NVIDIA Jetson 搭載の水中ドローン、海淵の神秘を解き明かす

投稿者: Pierre-Antoine Beaudoin

空中ドローンのおかげで、目もくらむような高さや人の行けない場所から美しい映像を撮影することは当たり前になりつつあります。

しかし、水中で活躍する人たちにとって、空中ドローンに相当する製品はありませんでした。

フランスのマルセイユを拠点とするスタートアップ企業で、NVIDIA Inception Program のメンバーである Notilo Plus 社は、世界初の自律型水中ドローン「iBubble」でこのビジネス チャンスをつかもうとしています。

自律動作マシンの新たな波

従来、水中ドローンは高価なうえに操縦が手動で、しかもごく限られたユーザー層を対象にしていました。7.5W の NVIDIA Jetson TX2 スーパーコンピューター モジュールを心臓部に搭載した iBubble は、ダイビング愛好家から海洋学者、水中保守担当者、ボート所有者、さらには国防機関まで、あらゆる人のために役立ちます。

Notilo Plus 社のチームを構成する 15 人のスタッフは、水中での冒険を撮影することが好きだという点で共通しており、そこでの撮影の難しさを全員がよく知っています。

彼らは、ダイバーがレンズを覗いている時間を減らし、水中探索にもっと多くの時間を費やせるように iBubble を設計しました。膨大な量のデータに基づくトレーニングと、自身の処理能力との組み合わせのおかげで、この水中ドローンは自らの意思を決定し、人間がリモート コントロールで行う場合よりも的確にダイバーの進路を追跡できます。

ダイバーは、探索中に周囲の状況を撮影するか、自分自身の姿をさまざまな角度から撮影するかを選択できます。さらに、リモート デバイスを使って iBubble と通信して距離を近づけ、撮影のフォーカスを変えることも可能です。

NVIDIA Jetson を搭載

コネクテッド デバイスの興隆に寄与している Wi-Fi、GPS、Bluetooth などの技術は、そのほとんどが水中では機能しません。そこで、多くの企業は高価な音響技術でその点を補おうとしてきました。

それに対し、iBubble はコスト効果の高いセンサーを強力な機械学習アルゴリズムと組み合わせて利用します。そして、音響データとコンピューター ビジョンの融合により、最も厳しい環境にも対応できる高速で信頼性の高い追跡システムを構築しています。

それを可能にしたのが Jetson TX2 です。SqueezeNet などの機械学習技術の進歩により、組み込み AI コンピューターは畳み込みニューラル ネットワークによる検知をリアルタイムで実行できます。さらに、Long Short-Term Memory (LSTM) ネットワークを使用して音響信号を予測し、信号処理の遅延を大幅に減らします。

高度なマルチメディア処理能力を持つ Jetson TX2 は、HD ストリーミングも実現します。強力な Jetson モジュールは、視覚追跡を実行しながら従来の反射音波の信号処理も行います。従来の信号処理は、障害物 (礁など) の検知/回避だけでなく、船舶の要修理箇所の発見/検査を可能にするうえで極めて重要です。

Notilo Plus 社 CEO のニコラス ガンビーニ (Nicolas Gambini) 氏は、次のように述べています。「エッジ ソリューションを開発するとなると NVIDIA 以外に選択肢はありません。内蔵リソースのおかげで開発が始めやすいことに加え、処理能力面での利点が比較にならないほど優れているからです」

海運業への朗報

iBubble は、趣味でダイビングをする人に向けたデバイスであるにとどまらず、海運業にも恩恵をもたらす可能性があります。

船体の定期検査が必要な大型貨物船の場合、ワイヤーで接続された従来のドローンは選択肢になり得ません。しかし、iBubble なら船体を隅から隅まで探索しながら高画質映像を撮影できます。

異常が疑われる箇所が見つかった場合は、オプションのワイヤーを接続してライブ映像を陸上に送ることができ、陸上の担当者が船体の状態を素早く効率的に判断するのに役立ちます。

使用する検知/分類システムのトレーニングは、Notilo Plus 社のクラウド プラットフォーム上で利用可能なデータによって行っています。iBubble のユーザー数が増えるにつれて、より多くの水中データが集まるでしょう。将来的には、専用の水中 AI データセットを構築し、それに特化したトレーニングをディープ ニューラルネットワークに施すことで、iBubble の精度のさらなる向上を図る計画です。