現在、全世界の医療機関には約 300 万台の画像診断装置が設置されています。毎年新たに購入されるのはわずか数十万台であるため、既存の装置を一新するのに数十年はかかる計算です。
それら既存の装置の機能に新風を吹き込むのが、NVIDIA の医用画像診断スーパーコンピューター「Project Clara」です。先週シリコン バレーで開催された GPU テクノロジ カンファレンスにて発表された Project Clara は、画期的な進化を遂げた計算処理を活用しています。
40 年以上も前から、医用画像診断装置は病気の早期発見や患者の転帰の改善に不可欠なものでした。この分野におけるイノベーションは、これまで検出器の技術向上によってもたらされてきましたが、近年は、並列コンピューティングによっても革新が進んでいます。
10 年前、研究者たちの間で NVIDIA GPU の有用性が認識されるようになりました。医用画像診断アプリケーションにとって最も効率的なアーキテクチャを実現し、放射線被ばく量の低減、画質の向上、リアルタイムでの画像生成に活用できるという点に期待が集まったのです。最近では、ディープラーニングは主流となり、新たな画像診断アプリケーション研究の半数以上は AI に関するもので占められています。
計算処理の進歩による画像診断の飛躍的な向上
CT 反復再構成や MR 圧縮センシングといった技術により計算処理が飛躍的に進歩したことで、放射線被ばく量は最大 90% 減り、MRI 画像の取得時間も短縮されました。
ディープラーニングと AI によって、高度な画像分析処理や定量化処理にさまざまな可能性が生まれています。V-Net という最新のアルゴリズムでは 3D ボリューム セグメンテーションが用いられており、その技術によって心臓の血液量を自動的に測定することが可能になっています。15 年前であれば、このアルゴリズムを実行するには価格 1,000 万ドル、消費電力 500 kW のコンピューターが必要でしたが、現在は Tesla V100 GPU 数基で済みます。
Clara のビジョン
NVIDIA は、医用画像診断分野における 10 年の実績と、開発パートナーとの協業の成果を通じて、コンピューティングによって医用画像診断を刷新できると確信しています。
Clara は仮想 GPU 環境であるため、多数の計算機器を同時に実行できます。リモートにも対応しており、NVIDIA vGPU の活用によるマルチユーザー アクセスが可能です。また、CT、MR、超音波、X 線、マンモグラフィなど、あらゆる装置で計算処理を実行できるユニバーサルな環境です。さらに、Clara は拡張性に優れており、GPU で Kubernetes を使用して、ニーズに応じてコンピューティングを効率的に拡張できます。
NVIDIA は、数十社のヘルスケア企業、スタートアップ、研究医療機関と協力しています。実際に、AutoMap や V-Net といったパートナー製 AI アプリケーションは、放射線医学に無形の価値をもたらしています。
マサチューセッツ総合病院の Martinos Center が開発した AutoMap は、MRI の画像取得時間を短縮すると共に画質を向上させています。V-Net は、生体組織の構造を自動的に測定し、その働き具合を評価することを可能にしています。ジョンズ ホプキンス大学のエリオット フィッシュマン (Elliot Fishman) 博士が開発したシネマティック レンダリングは、新たな画質レベルを実現し、放射線科医の時間の節約や、患者の転帰の改善に役立っています。
つい先日には、いくつもの画像診断アプリケーションを開発している Subtle Medical が、Inception アワードの医療部門で 25 万ドル以上の賞金を獲得しました。
Subtle Medical の創業者であり、放射線科医としてスタンフォード大学の放射線科の准教授を務めるグレッグ ザハーチャック (Greg Zaharchuk) 博士は、次のように述べています。「新しい技術によって医療は様変わりしています。NVIDIA のバーチャル画像診断スーパーコンピューターのビジョンは、今まさに新たな始まりを迎えようとしています。その先の未来では、AI を活用する医療の新たな形が実現されているでしょう」
最新の医用画像診断アプリケーションには、新しいレベルのコンピューティング、拡張性、アクセス性が求められます。Clara は、医用画像診断を変革するコンピューティング プラットフォームです。
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