自動運転車のためのテスト規格づくり

投稿者: Zvi Greenstein

ドイツの安全のエキスパートたちは今、NVIDIA とともに、未来の自律走行車の実用性を確認するための規格づくりを検討しています。

TÜV SÜD は、政府機関とともに自動車法規の草案を作成している安全機関で、AVL 社と連携して、自動車メーカーが開発した自動運転システムをテストするための最初の提案をすでに行っており、それらテストを NVIDIA DRIVE Constellation シミュレーション プラットフォームで実施できるようにしています。

AVL は、自動車開発のさまざまなステージで現実世界と仮想世界を組み合わせています。AVLでは、全て仮想的に行なうテストや Hardware-in-the-loop テストだけではなく、実際の車両を用いたテストも加えており、AVL DRIVINGCUBE™ と呼ばれる自律走行用テストベンチ上で実車両を走らせています。

TÜV SÜD が開発したシミュレーションを用いた評価尺度を通じて、実際に公道で試験するよりも前に、自動運転システムが一般的な道路状況シナリオでどのように振る舞うのか評価されます。

交通事故は毎日発生していますが、個々のドライバーがそれを目撃することはあまりありません。連邦政府のデータによれば、米国では、走行距離 49 万 2,000 マイルごとに 1 件の事故が発生しています。しかし、自律走行車は、実際に道路を走るまでに、事故を防ぐ準備がなされていなければなりません。

自動車メーカーと規制当局は、自動運転テクノロジが意図した通りに振る舞うことを確認し、その実用性を検証する方法を確立しようとしています。きわめて精度の高いシミュレーションを使えば、政府は、法規を仮想世界で適用しテストすることが出来ます。それら法規が、比較的まれではあるものの重大な結果を招く交通災害にも対応できるようになり、自律走行車の実用化時の包括的な安全指針も制定できるようになるでしょう。

ストレスなしの運転試験

DRIVE Constellation は、Hardware-in-the-Loop シミュレーションを用いたソリューションで、これにより、自動車メーカーは自律走行テクノロジを比類なき精度でテストすることができるようになります。このプラットフォームでは、2 つのサーバーが使用されます。サーバーの 1 つには、DRIVE Sim ソフトウェアが搭載され、写真のようにリアルな仮想運転環境から現実世界と同様のセンサーデータを生成します。もう 1 つのサーバーには、車両内で使用に適したハードウェアとソフトウェアで構成された、DRIVE AGX Pegasus コンピューター プラットフォームが搭載されます。

実際と同じのソフトウェアとハードウェアの構成を使用することでビットレベルの精度を実現したシミュレーションが可能になります。規制当局は、車両が実際に走行する前に、現実世界における車両のダイナミクスと交通シナリオを再現できるようになります。急停止車両、荒天での視界不良、道路上の予想外の危険物などに対する自律運転車両の対応が、最高の忠実度を持って DRIVE Constellation 上で再現することができるのです。

TÜV SÜD の最初のテスト シナリオには、自動運転システムが一般的な高速道路の状況にどのように対応するか、あらかじめ定義された性能評価尺度も含まれています。たとえば、他の車両が割り込んできたときに十分に減速し、その後、交通が再び流れたとき適切な加速を行うことが、シミュレーションでテストされるでしょう。

運転免許試験と同じように、このようなシミュレーションでは、自動車が衝突せずに走行できるかどうかだけではなく、日々起こる状況にどのように安全かつ快適に対処できるかどうかも評価されます。そのために、TÜV SÜD では、Time-To-Collision (衝突余裕時間: ブレーキが踏まれない場合に、テスト車両が前方の車両に衝突するまでの秒数) や、車両が安全な車間距離を適切に維持できるかどうか、といったパフォーマンス インジケーターを使用しています。これらの評価尺度は、テストケースのあらゆるポイントでチェックされます。

未来に向けたテスト

シミュレーションと路上テストを組み合わせることで、規制当局は、堅牢なテスト プロセスを開発することができます。DRIVE Sim を用いた最初のテスト シナリオをもとにして、TÜV SÜD では、仮想世界での評価を市街地にまで拡張しようとしています。加速減速といった車両の縦方向のテストだけではなく、混雑した 十字路での左折/右折、急カーブ、車線変更、その他車両の横方向の動きに関するのテストも実施する予定にしています。

他の安全機関のあらゆるテストと同じように、上記のようなケースは、自動車メーカーと世界中の規制機関を横断して広く導入されることを目的として開発されました。さらに、NVIDIA DRIVE Constellation の活用により、提案されたこれらの標準をさらに発展させ、AI ドライバーが真の意味での安全を実現するために対処できなければならない、より多くのまれで困難なシナリオを網羅することが可能になります。

このコラボレーションは、自律走行車の検証プロセスの一部として仮想テスト標準の開発を目指す、NVIDIA とTÜV SÜD、AVL の活動の始まりに過ぎません。業界が自動運転という未来に向かうなか、こうした協力関係により、自律走行車がもたらす安全という利点が確実に実現されるようになるでしょう。