AI が特に高い投資対効果を発揮すると期待できる領域、そしてあまり期待できない領域について、世界有数の金融機関の回答者 500 人が見解を示す
NVIDIA は数年にわたって、世界有数の金融機関との協力を通じ、急速に進化し続けている幅広い AI 戦略の開発と実行に取り組んできました。過去 3 年間、NVIDIA はこうした金融機関の見解について大規模な調査を実施しています。
調査の結果は、私たちが考えていた通りになるケースもあれば、本当に驚くようなデータが取れるケースもあります。今年の調査は、マクロ経済的に不安定な時期に実施されましたが、その結果には両方のケースが少しずつ入り混じっていました。
銀行やフィンテック機関から保険会社や資産運用会社に至るまで、より正確にリスクを管理する方法を見つけ、効率アップを通じて事業コストを削減し、クライアントや顧客の体験を向上させるという目標が変わることはありません。私たちは、さらに深く掘り下げた調査を実施することで、どの分野の AI に特に関心が集まっているのか等について知ることができました。
グローバルな金融サービス業のプロフェッショナル 500 人近くを対象としてNVIDIAが実施した調査「State of AI in Financial Services: 2023 Trends」 (金融サービス業における AI の現状: 2023 年のトレンド)の結果から、特に重要な 4 つの知見を以下にご紹介します。
ハイブリッド クラウドは引き続き人気
金融サービス会社も他の企業と同様に、機密データはクラウドに移行できないことを承知の上で、AI のトレーニングや推論にかかるコストを最適化しようとしています。費用対効果を向上させる目的で、計算負荷がかかる多くのワークロードをハイブリッド クラウドに移行しています。
今年の調査では、回答した企業の半数近くが、AI のパフォーマンスを最適化し、コストを削減するためにハイブリッド クラウドに移行しつつあることが判明しました。Oracle Cloud Infrastructureなどの主要なクラウド サービス プロバイダーやプラットフォームからの最近の発表もこの転換の流れを後押ししており、クラウドおよびオンプレミスのインスタンス間でのデータ ポータビリティ、MLOps 管理、ソフトウェアの標準化などは、コストと効率の向上戦略を図る上で必須の取り組み事項となっています。
AI ユース ケースのトップは大規模言語モデル
アメリカとヨーロッパに拠点を置く企業 (サンプル数は 200 強) を対象とした調査の結果によると、AIのユース ケースの上位は、自然言語処理と大規模言語モデル (26%)、レコメンダー システムと次善のアクション (23%)、ポートフォリオの最適化 (23%)、不正行為の検出 (22%) となりました。また、メタバース 、合成データ生成 、仮想世界などの新しいワークロードを挙げる回答者も多く見られました。
銀行、商社、ヘッジ ファンドなどは、パーソナライズされた顧客体験を実現するために、これらのテクノロジを採用しています。例えば、ドイツ銀行は最近、NVIDIA と複数年にわたるイノベーション パートナーシップを結んだことを発表しており、インテリジェント アバター、スピーチ AI、不正行為の検出、リスク管理などのユース ケースで AI を金融サービスに組み込み、総所有コストを最大 80% 削減することを目指すと述べています。ドイツ銀行では、NVIDIA Omniverse を利用して 3D 仮想アバターを構築し、従業員向けに社内システムのナビゲートや人事関連の質問への対応をサポートしていく予定です。
銀行は AI によるさらなる収益拡大の可能性に期待
今回の調査では、AI が金融機関に定量評価可能な影響を及ぼしていることも明らかになりました。回答者の半数近くが、AI は自社の年間収益を 少なくとも10% 増やすために有用と述べています。また 3 分の 1 以上が、AI は年間コストを 10% 以上減らすために有用と答えています。
金融サービス業の専門家は、AI が業務の改善にどのように役立ってきたかという質問に対し、特に顧客体験の向上 (46%)、業務効率の向上 (35%)、総所有コストの削減 (20%) を挙げています。
例えば、コンピューター ビジョンと自然言語処理は、財務書類の分析と請求処理の自動化を支援することで、企業の時間、経費、リソースを節約しています。また、AI はマネーロンダリングの防止や顧客管理プロセスの強化を通じて不正行為を防ぐ一方、レコメンダーは企業の顧客やクライアントのためにパーソナライズされたデジタル体験を作り出します。
最大の障害: AI 人材の採用と維持
しかし、企業が AI の目標を達成できるようになるまでには、さまざまな課題もあります。特に AI 専門家の採用と維持が最大の障害であり、回答者の 36% がこの問題を懸念しています。また、回答者の 28% は、AI イノベーションの実現に向けての技術力不足も挙げています。
金融サービスの専門家の 26% は、もう 1 つの喫緊の課題として、モデルのトレーニングと精度向上に必要なデータのサイズが不十分であることも指摘しています。この問題は、ジェネレーティブ AI によって作成した正確な合成金融データで AI モデルをトレーニングすることで解決できる可能性があります。
AI に対する経営層の支持は過去最高水準
以上のような課題もあるものの、金融サービス業における AI の未来はますます明るくなっていると言えます。経営層の AI に対する支持の高まりは、今回の調査結果で見られた新たな傾向です。回答者の約 64% は「自社の経営陣は AI を高く評価し、その可能性を信じている」と回答しており、1 年前の 36% という数字から大きく増えています。また、回答者の 58% は「AI は自社が将来成功するために重要である」と述べており、こちらも 1 年前の 39% から上昇しています。
金融機関各社は、今後もエンタープライズ AI の構築に引き続き取り組んでいくでしょう。これには、ハードウェア、ソフトウェア、サービスといった AI インフラのスケールアップとスケールアウトも含まれます。
ボトルネックを最小限に抑えながら、データ サイエンティスト、クオンツ、開発者を強力にサポートするには、高度なフル スタックの AI プラットフォームが必要です。経営層は、AI 対応アプリケーションの導入によって高い ROI を実現できることを目の当たりにしています。これらのリーダーは、2023 年には、自社全体で AI を拡張し、データ サイエンティストを増員し、アクセラレーテッド コンピューティング テクノロジにさらなる投資を行うことで、AI アプリケーションのトレーニングと展開をサポートする取り組みに注力していくと思われます。
調査結果や知見の詳細については、「State of AI in Financial Services: 2023 Trends」 (金融サービス業における AI の現状: 2023 年のトレンド)レポートをダウンロードください。
Capital One、Deutsche Bank、U.S. Bank、Ubiquant といった業界リーダーが実施している NVIDIA GTC のオンデマンドセッションもご覧いただけます。よりスマートで安全な金融サービスの提供や、AI を活用した銀行についても、ぜひWEBページをご覧ください。