火星に行った人は、まだ、いません。でも、GPUのおかげで、映画『オデッセイ』でマット・デイモンが演じるマーク・ワトニー宇宙飛行士の火星における行動は、まるで、ドキュメンタリのように感じられます。
この映画で、ワトニー飛行士は、猛烈な嵐でも死なず、たったひとり、「ハブ」という小さな基地で生き延びる術をひねり出し、赤い惑星での過酷な環境に耐え、最後は、宇宙へ飛びたちます。
この映画のストーリーと特殊効果をひとつにするため、特殊効果の世界的大手スタジオ、Moving Picture Companyが採用したのがNVIDIA Quadroグラフィックス・カードです。そして、その結果、ひとりの男が孤軍奮闘して家に帰るという古典的ストーリーを特殊効果で魅せ、きわめて高い評価を得るとともに多くの観客を集める映画が完成したのです。
Quadroによる物語りのツールキット
この物語りの裏話を紹介しましょう。この映画は、Quadroグラフィックス・カードを手にした特殊効果アーティストが支えているのです。最近、映画業界はワークフローが複雑になっており、数えきれないほどのサードパーティ製ツールや独自ツールが使われます。NVIDIA Quadroなら、そのすべてがスムーズに動きます。
MPC Film社チーフ・テクノロジ・オフィサーのDamien Fagnou氏は、次のように述べています。「NVIDIA Quadroを選んだ理由は、グラフィックス・カードの信頼性が高いこと、主なソフトウェア・アプリケーションの認証を得ていること、エンジニアリング・サポートやドライバ安定性、パフォーマンスが業界で抜きんでていることです。」
『オデッセイ』の制作にあたり、特殊効果の世界的大手スタジオ、Moving Picture Companyは、NVIDIA Quadroグラフィックス・カードを採用しました。
『オデッセイ』の制作には、MPCをはじめとするスタジオで働く1000人以上もの特殊効果アーティストが関わっています。火星におけるシーンを担当したのは、プロダクションVFXスーパーバイザであるRichard Stammers氏とMPC VFXスーパーバイザのAnders Langlands氏およびTim Ledbury氏を中心としたロンドン、モントリオール、バンガロールのチームです。特殊効果の中核を担うチームとして、全部で425ショットを担当しました。
今回、特に難しかった点として、リドリー・スコット監督の指示により、2台のカメラを使い、すべてのシーンが3D撮影されていることが挙げられます。特殊効果についても、細心の注意が必要とされたのです。
このような課題に対処するため、MPCが採用したのが、NVIDIA Quadroグラフィックス・カード搭載のLinuxワークステーションです。Quadroのおかげで、さまざまな特殊効果ツールを使うワークフローもさくさくと処理していくことができました。具体的には、モデリングとアニメーションのAutodesk Mayaや、宇宙飛行士がかぶっているヘルメットなどの表面にテクスチャをつけるFoundryのMari、ライティング処理をする同じくFoundryのKATANA、さらには、コンポジティングに使うファウンドリのNukeなどのツールが使われました。
最新技術を仕事に利用する
MPCとNVIDIAの関係はますます深まりつつあります。MPCでは、NVIDIAのQuadro M4000 GPUが標準装備になろうとしています。アーティストは最新のMaxwellカードはより多くのメモリーにアクセスすることが可能になりました。Fagnou氏も指摘するように、そうすれば、大規模なアセットや複雑なテクスチャの作業が進めやすくなるのです。CUDAコアが増えれば、アニメーションをはじめとするコンピュート・インテンシブなタスクの処理能力も高まることになります。
「NVIDIA Kepler世代からNVIDIA Maxwellアーキテクチャへと切り替えると、GPUメモリが倍増します。そうなれば、大規模なアセットや複雑なテクスチャも管理しやすくなります」とFagnou氏は語っています。
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