce RTX 50 シリーズの GPU は、NVIDIA のエンコーダーとデコーダーに飛躍的な進化をもたらし、プログレードの 4:2:2 カラー フォーマット、3D ビデオや仮想現実 (VR) ビデオ向けのマルチビュー HEVC (MV-HEVC)、そして新しい AV1 Ultra High Quality モードに対応しています。
コンシューマー向けカメラのほとんどでは 4:2:0 カラー圧縮しか利用できず、このフォーマットではカラー情報の量が減少してしまいます。一般に、4:2:0 はブラウザでのビデオ再生には十分ですが、熟練のビデオ エディターがビデオのカラー グレーディングを行うために必要な色深度を提供できません。4:2:2 フォーマットは、わずか 1.3 倍の RAW ファイル サイズの増加で 2 倍の色情報を持ち、ビデオ編集ワークフロー向けに理想的なバランスを提供します。
ファイル サイズの増加により、4:2:2 ビデオのデコード時に問題が生じることがあります。しかし GeForce RTX 50 シリーズの GPU は、4:2:2 のハードウェア サポートを備えており、デコーダーあたり 最大 8 本の 4K 60 フレーム/秒 (fps) のビデオ ソースをデコードが可能なため、マルチカメラ ビデオ編集をスムーズに行えます。
GeForce RTX 5090 GPU は 3 つのエンコーダーと 2 つのデコーダーを搭載し、GeForce RTX 5080 GPU は 2 つのエンコーダーと 2 つのデコーダー、5070 Ti GPU は 2 つのエンコーダーと 1 つのデコーダー、GeForce RTX 5070 GPU は 1 つのエンコーダーとデコーダーを搭載しています。このように複数のエンコーダーとデコーダーを備えた構成と高速な GPU の組み合わせにより、GeForce RTX 5090 は GeForce RTX 4090 よりも 60% 高速にビデオを書き出すことができ、GeForce RTX 3090 と比較すると 4 倍もの速度を発揮できます。
また、GeForce RTX 50 シリーズ GPU は第 9 世代の NVIDIA ビデオ エンコーダー (NVENC) を搭載しており、HEVC および AV1 エンコード (BD-BR) のビデオ品質が 5% 改善されているほか、新しい AV1 Ultra Quality モードにより同じ画質で圧縮率を 5% 向上させています。さらに、第 6 世代の NVIDIA デコーダーも搭載しており、H.264 ビデオのデコード速度が 2 倍に向上しています。
NVIDIA は、Adobe Premiere Pro、Blackmagic Design の DaVinci Resolve、Capcut、Wondershare Filmora と協業し、2 月よりこれらのテクノロジを統合していきます。
VR/AR/複合現実 (MR) ヘッドセットの進歩により、3D ビデオの人気が高まりつつあります。新しい RTX 50 シリーズ GPU は MV-HEVC コーデックもサポートしているため、近い将来にこうしたフォーマットも活用可能になります。
ライブストリーミングの支援
ライブストリーミングは大変な仕事で、ストリーマーは視聴者を楽しませ、番組を制作し、ビデオ ゲームをプレイするといったことをすべて同時にこなす必要があります。トップ ストリーマーはプロデューサーとモデレーターを雇って仕事を分担してもらうことができますが、ほとんどのストリーマーはこれらのタスクを独力でこなさなければならず、長時間の作業が必要でした。
Logitech のブランドであり、コンテンツ クリエイター向けの配信ソフトウェアやツールを提供する主要プロバイダーである Streamlabs は、NVIDIA および Inworld AI と協業し、Streamlabs Intelligent Streaming Assistant を開発しました。
Streamlabs Intelligent Streaming Assistant は、助手、プロデューサー、技術サポートの役割をこなす AI エージェントです。助手としては、3D アバターになってストリームに参加して質問に答えたり、ゲームプレイやチャットにコメントしたり、発言のない時間に会話のきっかけを作ったりすることができます。またプロデューサーとしてストリームの制作を支援し、最も関連性の高いシーンに切り替えたり、印象的なゲームプレイの瞬間にオーディオやビデオのキューを再生したりもできます。さらに、ストリームの構成や問題のトラブルシューティングを支援する IT アシスタントとしても活躍します。
Streamlabs Intelligent Streaming Assistant は、デジタル ヒューマンを作成するための NVIDIA ACE テクノロジと、エージェント型 AI 体験を提供する AI フレームワークである Inworld AI の両方を活用します。このアシスタントは、今年後半に利用可能になる予定です。
今まで数百万人のユーザーが NVIDIA Broadcast アプリを利用して、高価な専用機器は必要とせずにオーディオとビデオの品質を高める AI 搭載の機能によってオフィスや自宅の部屋をホーム スタジオへと変えています。
そしてこのたび、AI を活用した 2 つの新しいベータ エフェクトが NVIDIA Broadcast アプリに追加されます。
1 つ目の Studio Voice は、ユーザーのマイクのサウンドを高音質マイクに匹敵するサウンドに向上させます。もう 1 つの Virtual Key Light は、被写体の顔の照明状況を調整して、まるで 2 つのライトで照らされているかのように均等な明るさを提供します。
これらのベータ機能は負荷の高い AI モデルを利用するため、GeForce RTX 5080 GPU 以上でのビデオ会議やゲーム以外のライブストリーム向けとして推奨されます。NVIDIA は、今後のアップデートでこれらの機能をさらに多くの GeForce RTX GPU に拡張する予定です。
今回の NVIDIA Broadcast のアップグレードには、ユーザーがさらに多くのエフェクトを同時に使えるようにするユーザー インターフェイスのアップデートや、バックグラウンド ノイズの除去、バーチャル背景、アイコンタクト エフェクトの改良も含まれています。
アップデートされた NVIDIA Broadcast アプリは、2 月中に提供開始予定です。
ライブストリーマーは、OBS における Twitch の Enhanced Broadcast 機能の最新ベータで、HEVC および AV1 の BD-BR ビデオ品質が 5% 向上するメリットを享受できるほか、Discord や YouTube での配信にて改良された AV1 エンコーダーを活用できます。
また RTX Video は、Google Chrome や Microsoft Edge などの一般的なインターネット ブラウザでのビデオ再生やローカルなビデオ再生を、Video Super Resolution と HDR で強化する AI 機能です。RTX Video の新しいアップデートでは、GPU 使用率が 30% 削減され、Video Super Resolution を高品質で実行できる GeForce RTX GPU のラインアップが拡大します。
この RTX Video のアップデートは、今後の NVIDIA アプリのリリースにて提供予定です。
かつてない 3D レンダリングのパフォーマンス
GeForce RTX 5090 GPU は、これまでの GeForce RTX GPU の中では最大となる 32GB の GPU メモリを提供し、GeForce RTX 4090 GPU と比べると 33% 増加しています。これにより、3D アーティストは複数のアプリケーションを同時に使用しながら、より大規模で豊かな世界を構築できます。さらに、新しい RTX 50 シリーズの第 4 世代 RT コアは、3D アプリケーションを 40% 高速に実行することができます。
DLSS 4 ではマルチフレーム生成が新たに導入されており、レンダリングされるフレームごとに AI を活用して最大 3 つのフレームを生成し、フレーム レートを高めます。この機能により、アニメーターは 4 倍のフレーム数でシーンをスムーズに操作したり、60 fps 以上で 3D コンテンツをレンダリングしたりすることが可能になります。
設計者やデザイナーに人気のプロフェッショナルグレードの 2つの 3D アプリである、D5 Render と Chaos Vantage が、2 月中に DLSS 4 のサポートを追加する予定です。
3D アーティストは、生成 AI を採用して 3D メッシュ、HDRi マップ、さらにはアニメーションの生成を行い、シーンを試作することで生産性を高めています。CES では Stability AI が、RTX アクセラレーションによって画像から 3D メッシュを数秒で生成できる新しい 3D モデル、SPAR3D を発表しました。
NVIDIA RTX Remix は、MOD 制作者がゲーム アセットをキャプチャし、生成 AI ツールを使用してマテリアルを自動的に改良し、フル レイ トレーシングによる驚異的な RTX リマスターを作成できる MOD 制作プラットフォームです。RTX Remix は、DLSS 4 をサポートし、グラフィックの忠実度とフレームレートを向上させ、ゲームプレイ中のリアリズムと没入感を最大限に高めます。
RTX Remix は、近日中に Neural Radiance Cache をサポートする予定です。これは、AI を使用してライブのゲーム データに基づくトレーニングを行い、ピクセルごとの正確な間接照明を推定するニューラル シェーダーです。クリエイターは RTX Remix を使用すれば、MOD 内で RTX Skin にアクセスでき、レイ トレーシングによるサブサーフェス スキャタリングをゲームに初めて実装できます。RTX Remix の RTX Skin を使用することで、MOD で光がキャラクターの肌に反射し、内部に伝搬する様子が表現され、キャラクターがいる世界に自然になじませることにより、新しいレベルのリアリズムを実現します。
GeForce RTX 5090/5080 GPU は、1 月 30 日に発売予定です。続いて、RTX 5070 Ti および 5070 GPU は 2 月、RTX 50 シリーズ ノート PC は 3 月に発売されます。
GeForce RTX GPU を搭載したすべてのシステムには、NVIDIA Studio のプラットフォーム最適化が含まれています。GPU アクセラレーションに対応した 130 を超えるコンテンツ制作アプリに対応し、また人気の高いクリエイティブ アプリケーションのパフォーマンスを強化し、安定性を最大限高めるために、各種テストを受けて毎月リリースされる NVIDIA Studio ドライバーも組み込まれています。
GeForce RTX 50 シリーズのさらなるアップデートにご期待ください。GeForce RTX 50 シリーズによるゲーミングの画期的な強化の詳細については、こちらをご覧ください。また、CES での NVIDIA の発表内容はすべて、こちらに掲載されています。
NVIDIA Studio を活用したクリエイティブ アプリの新しいアップデートや最適化に関する情報も毎月公開しています。
Instagram、X、Facebook で NVIDIA Studio をフォローしてください。Studio YouTube チャンネルではチュートリアルにアクセスでき、Studio ニュースレターに登録すれば最新情報がメールで直接届きます。
ソフトウェア製品情報に関する利用規約をお読みください。