3 都市目の地域 GPU テクノロジー・カンファレンスがまたもや満員―― NVIDIA が発表する最新 AI テクノロジに注目が集まる

投稿者: Brian Caulfield

Xavier SoC、研究所、新興企業、自律走行車が、初の開催地である欧州 GPU テクノロジー・カンファレンスで脚光をあびる

NVIDIA の共同創立者兼 CEO であるジェンスン・フアン (Jen-Hsun Huang) がディープラーニング革命を加速させるテクノロジを発表したことから、ここ 3 週間で 3 都市目となる当社の地域 GPU テクノロジ・カンファレンス (GTC)が、またもや満員となりました。

アムステルダムの光り輝く水辺に位置するミュージック・ホールには、科学者、エンジニア、起業家、記者団ら 1,600 人もの聴衆が詰めかけました。フアンはその聴衆を前に、次のように述べました。「GPU コンピューティングは、非常に重要な何かの始まりに立ち会っています。それは、かつてない革命であり、人々はこれを AI 革命と呼びます。第 4 次産業革命の始まりなのです。これをどのように呼ぼうと、私たちはきわめて大きな何かがすぐそこまで来ていると考えています」

この世界 8 都市を巡る GTC の直近の開催地で、フアンは、自律走行車を支える NVIDIA の次世代 SoC (System-on-a-Chip) である Xavier を発表しました。ほかにも、地図の作成やナビゲーションを手がけるオランダのグループ TomTom と、AI を利用した自律走行車用「Cloud-to-Car」地図作成システムの開発に向け契約を締結したことや、NVIDIA DriveWorks Alpha 1 のリリースの詳細、さらには、NVIDIA が欧州でもっとも革新的な新興企業や研究所のいくつかと共同で進めている取り組みについても紹介しました。

この 2 週間、フアンは、北京および台湾で開催された地域 GTC で演説を行い、それぞれ 2,000 人を超える聴衆を集めました。フアンは、GPU がたった 5 年で AI を大がかりな大学の一研究プロジェクトから、日常生活の幅広い面に関わる 5,000 億ドル規模の産業へと変えた経緯について説明しました。

運転におけるイノベーション

「Xavier」を背に講演する NVIDIA の共同創立者兼 CEOジェンスン・フアンの画像
「Xavier」は、NVIDIA の次世代 Volta GPU に基づくまったく新しい SoC であり、
将来、自律走行車のプロセッサとなるでしょう。

最大のニュースは、「Xavier」です。Xavier は、NVIDIA の次世代 Volta GPU に基づくまったく新しい SoC であり、将来、自律走行車のプロセッサとなるでしょう。Xavier は、前例のないパフォーマンスとエネルギー効率を誇るだけでなく、自動車市場にとって重要なディープラーニング機能をサポートします。Xavier ベースの AI 車載用スーパーコンピュータ単体で、2 つの Parker SoC と 2 つの Pascal GPU で完全に構成された現在の DRIVE PX 2 を置き換えることができます。

フアンは次のように説明します。「これは、私が知る限り最もすばらしい SoC の偉業です。当社は非常に長い間、チップの開発に取り組んできました。近い将来、Xavier によって自律走行車で何ができるようになるか、想像してみてください」

また、フアンは、NVIDIA DriveWorks ソフトウェアの Alpha 1 リリースの詳細について説明しました。このリリースには、自律走行車が安全に走行できる場所を判断するのに役立つ空きスペースの検知や、距離の検知、車線の検知のほか、車両の周囲にある物体の大きさや形状を判断するための 3D 境界ボックスなど、新しいモジュールが多数搭載されています。

フアンは、新しいニューラル・ネットワークである「PilotNet」が、建設現場や、夜間運転、悪天候といったより困難な状況への対応を可能にする仕組みを紹介しました。また、別のニューラル・ネットワークである「OpenRoadNet」は、空きスペースの計算や、自動車が安全に走行できる場所を判断するのに役立つ、占有グリッドの作成を可能にします。

フアンは、次のように続けます。「私たちは業界として一致団結し、今後も自律走行を前進させるために取り組みます。この分野は、今後何年にもわたって、研究・開発の焦点となるでしょう。」DriveWorks Alpha 1 は、10 月に早期導入パートナー向けにリリースされます。

進行方向の地図を作成

TomTom のプレゼンテーションを背に講演する NVIDIA の共同創立者兼 CEOジェンスン・フアンの画像
TomTom がローカライズおよび地図作成ソフトウェアを DRIVE PX 2 AutoCruise に移植して運用するほか、NVIDIA DriveWorks ソフトウェアが、TomTom の HD 地図作成環境のサポートを統合する予定です。

さらに、フアンは、大手グローバル・ナビゲーション・グループである TomTom がローカライズおよび地図作成ソフトウェアを DRIVE PX 2 AutoCruise に移植して運用することに加え、NVIDIA DriveWorks ソフトウェアが、TomTom の HD 地図作成環境のサポートを統合することを発表しました。

TomTom は、世界中の走行可能な道路の高精細地図の作成に向け取り組んでいますが、この作業は非常に困難です。「自律走行車の運転手なら、1 cm の精度で自動車をローカライズしたいと思うでしょう。だれも 20 cm の誤差は望まないわけですから」と、TomTom の役員であるアライン・デ・タアイ (Alain De Taeye) 氏は説明します。

「一般に、ナビゲート可能な地図の開発には手が届かないと考えられていましたが、今では、人々が HD 地図を信頼するようになりました。HD地図は非常に詳細ですが、高い精度には手が届きません。しかし、それなら、利口になって、AI や AI プラットフォームを利用し、自動的に地図を作成して、保守できるようにする必要があります」と、デ・タアイ氏は言います。

この発表は、NVIDIA のテクノロジを中心に自律走行車の開発を進めている台湾中国の業界リーダーらが発表した同様のニュースに続くものです。

研究所から新興企業まで

NVIDIA DGX-1 AI スーパーコンピューターの早期導入のプレゼンテーションを背に講演する NVIDIA の共同創立者兼 CEOジェンスン・フアンの画像
ドイツ人工知能研究センターとスイスの IDSIA は、どちらも新しい NVIDIA DGX-1 AI スーパーコンピューターの早期導入ユーザーとなります。

AI コンピューティングは、世界をリードする欧州の研究センターや、テクノロジ企業、業績好調な新興企業などでも急速に普及が進んでいます。フアンは、2 つの欧州トップ・レベルの AI 研究センタが NVIDIA と連携し、この成長著しい分野での両センタの取り組みを強化することを発表しました。

ドイツ人工知能研究センター (German Research Center for Artificial Intelligence) とスイスの IDSIA (Dalle Molle Institute for Artificial Intelligence) は、どちらも新しい NVIDIA DGX-1 AI スーパーコンピューターの早期導入ユーザーとなります。

また、フアンは、大手ソフトウェア企業である SAP が、ドイツのポツダムとイスラエルでの同社の業務で、DGX-1 AI を利用するようになり、各チームが企業向けの機械学習ソリューションの開発を進めていることも発表しました。

「SAP とのパートナーシップにより、当社は近いうちに、それらのサーバーでアプリケーションを実行し、世界最大手の企業各社にサービスを提供できるようになるでしょう」と、フアンは言います。

この 2 カ月間、DGX-1 は、カリフォルニア大学バークレー校、スタンフォード大学、OpenAI などに拠点を置く、世界中の AI 研究所に採用されてきました。

DGX-1 は、従来型サーバー 250 台分に相当する約 170 テラフロップスの処理能力を、単一のボックス内に備えています。NVIDIA Pascal を基盤とする Tesla P100 アクセラレータを 8 個搭載し、高速 NVIDIA NVLink テクノロジによって相互接続され、幅広いディープラーニング・フレームワークが用意されています (「努力とソフトウェアと 1200 億個のトランジスタ― NVIDIA が DGX-1 を作り上げるまで」を参照)。

また、フアンは、GPU ベースの AI を利用している世界の 1,500 社を超える新興企業の中から、欧州の新興企業 4 社を挙げました。

欧州初の DGX-1 のお客様である BenevolentAI は、医療の専門家が毎年発表される膨大な量の医学研究を把握できるよう支援するために AI を利用しています。

Smilart は、人の外見が変わった場合や、画像が暗い場所で撮影されたり、わかりにくい角度から撮影されたりした場合でも、顔を分析できるようにするために、GPU ベースの AI を利用しています。

Intelligent Voice は、音声認識だけでなく、発声者を区別したり、発声者の感情まで検出したりするために、AI を利用しています。

また、Sadako Technologies は、ロボットがごみを分別できるようにするために、AI を利用しています。これまでに、60,000 トン以上のプラスチックが埋め立て地に行かず再利用されました。