「In the NVIDIA Studio」 – 3D アーティストたちがヨーロッパの象徴的な建造物を再考し、リマスターします

3 人のアーティストが壮大な構造物を披露し、NVIDIA Studio を活用したクリエイティブワークフローをご紹介

本ブログは、注目のアーティストを称え、クリエイティブ活動のヒントやコツを説明し、NVIDIA Studioテクノロジがクリエイティブワークフローを加速する様子を毎週紹介する「In the NVIDIA Studio」シリーズの最新号です。

今週の「In the NVIDIA Studio」には、驚愕の才能を持つ 3 人のアーティストが登場します。この記事で紹介するこれらの才能あふれる 3D アーティストは、それぞれ個性的なセンスを持ち寄ってヨーロッパのクラシックな建造物を再考し、リマスターしています。

ロバートラザール (Robert Lazăr) 氏、ダヴィドヘルダ (Dawid Herda) 氏、ダリボルスィー (Dalibor Cee) 氏は、それぞれ独自のクリエイティブな旅をしています。その旅はインスピレーションの源から出発し、クリエイティブワークフローに取り入れるトリックや、新進気鋭のアーティストと共有する洞察を得る旅です。

NVIDIA Studio のハードウェアとソフトウェアが、アーティストたちのクリエイティブワークフローを支えています。

テクニックとスタイルは異なるかもしれませんが、アーティストたちは NVIDIA Studio を利用したワークフローを共有しています。クリエイティブアプリでの GPU アクセラレーションにより、彼らは芸術性を追求できる自由を得られました。AI を活用した機能が NVIDIA RTX GPU で高速化され、反復的で手のかかる作業を減らすことができ、プロジェクト自体に手をかける貴重な時間を取り戻し、プロジェクトの完成にこぎ着けることができたのです。

ルーマニアのレンダリング

ラザール氏 (通称：Eurosadboy) は独学で3D アーティストとなり、17 年の経験があります。また、ミュージシャンとしての評価も高く、作品を作るごとに新しい冒険に乗り出しています。

ラザール氏は故郷のブカレストを探索中に、ノスタルジアとフューチャリズムが見事に融合した『Union of Romanian Architects』の建物に感銘を受けました。SF への情熱に突き動かされた彼は、過去、現在、未来の要素を取り入れたデジタルアートで、このアイコニックな建物をさらに美しく再現する可能性を見出したのです。

ラザール氏はまず現場で建物を調査して全体的なサイズを見積もり、次にムードボードを作成して、好みのアーティストからインスピレーションを得ました。

Cinema 4D にラザールのスペースリフト構造を表現した初期のイテレーション。

ラザール氏はビジョンが固まると、Cinema 4D ソフトウェアを起動してモデルを構築し、未来的な作品に命を吹き込みます。NVIDIA RTX GPU で高速化されたビューポートによりスムーズなインタラクティビティが可能となり、モデリング中にこのような複雑な 3D 形状が実現します。

次に、無料の JSplacement Classicソフトウェアで金属、石、ガラスのテクスチャを生成し、Cinema 4D にインポートしてモデルに適用しました。さらに、ディスクの回転やアームの展開などのアニメーション要素を追加して、「スペースエレベーター」が出来上がりました。

「私のスタイルがハイパーリアリズムに向かっていること、すべてのシーンでレイトレーシングが必要であることを考えると、選択すべき GPU は RTX であることは明らかでした」とラザール氏は語ります。

出来上がったシーンにオリジナルの映像と同じようなライティングを施すために、ラザール氏は Otoy の Octane で GPU アクセラレーテッドレイトレーシングを使用してアンビエントオクルージョン効果を作り出し、瞬時にフォトリアリスティックなライティングを実現しました。

ラザール氏の GeForce RTX 3080 Laptop GPU で高速化した Adobe After Effects での最終合成。

この段階で、ラザール氏はシーンを Adobe After Effects ソフトウェアにインポートし、高解像度のビデオ映像の上にデジタルシーンを追加することで、非常にリアルなビジュアルを作り上げました。「映像は 4K RAW 形式だったので、NVIDIA RTX GPU の性能がなければ、リアルタイムにプレビューすることはできず、技術的な部分に割く時間が多くなり、クリエイティビティに費やす時間をここまで確保することはできなかったでしょう」と同氏は語りました。

色を一致させることが重要であると同氏は付け加えます。そして、Brightness & Contrast (明るさ & コントラスト)、Change Color (色調整)、Exposure (露光) など、GPU で高速化された After Effects の複数の機能のおかげで、この作品を見事に完成させたのです。

GeForce 3080 Ti GPU と ASUS ProArt NVIDIA Studio ノート PC を使用して、ラザール氏はこの 3D アート作品を迅速かつ効率的に制作しました。

ポーランドの誇り

Graffit として有名な広く知られるダヴィドヘルダ (Dawid Herda) 氏は、アーティストとして 10 年以上活動しています。彼に最も大きなインスピレーションを与えているのが、母国ポーランドでヒッチハイクした経験です。

グダニスクを訪れたヘルダ氏は、600 年の歴史を持つこの都市の海上クレーンの建築に、芸術的な変容を遂げるというアイデアがひらめきました。彼は、古いレンガ造りの建物に隣接する新しいガラス張りのビルからヒントを得て、クレーンを金属とガラスでできた未来的な塔として可視化しました。

ヘルダ氏はワークフローに、RTX GPU の所有者は無料で利用できる 3D デザインコラボレーションおよびワールドシミュレーション用のプラットフォームである NVIDIA Omniverse を利用しています。オープンソースで拡張可能な Universal Scene Description ファイルフォーマットにより、複数の 3D アプリ間でインポートとエクスポートを繰り返すことなく、一度に複数の 3D アプリで自由に作業できるようになりました。また、仲間たちには高度なハードウェアは不必要で、同氏は作品を仲間のアーティストとリアルタイムで共有することができました。

「これらすべての機能のおかげで、複雑なデザインをする作業が大幅に効率化され、時間を大幅に節約でき、クリエイティビティに集中できるようになりました」とヘルダ氏は語りました。

Blender での 3D モーショントラッキング。

ヘルダ氏は Blender 用の Omniverse Connector にアクセスして、合成ソフトウェア内で実写カメラの動きと視点をシミュレートする機能である 3D モーショントラッキングを実現しました。ドローンで撮影したクレーンの 4K ProRes の映像から、ヘルダ氏は気に入った場面を選択してインポートしました。彼はカメラの動きを追跡し、ショットからの特定のポイントを用いてシーン内の視点をマッピングしました。

Blender で AI デノイズ機能オフとオンの比較。

次にヘルダ氏は、ゼロから作成、モデリングされた未来的なビルのバリエーションを追加しました。ビューポートの AI デノイズ機能と RTX GPU で高速化されたレイトレーシングにより、同氏は即座にフィードバックを得て、鮮明で美しいディテールを作り出すことができました。

同氏は、シンプルなブロックを使用してクレーンの基本的な 3D モデルを制作し、各要素をモデリングとディテーリングで変形しました。同氏はモデルを操作しながらテクスチャをリアルタイムで正確に入れ替えることで、繰り返しモデルがレンダリングされるのを待つことなく未来的な外観を作り上げました。

建物ひとつひとつの形状をアニメーション化した後、ヘルダ氏は RTX で高速化された OptiX レイトレーシングを使用して、フレームの最終レンダリングをすばやくエクスポートしました。次に、彼はプロジェクトを After Effects にインポートし、合成段階で GPU によって高速化された機能を使用してプロジェクトを完成させました。

「アプリ間を行き来しなければならないことがよくありますが、NVIDIA Studio のおかげで、すべてがさらに速くスムーズになります」とヘルダ氏は語ります。

ヘルダ氏のクリエイティブ作業では、GeForce RTX 3090 GPU 搭載の家庭用 PC と、GeForce RTX 3080 Laptop GPU 搭載の ASUS ZenBook Pro Duo NVIDIA Studio ノート PC が使われており、この構成で、フォトリアリスティックなコンテンツをいつでもどこでも制作することができました。

チェコの芸術技能

ダリボルスィー氏 (別名：Dalibor) は、子供時代に 3D への憧れを抱き、この職業に就いてから 20 年になります。彼は 3D 建築モデルの仕事を始めてからプラハに戻り、流体シミュレーション、煙、爆発といった映画の特殊効果を専門にして活躍しています。

スィー氏はまたプラハの旧市街広場にある観光名所、プラハの天文時計 (プラハのオルロイ) など、古い建造物に新しい光と感覚を施して、プロジェクションマッピングを取り入れています。

天文時計の円形の要素に魅了されたスィー氏は、レンズ効果を作り出し、光沢のある金色の要素とクリスタルの形を用いて、チェコの SF にインスパイアされた形で天文時計の円形を再考しました。

スィー氏は、文字盤の複数のレイヤーにさまざまなテクスチャを適用します。

スィー氏はまず Blender を使ってモーショントラッキングに着手し、メインのアニメーションを構成する 3D ビルディングブロックに自分のビデオ映像を合わせました。次に、同氏は JSplacement ツールを使用して生成したテクスチャを追加しました。また、色、マテリアル、マスクを試して、各要素の光沢や粗さ、発光、スペキュラを変更しました。

次に、モデルをカーブにリンクして、光学ズームレンズの動きのように、前進、後退、および回転の動きをアニメーション化し、奥行きのあるアニメーションを作り出しました。スィー氏は、ビューポートで RTX で高速化された Blender Cycles の OptiX レイトレーシングを使用し、この作業を劇的な速さで成し遂げました。

「私は NVIDIA CUDA と PhysX が必要なアプリを使用していますが、3D で NVIDIA RTX GPU を使用すると、概ね大抵のソフトウェアで何かしらのメリットを享受できます」とスィー氏は語ります。

この種の作業は非常に時間がかかり大量のメモリを消費するとスィー氏は語りますが、同氏は GeForce RTX 3090 Ti GPU を 2 枚構成にしており、レンダリングに何時間も費やすことなく、大規模なプロジェクトを完了できます。RTX で高速化された OptiX レイトレーシングと AI デノイズ機能を搭載した Blender の Cycles エンジンにより、スィー氏はプロジェクト全体をわずか 20 分でレンダリングできました。同氏のテストによると、CPU のみの場合よりも 20 倍近く高速化されたとのことです。

こうした時間短縮により、スィー氏は作品の何百もの要素の作成やアニメーション化に集中することができました。また、色と効果を組み合わせて、思い描いた通りにモデルに命を吹き込みました。

NVIDIA Studio システムは、次世代の 3D コンテンツクリエーターにとって不可欠なものとなっており、これまでの境界を押し広げ、心を動かし、思考力を刺激する、感情を揺さぶるアートを生み出しています。