NVIDIA Inception のプレミア メンバーであるスタートアップが、 AI プラットフォームを使って発見された新薬候補で第 2 相臨床試験に突入
生成 AI は比較的新しい言葉ですが、創薬企業の Insilico Medicine は、新しい治療法を開発するために何年も前から AI を活用してきました。
同社の AI プラットフォームを使って発見された新薬候補は現在、特発性肺線維症（肺機能の進行性低下を引き起こす比較的まれな呼吸器疾患）の治療薬として第2相臨床試験に入っています。
Insilico は、前臨床創薬プロセスの各ステップで生成 AI を活用しました。化合物が標的とする分子の特定、新薬候補の生成、そしてこれらの候補が標的とどの程度結合するかを測定し、さらには臨床試験の結果を予測します。
従来の方法では、4億ドル以上のコストと6年の歳月が必要だったと考えられます。しかし、Insilico は生成 AI を用いることで、 10 分の 1 のコストと 3 分の 1 の期間でこれらを達成し、プロジェクト開始からわずか 2 年半で臨床試験の第一段階に到達しました。
Insilico Medicine の CEO、Alex Zhavoronko 氏は、「フェーズ 2 に進むこの最初の新薬候補は、ディープ ラーニングで生物学と化学を橋渡しする我々のエンドツーエンドのアプローチの真のハイライトです。これは我々だけでなく、AI による創薬加速の分野における全ての人にとって重要なマイルストーンです。」と述べました。
Insilico は最先端のスタートアップ企業に技術トレーニング、市場参入支援、 そして AI プラットフォームのガイダンスなどを提供する無料プログラムである NVIDIA Inception のプレミア メンバーです。同社は、生成 AI の創薬エンジン、Chemistry42 で NVIDIA Tensor コア GPU を使用し、新規分子構造を生成しています。 2015 年には、 NVIDIA DGX システムをを最初に採用した企業の 1 つです。
AI が実現するエンドツーエンドの前臨床創薬
Insilico の Pharma.AI プラットフォームには、様々なタスクのために数百万のデータ サンプルでトレーニングされた複数の AI モデルが含まれています。AI ツールの 1 つである PandaOmics は、COVID-19 を引き起こすウイルス上の悪名高いスパイク タンパク質のように、病気の効果に重要な役割を果たすターゲットを迅速に特定し、優先順位をつけます。
Chemistry42 エンジンは、 PandaOmics を使用して特定されたタンパク質を標的とする、新たな潜在的な薬剤化合物を数日以内に設計することができます。この生成化学ツールは、ディープ ラーニングを使って、ゼロから薬物のような分子構造を考案します。
Insilico の AI プラットフォーム責任者であるPetrina Kamya 氏は、「通常、創薬分野の AI 企業は、生物学か化学のどちらかに焦点を当てていますが Insilico は最初から、同じディープ ラーニングのアプローチを両分野に適用しており、創薬ターゲットの発見と低分子の化学構造生成の両方に AI を活用しています。」と述べています。
長年にわたり、 Insilico のチームは、生成的敵対ネットワークやTransformer モデルなど、さまざまな種類のディープ ニューラル ネットワークを創薬に採用してきました。彼らは現在、 NVIDIA BioNeMo を使用して、生成 AI による初期の創薬プロセスを加速させています。
創薬標的の発見という至難の業に AI で挑む
肺線維症治療薬の候補を開発するため、Insilico は Pharma.AI を使用して約 80 の分子を設計、合成し、前臨床段階の新薬候補において前例のない成功率を達成しました。ターゲットの特定から有望な新薬候補を臨床試験に推薦するまでのプロセスにかかった期間は、 わずか18 ヶ月弱でした。
第 2 相臨床試験では、 Insilico の肺線維症治療薬が米国と中国で数百人の肺線維症患者を対象にテストされます。このプロセスには数ヶ月を要しますが、それと並行して、同社は多くの抗がん剤を含む他の疾患をターゲットとする 30 以上のプログラムをパイプラインに抱えています。
「私たちが最初に結果を発表したとき、人々は生成 AI システムがこのレベルの多様性、新規性、そして精度を達成できるとは信じていませんでした。有望な新薬候補のパイプラインが揃った今、人々はこれが実際に機能することを実感しつつあります」。
AIによる新薬候補スクリーニングを加速する Insilico Medicine の Chemistry42 プラットフォームの詳細は、NVIDIA GTC で行われたセッションをご覧ください。