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グローバル・インパクト:GPUによってピンポイントの正確さで海面上昇の監視が可能に

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編集後記: 本稿は、2016年のNVIDIAグローバル・インパクト・アワードの最終候補5組のプロフィールを紹介するシリーズの1つです。このアワードでは、社会的な問題、人道的な問題、環境問題に対処するための革新的な研究をNVIDIAの技術を利用して行った研究者に、賞金$150,000を授与します。

気候変化による海面上昇は世界人口の4分の1に直接的な影響を与えるおそれがあるにもかかわらず、海面上昇を正確に測量するにはどうしたらよいのかという問題に、気候科学者は頭を悩ませています。

これまで、海水位の測量は、地上の目標物を基準として水位を測定する方法で行われてきました。問題は、プレート・テクトニクスの働きで、地球の地殻の一部も動いている、という点です。つまり、海水位は変わっていないという測定結果であっても、大陸の動きによってデータが無意味になっている可能性があるのです。

チャルマース工科大学(スウェーデン)のトーマス・ホビガー(Thomas Hobiger)氏は、GPS受信機と並列コンピューティングを活用して、共同研究者とこの問題に取り組んでいます。地上の相対的な基準座標系に対して水位を測定するのではなく、静的なソースからの反射信号を利用します。これをGNSS-R(Global Navigation Satellite System Reflectometry)と呼びます。

ソフトウェア定義の無線GNSS-Rソリューションのデータ・フロー図。受信した直接信号(RHCP)と反射信号(LHCP)が、A/D変換され、1ギガビット・イーサネット接続を介してホストPCに送信される。そのPCで、Tesla K40 GPUが信号処理を行う。
ソフトウェア定義の無線GNSS-Rソリューショ
ンのデータ・フロー図。受信した直接信号(RHCP)
と反射信号(LHCP)が、A/D変換され、1ギガビット
・イーサネット接続を介してホストPCに送信される。
そのPCで、Tesla K40 GPUが信号処理を行う。

彼らの研究は非常に重要です。New York Timesの報道によると、先週、2つの独立した研究チームが、ここ約三千年の中でも現在は最速のペースで海水位が上昇していると発表しました。

この研究により、ホビガー氏と彼のチームは、2016年のNVIDIAグローバル・インパクト・アワードの最終候補5組に選ばれました。毎年、NVIDIAは、社会的な問題、人道的な問題、環境問題に対処するための革新的な研究をNVIDIAの技術を利用して行った研究者に、賞金$150,000を授与しています。

ホビガー氏がこの研究のインスピレーションを得たのは、2009年にNVIDIAが開催した第一回の年次 GPUテクノロジ・カンファレンスででした。これは、開発者が世界中から集まり、GPUコンピューティングについての知見を共有する場です。それ以来、彼は、GPUを使用して積雪量、水位、原子時計に関するデータを処理してきました。

ここ1年半の間、ホビガー氏のチームは、GNSS-Rによる海水位プロジェクトに重点的に取り組んできました。この方法では、海岸線に沿って設置したGPS受信機と、海面反射したGPS信号を使用することで、測定精度が向上しています。そして、NVIDIA GPUが、データ信号を高速処理して水位をリアルタイムで算出します。

ホビガー氏がこの反射測定技法を選んだ理由はセンチメートル単位の精度にありますが、このソリューションを実現するには、より強力なバックエンド処理能力が必要でした。NVIDIA GPUと CUDAプログラミング・モデルによって、このGNSS-Rソリューションは、安価で効率的なソリューションになりました。

昨年3月に行われた60時間のテスト実行の結果。ソフトウェア受信機からの海水位(赤)と、受信機近くの検潮器の測定値(青)をプロットしています。2つの結果を比較すると、RMSは9mm未満、相関は.995を超えています。
昨年3月に行われた60時間のテスト実行の結果。ソフトウェア受信機からの海水位(赤)と、受信機近くの検潮器の測定値(青)をプロットしています。2つの結果を比較すると、RMSは9mm未満、相関は.995を超えています。

ホビガー氏は次のように述べています。「ハードウェアのソリューションだと、実装が難しく、時間がかかるうえに、柔軟性にまったく欠けていますが、ソフトウェアで信号処理を行えば、可能性は無限に広がると考えていました。そんなときGPU、特にCUDAについて知ったのです。」

チームは、CUDAのcuFFTライブラリを使用してデータを処理しました。その結果、他の研究機関で使用されている同様のハードウェア方式より、はるかに安価なソリューションになることが分かりました。

反射測定システムからは、最大800Mbit/秒でデータが絶え間なく送られてきます。NVIDIA TeslaとGeForce GPUの並列処理能力によって、ホビガー氏のチームはこのような大量の情報に対応することが可能になりました。

「GPUを使用していなかったら、リアルタイムですべての信号を処理することはできなかったでしょう。」と、ホビガー氏は述べています。

彼のチームが使用しているソフトウェアはオープン・ソースであり、デスクトップで使用でき、他の地域にある海水位計測器と連携させることができます。

ホビガー氏は次のように語っています。「私たちの地球を理解し、どのように変わっていくのかを知ることは大切です。地球に住む一員として、皆が地球科学への意識を高める必要があると思います。」

2016年のグローバル・インパクト・アワードの優勝者の発表は、シリコンバレーで447日に開催される GPUテクノロジ・カンファレンスで行われます。


Tonie Hansen

Tonie oversees corporate responsibility, a function she helped to build since starting at NVIDIA in 2006. As a strategist and communicator, she works across the entire company to streamline social and environmental compliance efforts, as well as drive best practices and leadership initiatives that strengthen NVIDIA’s sustainability, brand reputation, and diversity efforts. She publishes the company’s annual corporate responsibility report and also leads NVIDIA’s charitable foundation, which aims to accelerate solutions to the world’s most pressing issues in health and education. Tonie represents NVIDIA on the board of the Electronic Industry Citizenship Coalition, a consortium through which NVIDIA drives its responsible supply chain initiatives. She earned her MBA in 2000 from Babson College in Massachusetts. In 2014 she was recognized by the Silicon Valley Business Journal as a Women of Influence, and in 2012 she received YWCA Silicon Valley’s Tribute to Women award.

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