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AIができることはAIに:GPUパワーで創薬研究を加速させるエルピクセル「IMACEL」

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ライフサイエンスと画像解析に強みをもつエルピクセルが製薬企業との協業を加速しています。同社は医師の画像診断を支援する医療AIサービス、「EIRL」を展開しており、これまで約250以上の医療施設に導入され、日本各地の医療施設において社会実装が進んでいます。EIRLと共に、これまで培ってきた画像解析技術やコンサルティングのノウハウを活かし、注力しているのが創薬支援に特化したAIプラットフォーム「IMACEL(イマセル)」です。IMACELが提供する、細胞の画像解析や小動物の行動解析AIは、第一三共、武田薬品工業、アステラス製薬といった製薬企業の創薬研究に活用されています。

第一三共と業務委託締結、専門家による目視の作業時間を1/10に

製薬企業の創薬プロセスには探索研究から前臨床試験を経て、臨床試験、製造、そして市販後と、それぞれの過程で様々な課題があります。エルピクセルはそれぞれの過程で画像解析を軸に貢献しています。

第一三共とは2021年に、抗体薬物複合体(ADC)標的分子と免疫細胞などを対象とした蛍光多重免疫染色画像解析※1の自動化に関する業務委託契約を結びました。IMACELを使うことで、従来は専門家の目視に頼っていたため属人的な経験によってスループットが左右され、時間も最大十数時間かかっていた作業が、1~2時間で実施可能となりました。精度も専門家と遜色ありません。現在、技術検証フェーズを経て実装化のための共同研究開発を進めている段階です。

2022年にはさらに、第一三共と包括提携契約を締結しました。様々なAI活用やDX化のニーズにこたえるための準備を進めています。

エルピクセル CTOの袴田和巳氏は「我々の一番の強みはウェットな研究に自分たちも取り組んできた経験があるところです。他社AIベンダーと違ってウェットな研究知識を備えた人間がメンバーには多く、ビジネスサイドの人間もお客様のニーズを汲むことができます」と述べています。第一三共から一番評価されているポイントも、バイオロジーのナレッジを豊富に有しており、研究者との会話がしっかりできるところにあると言います。

「効率化」と「新たな価値の提供」の両面を推進

エルピクセル サイエンス事業開発グループ グループリーダーの加藤祐樹氏は、創薬分野におけるAIのメリットは大きく分けて二つあると考えます。一つは効率化であり、小核試験2のような定型作業や、シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社との提携によって取り組んでいるウイルスの力価測定の迅速化と自動算出など、人による目視や労力が必要であった作業を代替することです。

二つ目は、AIでなければ成し遂げられない技術の実現です。蛍光多重免疫染色画像解析のように数十万化合物を自動チェックするようなことは、そもそも人力では不可能であり、また既存のソフトウェアでは十分な解析精度も出ませんでした。計算力が利用できるようになって実現した技術なのです。言語化が難しい微細な構造変化の発見や、精緻な定量化も、AIによって初めてできるようになりました。

探索研究への応用

IMACELは、このようなAIによる効率化や新たな価値創出を、創薬における開発から臨床までの各ステップで提供します。

まず探索研究においては、たとえば核を標識した染色画像から目的を検出し、さらにそれがどういう形態学的違いがあるのかを自動で分類し、グループごとに定量化することができます。この技術を使うことで、目的とした形態学的変化を起こせる化合物をスクリーニングすることが可能です。

iPS創薬など再生医療にも応用できます。再生医療では、幹細胞を目的とした細胞に分化させられたかどうかのチェックが重要です。通常は分化マーカーを使って染色して判定しますが、非染色状態での分化判定が必要な場合もあります。そこで明視野画像と分化マーカーを使った画像をセットで学習させることで、明視野画像のみで分化誘導できているかどうかを判定できるようになりました。

前臨床研究への応用

前臨床研究では安全性試験を中心として膨大なサンプルを目視観察で扱う必要があります。しかし、技術者の熟練度に依存しているため均質性や再現性には課題があります。ここに画像解析AIを用いることで高スループットを実現できます。精度の高い判断基準を学習したAIで自動解析を使えば、人のように評価がブレることがありません。

例えば、遺伝毒性を計るために、製薬企業だけでなく食品会社、化粧品会社など多くのライフサイエンス企業で、培養細胞に化合物を投与したときに小核が発生するかどうかを見る「小核試験」が行われています。現状は1サンプルあたり約2000個の細胞を肉眼で見て確認していますが、IMACELを使えば自動認識が可能です。目視と自動認識を比較したところ相関係数は0.85。クラウドに実験結果をアップロードすれば、その結果が返ってくる毒性解析サービスを2021年12月に開始しています。

ラットを用いた催奇形性試験にも応用が可能です。催奇形性を調べるために妊娠した雌ラットに試験化合物を投与したときに、胎児にどのような骨格異常が起こるかを調べる必要があります。通常は剖検し骨格標本を作ってから作業しなければなりません。エルピクセルでは小動物用のCT画像を取得できるmicroCTを使うことで、CT撮影によってAIを使って骨格異常を自動判定できるシステムを構築しました。AIとCTによって簡易で精度高く、作業負担も大きく軽減されました。

また、カメラ画像からマウスの姿勢や移動速度など、様々な特徴量のキーポイントをAIで抽出することで、動物個体の行動解析を行うこともできます。

臨床研究、実臨床での応用

画像解析AIを臨床応用することで、患者と医師にとって疾患や副作用の早期発見、症例個々の最適な治療方針の決定などのメリットがあります。製薬企業では臨床試験における成功確率向上、疾患発見による薬剤処方促進、副作用発見による適正使用の補助といったメリットがあります。

医師による画像診断を支援するエルピクセルのEIRLシリーズでは、すでに頭部、胸部などを対象にしたプログラム医療機器7製品を臨床展開しています。エルピクセルはこの成功体験をライフサイエンスの分野にも拡大すべく、同社が持つ開発から臨床までのコンサルティング体制や医療機関とのネットワークを、製薬企業やCROが持つナレッジと組み合わせることで共同開発を推進しています。幅広い連携を通じて、データの利活用が可能なエコシステムを構築することを目指しています。

2台のNVIDIA DGXでAIモデルを作成

エルピクセルでは同社の2つのプラットフォームにおけるAI開発のエンジンとして、世界最先端の AI システムであるNVIDIA DGXを2台活用しています。「AIモデルの作成時は、膨大な計算が必要になるため、DGXを本当にフル稼働で使っています」と袴田氏は語ります。「大量の医療画像や細胞画像の学習には高速演算が役立っていますが、事前にディープラーニングフレームワーク側の最適化がされているので、これらの高速演算をあまり意識しなくても、当然のように活用できるのが便利です。」

また、学習するためのバッチサイズを決定するためには、演算性能だけでなくGPUのメモリも重要と言います。「大きなメモリに対する要望はずいぶん前からエンジニアからありました。総計320GBのGPUメモリを搭載したNVIDIA DGX A100を活用することで、そのあたりは一定程度、解消できているのかなと思います。データサイズはどんどん拡大しており、今後もメモリは大きければ大きいほどよいと考えています。」

中小企業こそAIを活用すべき

AIを活用できるのは大企業だと思われがちですが、エルピクセルは中小企業こそ、AIを導入することで人とリソースを有効活用できるのではないかと考えます。「人的リソースが貴重な中小企業こそ、自動化できるところはAIに任せ、よりクリエイティブな業務や研究に人の頭脳を割くことが重要です。大企業はもちろんですが、ぜひ、中小企業からも受託解析やPoCから気軽にご相談いただければと思います」と加藤氏は述べています。

予算が限られているアカデミアも同様であり、エルピクセルでは大学病院でのウェットな研究を支援する形で受託研究も行なっています。また、薬事承認を取得したプロダクト開発経験のあるエルピクセルはそのノウハウを活かしたコンサルティングも行っています。

「エルピクセルはすでに多岐にわたるニーズに対して安全性研究や薬理研究を行なっていますが、画像解析AIはさらに幅広く応用できる余地があると考えています。画像や、目視に依存するようなところでニーズがあれば、ぜひお問い合わせいただければと思います」

※1 蛍光多重免疫染色画像解析 : 蛍光を発する色素を付けた染色用抗体を用いて、がん細胞や免疫細胞などに発現している複数の分子を病理組織標本上で同時に検出する手法。

※2  小核試験:化学物質など、被験物質を投与した細胞内の小核出現の有無や出現率を調べることによって、物質が染色体異常の原因となる遺伝毒性を持っているかどうかを評価する試験。遺伝毒性試験の1つ。

画像提供:エルピクセル


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