NVIDIA Vera Rubin NVL72 により、エージェント型 AI の推論をトークンあたり 10 分の 1 のコストで実行できます。エージェント サンドボックスは、NVIDIA Vera 上で従来の CPU よりも 50% 高速に動作し、企業のデータ クエリは Vera CPU で最大 3 倍高速化されます。そして、Lilly、Samsung、Honeywell など 5,000 社の企業が Dell AI Factory with NVIDIA 上で AI ワークロードを実行し、構想を大規模な本番運用へと転換させています。
これが、今月の Dell Technologies World で Michael Dell 氏が示したビジョンです。Dell 氏は、世界全体での AI インフラへの投資額が 2030 年までに 3 兆から 4 兆ドルに達する可能性があり、トークン消費量は同時期に 3,400% 増加すると予測されるとして、その規模感を示しました。
「既に大規模な AI 投資ブームが始まっており、生産性向上のブームも始まりつつあります。当社を含む一部の企業では、既にその動きが見られます。変化のスピードは放物線的に加速しており、その勢いは衰えていません」と Dell 氏は述べています。
続いて Dell の会長兼 CEO である Dell 氏は、NVIDIA の創業者/CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) を基調講演のステージに迎えました。フアンの背後には、Dell Pro Max with GB10 ワークステーションから、NVIDIA Vera Rubin NVL72 を搭載した Dell PowerRack まで、NVIDIA のポートフォリオが展示されていました。
「私たちは今、実用的な AI の時代に到達しました。これこそが、需要が急騰している理由、まさに放物線的に伸びている理由です。今では、数か月かかっていた作業が数週間で、数週間かかっていた作業が数日で、数日かかっていた作業が数時間で済むようになりました。これは生産性の面では大きな前進ですが、必要な計算量は飛躍的に増大しています」とフアンは述べています。
つまり、エンタープライズ AI は、パイロット段階を終え、エージェント型 AI と推論を大規模に展開する段階へと移行したということです。そして、その次の段階を支えるプラットフォームとなるのが Dell AI Factory with NVIDIA です。このプラットフォームは、社内環境内でフロンティア モデルや自律エージェントを安全に実行できます。
エージェント時代に向けた新たな AI ファクトリー
今回のアップデートで中心となるのは、アクセラレーテッド コンピューティング関連の発表です。NVIDIA Vera Rubin NVL72 を基盤とする Dell PowerEdge XE9812 は、大規模なエージェント型 AI 推論において、NVIDIA Blackwell と比較してトークンあたりのコストを最大 10 分の 1 に削減します。
これに加えて、PowerEdge XE9880L、XE9885L、XE9882L の各サーバーも登場します。これらは、NVIDIA HGX Rubin NVL8 を搭載した初の Dell システムであり、ラックあたり最大 144 基の GPU をサポートします。100% 直接液冷式のコンピューティング ノードを備え、HGX B200 と比較して最大 10 倍のパフォーマンスを実現します。
さらに、ネットワーク分野では、液冷式のコパッケージド オプティクス (CPO) と NVIDIA Spectrum-6 イーサネットを特徴とする NVIDIA Quantum-X800 InfiniBand を搭載した、新しい Dell PowerSwitch ポートフォリオが導入されます。
Dell はさらに、コンピューティング、ネットワーク、ストレージを一体として設計した完全に統合されたシステムである Dell PowerRack も発表します。Dell PowerRack は、熱設計、電力管理、ソフトウェア最適化が最初から連携するように設計されています。その結果、コンポーネントを組み合わせる際の統合作業の負担を削減しながら、エンタープライズ規模の AI ワークロードやハイパフォーマンス コンピューティング ワークロードを高速化できます。
CPU については、Dell PowerEdge M9822 および R9822 サーバーで、NVIDIA Vera CPU がエンタープライズ AI ファクトリーにもたらされます。エージェント型 AI 向けに設計された Vera は、データ パイプライン、分析処理、サンドボックス化されたツール、コード ワークロードを実行し、各ステップは前のステップの完了を待って実行されます。
1.2 TB/s のメモリ帯域幅と負荷下でも予測可能なパフォーマンスを誇る Vera は、x86 プロセッサと比較してエージェント型ワークロードを 50% 高速に処理します。これにより、エージェントの応答が速くなり、フィードバック ループが短縮されるため、PowerEdge システムによる AI ファクトリーの出力向上に貢献します。
フアンは次のように述べています。「Vera CPU は、世界中のどの CPU と比べても最高のシングルスレッド性能を備えています。メモリ帯域幅は 3 倍です。その結果、Starburst や DuckDB などのデータベースが驚異的な速さで動作します。エージェントがデータベースに大量のリクエストを投げるため、CPU には極めて高速であることが求められるのです」
Dell AI Data Platform with NVIDIA に新たに搭載されたデータ エンジンである Starburst は、NVIDIA Vera CPU 上で大規模な SQL 分析におけるクエリ スループットを 3 倍に高速化します。
エンタープライズ データは AI ファクトリーの原動力となります。Dell AI Data Platform with NVIDIA の今回のアップデートは、構造化データ向けの cuDF や非構造化データ向けの cuVS など、NVIDIA CUDA-X ライブラリを基盤としたアクセラレーテッド データ エンジンを中心に据えています。
基調講演では、Dell AI Factory with NVIDIA の複数の顧客事例も紹介されました。
Lilly のエグゼクティブ バイス プレジデント兼最高情報およびデジタル責任者であるDiogo Rau 氏は基調講演の序盤に登壇し、Dell と NVIDIA によって大規模に展開された AI インフラを基盤とした、ライフサイエンス分野における Lilly の AI 主導の進歩とイノベーションについて語りました。
Rau 氏は、最先端の科学を大規模に実現するための鍵はテクノロジにあると述べ、次のように語りました。「私たちは今まさに、私たちが知っている病気を終わらせられるかもしれない段階に近づいていると思います。20 年前には夢物語に過ぎなかったことが、今では本気で実現を描けるようになったのです」
続いて Samsung のビデオが上映され、Dell AI Factory with NVIDIA を活用した研究開発、チップ設計、製造向けのユース ケースが紹介されました。
Honeywell の最高技術責任者 (CTO) である Suresh Venkatarayalu 氏は、Michael Dell氏と共に登壇し、同社がパブリック クラウドからオンプレミス AI へと移行した取り組みについて説明しました。同社は、Dell AI Factory と Dell AI Data Platform with NVIDIA を、産業用 AI のユース ケース、デジタル ツイン、データセンターからエッジまでの自動化に活用しています。
「Dell および NVIDIA とのパートナーシップは私にとって、単にインフラを導入するという話ではありません」と Venkatarayalu 氏は述べました。同氏は、拡張性があり、セキュリティが確保され、顧客から信頼される、AI スタック全体が得られるのだと説明しました。
金融サービス分野では、アルゴリズム取引会社である Hudson River Trading が、AI を活用したリサーチを推進するために Dell の導入を拡大しています。同社は、NVIDIA アクセラレーテッド コンピューティングと NVIDIA Spectrum-X イーサネットを搭載した Dell PowerEdge XE9685L サーバーを稼働させ、同社のデータ、モデル、構想の拡大に合わせて拡張できる環境を整えています。
オンプレミスでエージェントとモデルを安全に運用
基調講演で引用された Dell 独自の AI 導入調査によると、AI ワークロードの 67% がクラウド外、つまりオンプレミス、デバイス上、エッジ、コロケーションで実行されています。また、回答者の 88% が、少なくとも 1 つの AI ワークロードをオンプレミスで実行していることも明らかになっています。
オンプレミス AI に関する今回の発表は、Dell 氏が会場に投げかけた問いへの答えでもあります。すなわち、「セキュリティとガバナンスを組み込みつつ、世界最高水準の AI モデルを必要な場所に展開するにはどうすればよいか」という問いです。
その答えの中心にあるのが NVIDIA コンフィデンシャル コンピューティングです。Fortanix、Google、Red Hat などのパートナー企業と連携して提供されるこの技術は、モデルの知的財産やデータを外部に晒すことなく、企業内でフロンティア モデルを安全に展開するための基盤となります。
これにより、企業は使用中の AI モデルや機密データを保護しつつ、オンプレミス型 AI インフラがもたらすトークン効率、パフォーマンス、コスト面のメリットを活用できます。
独自のフロンティア モデルをコンフィデンシャル コンピューティングで保護
Gemini 3.0 を利用可能な Google Distributed Cloud (GDC) が、Dell PowerEdge XE9780 サーバー上でプレビュー提供されています。NVIDIA Blackwell による高速化と NVIDIA コンフィデンシャル コンピューティングによるセキュリティ保護により、企業は高度な AI のためのプライベートなコンフィデンシャル コンピューティング環境を利用できます。
SpaceXAI も、最新の SpaceXAI モデルを Dell AI Factory にオンプレミスで導入します。NVIDIA コンフィデンシャル コンピューティングにより、モデルの重みと企業データはエンドツーエンドで保護されます。
Dell AI Factory 上でネイティブに動作するオープンなフロンティア モデル
NVIDIA Nemotron モデルは、フロンティアクラスのオープン インテリジェンスとして Dell AI Factory インフラ上で動作します。自社のドメインやデータに合わせてチューニングしたオープン ウェイト モデルを求める企業に適しています。
Reflection のオープンソース フロンティア AI モデルもオンプレミスで提供されます。このモデルは、規制産業、政府機関、およびソブリン組織 (データや AI 基盤を自組織の管理下で運用する組織) 向けに設計されています。
さらに、MiniMax-M2.7、DeepSeek Pro、DeepSeek-V4、GLM 5.1、Kimi K2.6 など、NVIDIA NVFP4 最適化を施した追加のオープン モデルが Hugging Face 上の Dell Enterprise Hub で利用可能になり、Gemma 4、NVIDIA Nemotron Super 3、Mistral Small 4、Arcee Trinity-Large-Thinking に加わります。
この新たなエージェント型時代において、企業は自社のデータ、システム、ワークフローが既に存在するハイブリッド環境やオンプレミス環境全体で、エージェントが安全に動作することを必要としています。
OpenAI Codex は Dell AI Data Platform と連携し、顧客が Codex を、エージェントを有用にする社内コンテキストに近づけられるよう支援します。これには、コードベース、ドキュメント、業務システム、運用ノウハウ、チームのワークフローなどが含まれます。Dell と OpenAI は、Codex を Dell AI Factory とどのように連携させるかについても検討していきます。
ソフトウェア パートナーのエコシステム
Dell は、エージェント型 AI やコード アシスタントからコンピューター ビジョンまで、一般的なエンタープライズ AI のユース ケースに対応する新たなソフトウェア パートナーシップを複数発表しました。
これには、3 月に発表された、NVIDIA との共同開発による Palantir の Sovereign AI OS リファレンス アーキテクチャが含まれます。このアーキテクチャは、現在 Dell のインフラ上で動作し、NVIDIA の Sovereign AI OS リファレンス アーキテクチャと統合された Palantir Ontology および AIP のオンプレミス展開を可能にします。
さらに、ServiceNow の顧客は Dell AI Factory を活用することで、インフラとエンタープライズ ワークフローの自動化を結び付け、ビジネス成果に焦点を当てた AI の発見、ガバナンス、運用を実現できます。
また、Dell は Fogsphere、Ipsotek、Mistral AI、Poolside、Uneeq など、幅広い AI 分野のリーダー企業やソフトウェア イノベーターとの新たなソリューションを発表しました。さらに、CrowdStrike および Fortanix とのセキュリティ パートナーシップも発表しています。
デスクサイドからデータセンターまで広がるエージェント
パーソナル ユーザーに関わりの深いニュースとして、NVIDIA NemoClaw スタック、NVIDIA OpenShell ランタイム、NVIDIA Nemotron オープン モデルを搭載した Dell Deskside Agentic AI が登場します。これは、NVIDIA Grace Blackwell アーキテクチャを採用した GB10 および GB300 搭載の Dell Pro Max、ならびに NVIDIA RTX PRO Blackwell ワークステーション プラットフォームを搭載した Dell Pro Precision システム上で動作します。
カスタマイズ レイヤーとなる NVIDIA Nemotron、NVIDIA Agent Toolkit、NVIDIA NeMoClaw は、エンタープライズ自律型エージェントを構築するための基盤を提供します。NVIDIA NeMoClaw はエージェント オーケストレーション ハーネスであり、フアンはステージ上で、ローカル モデルとエンタープライズ データをつなぐ接続レイヤーだと説明しました。これらにより、企業はモデルのカスタマイズ、エージェント ワークフローのオーケストレーション、エンタープライズ データやツールへのエージェントの安全な接続を実現できます。
セキュリティ レイヤーとなる NVIDIA OpenShell は、セキュリティとプライバシー制御を備えた、自律型エージェントの開発と展開向けのオープンソース ランタイムです。インフラ層での企業ポリシーの適用を可能にし、主要なエンタープライズ ソフトウェア プラットフォームと統合されています。
NVIDIA OpenShell は、Dell AI Factory with NVIDIA 全体でサポートされるようになりました。これにより、開発者はワークステーションからサーバーまで、AI エージェントを構築、展開、管理するための安全なランタイムを利用できます。
また、Dell 氏 は NVIDIA AI-Q Blueprint のサポートについても紹介しました。これは、企業がディープ リサーチ向けのマルチエージェント ワークフローを展開するための参考例を提供し、開発からパイロット、本番運用までの道のりを加速させます。
Dell Technologies World の 2 日目
Dell Technologies World の 2 日目には、Dell の最高執行責任者 (COO) である Jeff Clarke 氏とインフラストラクチャ ソリューションズ グループ (ISG) 担当プレジデントの Arthur Lewis 氏が、NVIDIA Vera CPU、Vera Rubin、コンフィデンシャル コンピューティング、Nemotron についてさらに詳しく語り、Dell Deskside Agentic AI のライブ デモも行われました。
フアンと Dell 氏が示したテーマ、「安全で長時間稼働するエージェント、フルスタック ファクトリー、セキュアなオンプレミス展開」は、6 月 1 日から 4 日まで開催される GTC Taipei at COMPUTEX で NVIDIA が行う、さらに広範な発表への布石となりました。
