第 96 回アカデミー賞の視覚効果賞ノミネート作品によって、驚くべき技術の進歩が映画の可能性の限界を押し広げていることが証明されました。
巨大な破壊シーンや、胸が高鳴るアクションの連続、宇宙空間での大冒険など、いずれのノミネート作品も視覚効果や VFX に独自の貢献を見せています。また、どの作品のワークフローでも最先端の NVIDIA テクノロジが使用され、スクリーン上に魔法がかけられました。
今年のノミネート作品は以下の 5 作品です。
- 『ザ・クリエイター/創造者』 (20th Century Studios) - Jay Cooper 氏、Ian Comley 氏、Andrew Roberts 氏、Neil Corbould 氏
- 『ゴジラ-1.0』 (東宝) - 山崎 貴氏、渋谷 紀世子氏、高橋 正紀氏、野島 達司氏
- 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3 』 (Marvel Studios) - Stephane Ceretti 氏、Alexis Wajsbrot 氏、Guy Williams 氏、Theo Bialek 氏
- 『ナポレオン』 (Apple Original Films / Sony Pictures) - Charley Henley 氏、Luc-Ewen Martin-Fenouillet 氏、Simone Coco 氏、Neil Corbould 氏
- 『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』 (Paramount Pictures) - Alex Wuttke 氏、Simone Coco 氏、Jeff Sutherland 氏、Neil Corbould 氏
モンスター映画の再発明
『ゴジラ -1.0』では、皆さんご存じの巨大なモンスター、つまり「怪獣」に改めて恐怖を感じさせるというユニークな挑戦が見られます。
予算は 1,500 万ドル未満と、現在の基準からすると少額ですが、この映画の VFX チームは、監督と迅速にイテレーションを行うことで、長いレビュー サイクルを排除し、非常に詳細なコンピューター生成画像 (CGI) モデルも駆使しながら、ゴジラに命を吹き込みました。
ゴジラはクローズアップにも耐えられるよう、頭部だけでも 2 億ポリゴン以上から構成されています。アニメーターは、微妙で複雑な、そして実物のようにリアルな動作をゴジラに加え、そのパフォーマンスを完成させました。
さらに、映画の破壊シーンでは、高度なメモリ集約型の物理エンジンを使用することで、崩れかけた建物や破壊された風景のリアルなシミュレーションを実現し、観客をさらに混沌の中に没入させています。
宇宙のスペクタクル
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』では、ユーモアと息を呑むような宇宙のビジュアルを融合させるというシリーズの伝統が引き継がれています。この作品では、リアルタイム レンダリングを使用することでアーティストはセットでの複雑な空間環境やキャラクターの視覚化が可能になり、これまでの限界を押し広げました。
この映画では、Wētā FX、Framestore、Sony Pictures Imageworks などが協力し、3,000 を超える VFX ショットが作成されました。高密度で没入感のある 3D 環境により、実写と CGI 要素およびキャラクターのシームレスな統合が可能になっています。その結果、シリーズ特有のスタイルを維持しながら、新たな映像領域を開拓した、視覚的に素晴らしいスペース オペラが誕生しました。
『ガーディアンズ』最大の成果の 1 つは廊下での戦闘シーンです。このシーンでは、毎秒 120 フレームで撮影を行い、可変スピード ランプとノンストップ アクションが 1 つの連続ショットとして映し出されています。
詳細な VFX による壮大なストーリーテリング
歴史映画の大作『ナポレオン』は、細部とスケールに細心の注意を払って命が吹き込まれました。この映画では、さまざまなセット エクステンションやプラクティカル エフェクトを用いて、19 世紀初頭のヨーロッパの広大な戦場とその時代特有の建築を再現しました。
ナポレオンの時代の大規模な軍隊を描写する上で高度な群衆シミュレーションが使用され、戦闘シーンのリアリズムを高めるために各兵士が個別の動作でアニメーション化されました。これらの手法は、高解像度のテクスチャとダイナミックなライティングと相まって、現実に基づいた視覚的に説得力のある物語を生み出しています。
AI の境界を探る
AI と仮想現実というテーマを追求した『ザ クリエイター 創造者』では、高度なテクノロジとデジタル世界をリアルに描写できる VFX が求められました。
この映画では、CG アニメーションと視覚効果をふんだんに使用して、未来的かつ現実的な環境を作り出しています。『ローグ ワン』や『ゴジラ』 (2014 年) でも知られる Gareth Edwards 監督は、制作費が巨額な超大作を、一般的な制作費の数分の一に抑えて完成させたことで広く称賛されています。
モーションキャプチャとプロシージャル アニメーションを組み合わせて AI エンティティを描写し、本物の人間の動きややり取りと遜色のない複雑さと滑らかさを実現しています。VFX チームは、デジタル意識の複雑なパターンをシミュレートするカスタム ソフトウェアを開発し、バーチャルとリアルの間の境界線を曖昧にすることに成功しています。
強烈なアクションと高精度 VFX の融合
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』で、視覚効果チームは、実際のスタントで知られるシリーズの評判を損なうことなく、今作で特徴となるアクション シーケンスを強化するという課題に直面しました。これを解決するために、CGI を使用して実際の効果をシームレスに強化するというハイブリッドなアプローチを採用しました。
高速なドローン映像に CG 要素が統合されて息を吞むような追跡シーンが作り上げられ、高度な合成技術が爆発や接近戦のシーンにディテールと深みを加え、この作品のアクションを新たな高みに引き上げています。
アカデミー科学技術賞での NVIDIA メンバー
アカデミーの科学技術賞は、映画の制作方法に大きな影響を与えた技術的貢献と、その技術を支える優れた発明者にスポットを当てています。
OpenUSD は、制作ワークフロー全体を合理化する初のオープンソースのシーン ディスクリプション フレームワークとしての重要性が評価され、科学技術賞での受賞となりました。その革新的なレイヤー システムと効率的なクレート ファイル形式により、3D シーンの交換における事実上の標準として確立され、業界全体でこれまでにないコラボレーションを促しています。
また、科学技術賞では他にも、水、火、煙、雲の視覚効果シミュレーションとレンダリングの業界標準となっている、スパース 3D ボリュームのための OpenVDB オープンソース ライブラリといった注目すべきテクノロジも表彰されています。
OpenVDB は、NVIDIA の物理研究部門シニア ディレクターであるケン ムセ (Ken Museth) によって 2009 年に最初に作られ、ムセ、Peter Cucka 氏、Mihai Aldén 氏によってさらに開発が進められています。OpenVDB の最新の進歩については、NanoVDB や NeuralVDB をご覧ください。
また、Lucas Miller 氏、NVIDIA の クリストファー ジョン ホルバート (Christopher Jon Horvath)、Steve LaVietes 氏、Joe Ardent 氏によって開発された Alembic キャッシュ インテーチェンジ システムは、ベイク済みのタイムサンプリングされたデータを保存、取得し、デジタル制作パイプライン全体での高効率のキャッシングとシーン共有を促進する効率的なアルゴリズムが評価されました。
OpenVDB と Alembic はどちらも OpenUSD との相互運用が可能であり、そのユーティリティと業界の制作ワークフロー内での統合が強化されています。
オスカーにノミネートされた VFX の制作過程を GTC でご紹介
3 月 18 日から 21 日までサンノゼ コンベンション センターとオンラインで開催される グローバル AI カンファレンスである NVIDIA GTC で、視覚効果、AI、バーチャル プロダクション、アニメーションについて詳しく学びましょう。今すぐ登録して、映画やテレビで見事なビジュアルを作り上げている業界の著名人たちの講演をご視聴ください。
アカデミー賞受賞者のケン ムセ (Ken Museth) が、3 月 18 日 (月) 午前 9 時 (PT) から、「Open-Source Software for Visual Effects: OpenUSD and OpenVDB (視覚効果用オープンソース ソフトウェア: OpenUSD と OpenVDB)」というタイトルでセッションを行います。
また、OpenUSD Day にもぜひご参加ください。ユニバーサル シーン ディスクリプションを使用して生成 AI 対応 3D パイプラインとツールを構築する方法を学びましょう。GTC のメディア エンターテインメントの全セッションが記載されたリストはこちらからチェックできます。