NVIDIA では AI のエコシステムを拡大させるための取組みの一環として、ディープラーニングに強みを持つ AI スタートアップ企業を支援する Inception Program を展開しており、現在世界で約 1,900 社、国内で 70 社以上がパートナーとなっています。日本のパートナーの中から選抜された 19 社が、東京 お台場で開催された「GTC Japan」の初日に集結し、約 400 名の聴衆に向けて自社や自社の扱うソリューションについてを発表する「Inception AI スタートアップ サミット」を開催しました。
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大盛況となった Inception AI スタートアップ サミット
本ブログでは、登壇した企業の発表内容をいくつかをご紹介します。
企業のディープラーニング導入をフル サポートする ABEJA
ABEJA は日本初のディープラーニング専業企業として知られ、アジア地域で初めて NVIDIA から出資を受けた企業でもあります。代表取締役社長 CEO 兼 CTO 岡田 陽介 氏が同社の強みとしてアピールしたのは、「タレント(人材)」を抱えていること。AI 技術にはさまざまな業界、企業が注目していますが、それに対して数学者やデータ サイエンティストといった「AI がわかる」人材は少なく、とりわけ日本国内での人材不足は顕著です。しかし同社は日本の他にシンガポールにも拠点をもち、さらに 11 か国からグローバル人材を集めていることから、企業の AI 活用に関する相談に柔軟に対応できるとします。
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株式会社 ABEJA 代表取締役社長 CEO 兼 CTO 岡田 陽介 氏
もう 1 つの強みは、AI を用いたサービスを企業の正式なサービスとして稼働する本番環境を提供するためのノウハウ、テクノロジを持っていること。一般的に「AI を利用したサービスを本番環境で稼働させるのは難易度が高い」とされ、ほとんどの場合がテスト環境での試験的な導入に止まりがちです。そんな中、独自のプラットフォームを通じて、すでに 100 社以上に AI を用いたサービスの本番環境を提供しています。
東京大学発のベンチャー企業、エルピクセル
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エルピクセル株式会社 代表取締役 島原 佑 基氏
東京大学発のベンチャー企業で、バイオ系の画像解析を得意とするエルピクセルは多くの医療機関などから医療画像を収集し、それを AI で解析、病巣を検知する仕組みを開発しています。CT や MRI といった医療画像の確認は読影専門医の担当分野ですが、近年、さまざまな医療機器の登場により医療画像は多様化し、膨大になっています。その影響で、「この 10 年で読影専門医の作業量が 3 倍になっている一方で、医師の数は高齢化により減少傾向にある」と代表取締役の島原佑基氏は警報を鳴らしました。
とはいえ、人口当たりの医療設備導入が世界で最も多い日本は「医療画像大国」であり、その分、医療画像解析の研究を進展させやすい環境と言うことができます。そこに目をつけた同社が開発したのが、医療画像 AI「EIRL」。機器ベンダーによって質にばらつきのある医療画像ですが、その差も AI 技術により学習することで、わずかな病気の兆候も見逃さず検知します。
同氏は「医師に欠かせないアシスタントのような AI になることを目指す」としつつ、AI やディープラーニングにより、「今まで見い出せなかった新しい次の医療を生み出していきたい」と語りました。
介護の現場に AI を導入するエクサウィザーズ
エクサウィザーズは、高齢者らに対する介護の現場などに AI 技術やディープラーニングを導入している企業です。
同社代表取締役社長の石山 洸 氏は、介護においてはこれまで「どういうケアが“いい”ケアで、どういうケアが“よくない”ケアなのか、わかっていなかった」と話します。そこで同社が取り組んでいるのが、介護職員が介護に当たる様子の映像をディープラーニングで解析すること。動画解析によって効果があると判断されたケアの手法を現場に実際に導入することで、被介護者の心理症状や介護職員側の負担感が低下することがわかりました。
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エクサウィザーズ代表取締役社長 石山 洸 氏
また、そのようなクオリティの高いケアの手法を他の介護職員に教えるという課題も、ディープラーニングで解決しようとしています。ケアの達人の能力を AI 技術で学習し、それを教える「AI コーチング」を取り入れることにしたのです。介護の様子を撮影した映像を多くのケアの達人にチェックしてもらい、その内容をディープラーニングで学習してより良いケアの方法を分析するものです。社会保障費が増大し、労働人口が減少していくこれからの時代、「AI コーチング」のニーズはますます高まっていくはずです。石山氏は、「AI コーチング」によって「多くの人がケアの能力を身に付けて介護者負担感が減れば、介護業界の労働人口増加のきっかけになるかもしれない」と語りました。
ハードウェアの限界に挑むデータベース企業、HeteroDB
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HeteroDB株式会社 チーフアーキテクト & 代表取締役社長 海外 浩平氏
Inception AI スタートアップ サミットにおいて、優秀企業として表彰されたのは、HeteroDB です。同社は GPU を活用してデータベースの超高速化を実現する企業です。ビッグデータ時代の到来、浸透により、ディープラーニング AI を始めとして大量のデータを解析して有益な知見を抽出することが益々重要になり、そのための基礎となるデータベースの高速化は今後必須の技術になると考えられます。しかしながら大手データベース ベンダーなどが提供するデータ ウェアハウス専用マシンは非常に高価で普及は進んでいません。同社の PG-Strom は SSD ストレージと GPU をダイレクトに結ぶ高速データ転送と、計算ヘビーな SQL 命令を GPU で超高速処理することで、安価な汎用 GPU サーバーを用いながらも革新的な超高速データベースを提供します。PG-Strom により大量の集計系計算を必要とする BI 向けのバックエンドなどを安価に構築、活用可能になり、また今後はディープラーニング AI に学習、推論させるデータの集計、抽出などにも応用が期待されます。
GPU の機能/性能を有効活用し、データベースという応用範囲の広い分野でユニークな開発を行っていることで優秀企業に選ばれました。
その他、ロボット、音声認識、マーケティング効率化、各種ビジネス プロセス効率化など、多彩な分野に渡る企業がプレゼンテーションを行いました (以下全登壇企業、登壇順)。また、発表資料は順次、GTC Japan サイトにアップされる予定です。