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量子コンピューティングとは

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まだ誕生したばかりの量子コンピューターは、古典的なコンピューターですでに実行されている新世代のシミュレーションに影響を与えつつありますが、このたび NVIDIA cuQuantum SDK で高速化されるようになりました。

スティーブ ジョブズ (Steve Jobs) 氏がポケットに入れて持ち運べるコンピューターを発表する 27 年前に、物理学者のポール ベニオフ (Paul Benioff) 氏は、それよりはるかに強力なシステムで、しかも指ぬきに隠れるほど小さいが、強力なシステム、つまり量子コンピューターを構築することが理論的に可能であることを論文で発表しました。

1980 年に書かれたベニオフ氏の概念は、素粒子物理学を利用しようとしており、この学問にちなんで名付けられました。これについては今でも熱心に研究が続けられており、コンピューティングにおける次の大きな革新、つまり PC をそろばんのような古めかしいものにしてしまうようなシステムを構築すべく努力が重ねられています。

ノーベル賞受賞者であり、幅広い聴講者に機知に富んだ物理学の講義を行ったリチャード ファインマン (Richard Feynman) 氏は、そのようなシステムが奇抜な量子現象を従来のコンピューターよりもいかに効率的にシミュレートできるかについて説明し、この分野の確立に貢献しました。

改めて、量子コンピューティングとは何か

量子コンピューティングは、現在のコンピューターのより単純なトランジスタに代わって、素粒子を支配する物理学を用いて並列計算を実行する高度な手法です。

量子コンピューターでは、従来のコンピューターで使われるオンまたはオフ、1 または 0 のビットの代わりに、オン、オフ、またはその間の任意の値を使用できる計算単位である量子ビットを使用して計算します。中間状態にある量子ビットの機能は「重ね合わせ」と呼ばれ、コンピューティングの方程式に強力な機能を追加し、一部の数学分野において量子コンピューターを優位なものにしています。

量子コンピューターは何をするか

量子ビットを使用することにより、古典的なコンピューターでは仮に完了できたとしても長い長い時間がかかる計算を、量子コンピューターは楽々行える可能性があります。

たとえば、現在のコンピューターは 8 ビットを使用して 0 から 255 の間の任意の数値を表します。量子コンピューターの場合、重ね合わせなどの機能により、8 量子ビットを使用して 0 から 255 の間のあらゆる数値を「同時に」表すことができます。

これは、コンピューティングにおける並列処理のような機能です。すべての可能性が順次ではなく一度に計算されるため、大幅な高速化が実現します。

つまり、古典的なコンピューターは膨大な数を因数分解するために一度に 1 つずつ長大な割り算を実行しますが、量子コンピューターは 1 ステップで答えを得ることができます。驚くべきことです!

よって、量子コンピューターは、暗号化のような、現在では不可能なほど大きな数の因数分解に基づいている分野全体を再形成できる可能性があるのです。

小さなシミュレーションの大きな役割

これはほんの始まりにすぎません。専門家の中には、化学や材料科学など、ナノサイズの量子力学に基づいて構築された世界のシミュレーションを行う上で現在妨げとなっている限界を、量子コンピューターが突破するだろうと確信している人もいます。

量子コンピューターは、エンジニアが現在最小のトランジスタで発見され始めている量子効果の、より精巧なシミュレーションを作成できるようになることで、半導体の寿命を延ばすことさえ可能でしょう。

実際、量子コンピューターは最終的には古典的なコンピューターの代替品ではなく、補完するものである、と専門家たちは述べています。また、GPU が現在のコンピューターを加速するのと同じように、量子コンピューターがアクセラレータとして使用されると予測する人もいます。

量子コンピューティングの仕組み

地元の電気店で処分品として売られている部品を寄せ集めて DIY で PC を作るように、自分だけの量子コンピューターを構築できる、といったことは期待しないでください。

現在稼働しているシステムはごく少数で、通常、絶対零度に近い温度の動作環境を作れるような冷蔵施設を必要とします。これらのシステムの原動力となる脆弱な量子状態を扱うには、コンピューティングの「極地」となる環境が必要となります。

量子コンピューターの構築がいかに難しいかを示す例として、あるプロトタイプでは、2 つのレーザーの間に 1 つの原子を吊るして量子ビットを作り出しています。みなさんもご家庭でお試しください。

量子コンピューティングは、ナノサイズの非常に強力な力を使って「量子もつれ (エンタングルメント)」と呼ばれる状態を作り出します。これは、2 つ以上の量子ビットが単一の量子状態で存在している状態で、この状態はわずか 1 ミリメートル幅の電磁波によって観測されることがあります。

その電磁波にごくわずかのエネルギーでも加えすぎると、もつれや重ね合わせ、あるいはその両方の状態が失われます。その結果、デコヒーレンスと呼ばれるノイズの多い状態が発生します。これは、量子コンピューティングにおける「ブルー スクリーン」です。

量子コンピューターの展望は

現在、Alibaba、Google、Honeywell、IBM、IonQ、Xanadu といった一部の企業が、初期バージョンの量子コンピューターを運用しています。

これらのシステムは数十の量子ビットを提供しますが、量子ビットはノイズが多く、信頼性が低いこともあります。現実世界の問題を処理する信頼性を得るには、システムは数万または数十万の量子ビットを必要とします。

量子コンピューターが本当に役立つ高忠実性を獲得する時代に達するには数十年かかるだろう、と専門家たちは信じています。


量子コンピューターはゆっくりと商用利用に向かっています。
(出典: リーヴェン ヴァンダーシペン (Lieven Vandersypen) 氏による ISSCC 2017 での講演)

量子コンピューティングが従来型のコンピュータではできなかったことを実行できるようになる、いわゆる「覇権を握る」ような時期の予測は、現在業界内で活発に議論されています。

現在の量子回路シミュレーションを加速する

ここで朗報なのが、AI と機械学習の世界では、量子コンピューターが量子ビットで計算するような種類の演算の多くを実行可能なGPU などのアクセラレータに注目しているという点です。

そのため、古典的なコンピューターでも現在、GPU を使って量子シミュレーションをホストする方法がすでに見つかりつつあります。たとえば、NVIDIA は、社内の AI スーパーコンピューターである Selene で最先端の量子シミュレーションを実行しました。

GTC の基調講演において NVIDIA は、GPU 上で実行する量子回路シミュレーションを高速化する cuQuantum SDK を発表しました。初期の研究が示すところによると、cuQuantum が桁違いのスピードアップを実現することが見込まれています。

この SDK では他に依存しないアプローチを採用しており、ユーザーは自分のアプローチに最適なツールを選択できます。たとえば、状態ベクトル法は忠実度の高い結果を得られますが、そのメモリ要件は量子ビット数に比例して指数関数的に増大します。

そのため、現在最大の古典的なスーパーコンピューターであっても、約 50 量子ビットが実用上の制限となっています。それでも、cuQuantum を使用してこの方法を使用する量子回路シミュレーションを高速化したところ、優れた結果が得られました (以下を参照)。


状態ベクトル: 1,000 回路、36 量子ビット、深度 m=10、複素数 64 | CPU: デュアル AMD EPYC 7742 上の Qiskit | GPU: DGX A100 上の Qgate

GTC (登録無料) のセッション E31941 で、ユーリッヒ スーパーコンピューティング センターの研究者たちが、状態ベクトル法を使用した取り組みについて詳しく説明します。

より新しいアプローチであるテンソル ネットワーク シミュレーションは、同様の作業を実行するにあたり、より小さいメモリで、より多くの計算結果を得られます。

この方法を用いて、NVIDIA とカリフォルニア工科大学は、NVIDIA A100 Tensor コア GPU 上で実行される cuQuantum によって、最先端の量子回路シミュレーターを高速化しました。そして、Selene 上で Google Sycamore の回路の全回路シミュレーションから 9.3 分でサンプルを生成しました。これは、1年半前には専門家たちが数百万の CPU コアを使用して数日かかると予想していたタスクです。


テンソル ネットワーク – 53 量子ビット、深度 m=20 | CPU: デュアル AMD EPYC 7742 上の Quimb (推定) | GPU: DGX-A100 上の Quimb

カリフォルニア工科大学のリサーチ サイエンティストであるジョニー グレイ (Johnnie Gray) 氏は、次のように述べています。「Cotengra/Quimb パッケージと、NVIDIA が新しく発表した cuQuantum SDK および Selene スーパーコンピューターを使うことで、記録的な速さで深度 m=20 の Sycamore 量子回路のサンプルを生成しました。10 分未満です。」

また、カリフォルニア工科大学化学教授で、研究を主催した研究室の教授であるガーネット チャン (Garnet Chan) 氏は、次のように述べています。「これは、量子回路シミュレーションの性能のベンチマークを設定するものです。量子回路の動作を検証する能力が向上することにより、量子コンピューティング分野がさらに前進するでしょう。」

パフォーマンスと使いやすさが向上した cuQuantum が、この分野の研究における最先端にあるすべての量子コンピューティング フレームワークおよびシミュレーターの基本要素になることを、NVIDIA は期待しています。

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