「サイバーセキュリティは今、転換点を迎えています」。ラスベガスで開催された CrowdStrike のイベント「Fal.Con 2026」にて、満員の聴衆を前に NVIDIA の創業者/CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) はそう語りました。攻撃が自動化された今、防御もまた自動化されなければなりません。
フアンは、CrowdStrike の創業者/CEO である George Kurtz 氏と共に登壇し、同社の Cyber Superintelligence Lab が開発したエージェント型サイバーセキュリティ システム CrowdStrike SafeMind を発表しました。
フアンは 1 万人のセキュリティ専門家を前に語りました。「これはサイバーセキュリティの新時代の幕開けです。一方で、攻撃者はかつてないほど強力な武器を手にすることになるでしょう。しかし他方で、皆さん自身もまた、かつてないほど強力な武器を手にすることになるのです」
SafeMind は、CrowdStrike が独自に構築したフロンティアを超えた能力を持つモデルやカスタマイズされたエージェント型ハーネスと、 NVIDIA Nemotron を基盤とする防御モデルを組み合わせたものです。これらは、攻撃側と防御側が互いに挑み合い、継続的に改善し合う共進化のループの中で機能します。
また、CrowdStrike は、Project QuiltWorks をエージェント型ワークロード自動化によって実用化する CrowdStrike Falcon IQ を発表し、AI セキュリティ ソリューション CrowdStrike Guardian を拡張しました。
「互いに協力し合い、世界を安全に保とうとするサイバーセキュリティ専門家の巨大なコミュニティを擁していることこそが、私たちの非対称的な優位性なのです」と、フアンは聴衆に向けて語りました。
CrowdStrike の年次カンファレンスには、金融、ヘルスケア、公共部門、重要インフラといった各分野のセキュリティ リーダーたちが集まりました。
「私が目の当たりにした真の格差は、攻撃者はフロンティア AI を手にしているのに、防御者はそうではなかったという点にありました」と、Kurtz 氏は参加者に語りかけます。「しかし、その状況は今、変わろうとしているのです」
SafeMind
CrowdStrike は、NVIDIA Nemotron のオープンモデルを基盤に、同社が蓄積してきたサイバーセキュリティの知見と脅威データを活用してポストトレーニングを行い、SafeMind の防御モデルを構築しました。この SafeMind モデルは、自律的に動作するエージェント型 スタックとして機能するよう最適化された、独自のサイバーセキュリティ ハーネスと組み合わされています。
その成果は、CrowdStrike の自律型サイバーセキュリティ システム「SafeMind」として、CrowdStrike Falcon プラットフォームにネイティブに組み込まれて提供されます。SafeMind は、攻撃側と防御側の AI を継続的な共進化ループへと統合し、双方が互いに適応し合いながら強化される仕組みを実現します。このプロセスにより、攻撃が失敗に終わるまで、顧客環境のセキュリティは絶えず強固なものへと高められていきます。
「CrowdStrike が 15 年にわたり蓄積してきたセキュリティ データを学習に活用すれば、フロンティア モデルを、サイバーセキュリティに極めて長けたスーパー AGI (汎用人工知能) へと進化させることが可能です」と、フアンは Kurtz 氏に語りました。
「NVIDIA との協業により、私たちはサイバーセキュリティ分野初となる、防御者向けに専用設計されたフロンティア モデルとエージェント ハーネスを含む、完全なエージェント型システムを構築しました」と Kurtz 氏は述べます。「これは、他社の AI 機能にコパイロットとして組み込まれたものでも、セキュリティ関連の体裁を整えただけのチャットボットでもありません。CrowdStrike が NVIDIA と提携し、自社のデータを活用して構築および学習させた、フロンティア クラスのモデルなのです」
防御エージェント ハーネスのオーケストレーションは NVIDIA Nemotron 3 Ultra が担い、SafeMind のルール生成サブ エージェントは、ファインチューニングされた Nemotron 3 Super によって駆動されます。
CrowdStrike のデータを用いて Nemotron にポストトレーニングを行った結果、同社の内部評価において、Nemotron 3 Super をベースとする Blue Solano モデルは、主要なフロンティア モデルを上回る精度を達成しつつ、コストを 99% 削減できることが示されました。
SafeMind は、統合システムとして機能する一方で、各モデルを単独で使用し、防御者が攻撃者の一歩先を行くための能力を強化することも可能です。また、セキュリティの専門家は独自のモデルを CrowdStrike のカスタム ハーネスと組み合わせることができ、顧客は自社の環境に最適なモデルや機能を柔軟に選択、活用できます。
「ハーネスは、いわば大規模言語モデルの外骨格のようなものです」とフアンは話します。「大規模言語モデルが脳だとすれば、外骨格はそのモデルをエージェントへと変える役割を果たします。しかも、この外骨格の形状や機能は、必ずしもすべての領域で同じである必要はありません」
AI が防御の担い手となるとき
CrowdStrike のデータによると、過去 1 年間で AI を活用した攻撃は 89% 増加し、サイバー犯罪における攻撃者の活動開始から侵害に至るまでの最速時間 (ブレイクアウトタイム) は 27 秒にまで短縮されました。人間による対応スピードでは、もはや防御とは言えません。それは単なる「記録作成」に過ぎないのです。
「世の中には、特定の領域で極めて高い能力を発揮する AI を構築するために、ファインチューニングやポストトレーニングを行う必要があるユース ケースは世界中に数多く存在します」とフアンは述べます。「Nemotron はまさにそのために開発されました。完全無料で、驚異的な高速性を備えています。これを使えば、どのような状況に直面しても、圧倒的な優位性を確保できるのです」
CrowdStrike のセキュリティ チームは、オープンな Nemotron を基盤とし、独自の脅威データを外部プロバイダーに送信することなく追加学習を行うことで、自社の環境に合わせて AI をカスタマイズしました。
クローズドなフロンティア モデルではこのようなことは不可能ですが、セキュリティの分野においては、防御の仕組みを詳細に検証できるかどうかが極めて重要となります。
レッド チーム対ブルー チーム
NVIDIA は、CrowdStrike SafeMind モデルおよびその運用システムについて、NVIDIA のネットワークを模した高精度なサイバーエージェント環境でテストを実施したことを発表しました。
このテストでは、SafeMind を攻撃と防御のループで実行し、敵対的共進化を検証します。攻撃側のレッド チーム エージェントが脆弱性を発見し、防御側のブルー チーム エージェントがそれを無効化することで、発見された脆弱性が攻撃を阻止するための実用的な検出情報となります。
レッド チーム エージェントのハーネスは、偵察、攻撃、侵害のサブ エージェントを実行し、サイバーエージェント環境内で攻撃パスを実行します。ブルー チーム エージェントのハーネスは、Falcon センサーを介して監視を行い、検出候補を生成、検証し、上位エージェントに昇格させます。
CrowdStrike は NVIDIA と共同でテスト環境を構築しました。これは NVIDIA 独自のアクセラレーテッド コンピューティング インフラのデジタル ツインであり、NVIDIA の実際の脅威環境に対して検証されています。
「SafeMind の基本フレームワークは、環境のデジタル ツイン上で動作する敵対モデルと、防御モデルが継続的ないたちごっこを繰り広げ、最終的に自らを安全にする方法を学習するというものです。この基本フレームワークは、ロボティクス、エッジ コンピューティング、エンタープライズ コンピューティングなど、ほぼすべての分野に適用できます」とフアンは述べています。
CrowdStrike は Falcon IQ も発表しました。NVIDIA Nemotron モデルは、CrowdStrike のノーコード エージェント開発プラットフォームである Charlotte AI AgentWorks の中核を成すエージェント エンジンの駆動を支えており、Falcon IQ はこのプラットフォーム上で動作しています。
Falcon IQ は、50 以上のエージェントを統合されたエージェント型ワークフォースとして連携させ、評価、優先順位付け、修復といった最も時間のかかるワークフローを自動化します。
パートナーは Falcon IQ を活用し、顧客向けにカスタマイズされた調査結果や推奨事項、経営層向けのレポートなどを提供できます。また、Charlotte AI AgentWorks により、すべての Falcon ユーザーが独自のセキュリティ エージェント型ワークフォースを構築することが可能になります。
フルスタック
CrowdStrike では、数千もの顧客組織から日々数兆件ものセキュリティ イベントが生成されています。
NVIDIA のフルスタック アクセラレーテッド コンピューティング プラットフォームを活用することで、チップからモデル、そしてそのモデルが発見した脅威に対処する仕組み (ハーネス) に至るまで、一貫した連携が可能になります。Kurtz 氏にとって、まさにそこが重要な点なのです。
「CrowdStrike という社名にあるCrowd (群衆、集合知) とは、防御者が攻撃者を打ち負かすための独自の優位性をもたらす『非対称性』のことなのです」と、Kurtz 氏は付け加えました。
