地球から AI へ: スタートアップ 3 社がディープラーニングを使って環境をモニタリング

投稿者: Isha Salian

全体像を捉えるには、ときに高い視点に立つことが必要です。

1972 年に撮影された NASA の象徴的な「ブルー マーブル」は、地球の限りあるはかない自然を初めて捉えたことで、現代の環境保護運動を生み出すきっかけとなりました。今日では、人工衛星やドローンからの航空写真が、私たちの惑星を監視し保護するためのさまざまな取り組みに力を与えており、AI と NVIDIA GPU はそれを加速しています。

今年の 4 月 22 日に、アース デイは 50 周年を迎えました。この機会に NVIDIA Inception Program の参加企業がどのように航空写真と AI を使って、世界的な森林破壊を追跡し、北極域の永久凍土の融解を監視し、天然ガスの流出を予防しているかをご覧ください。

Inception は、AI やデータ サイエンス分野のスタートアップを対象としたバーチャル アクセラレーターであり、製品の開発、プロトタイピング、展開に必須のツールを提供することでこれらの企業を支援しています。

森林の消失を追跡: Orbital Insight

毎年何百万ヘクタールもの森林が、農業や違法伐採により失われています。Orbital Insight は、World Resources Institute と協力して、原生熱帯雨林が新しい道路、建物、パーム油のプランテーションなどに置き換えられている世界中の地域を特定しています。

画像提供: Orbital Insight

Global Forest Watch が主導するリアルタイムの森林モニタリングの一環として、同社のディープラーニング アルゴリズムは、60 万枚以上の 5 メートル解像度の衛星画像を使って森林破壊をマッピングします。AI を使うことで、研究者は将来の傾向を予測し、差し迫った森林破壊の兆候を突き止めて、いち早く動くことができます。森林の消失を防ぐにはあまりに遅い月次アラートに頼らなくてもいいのです。

このツールは、企業が自社のサプライ チェーン内にある森林破壊のリスクを評価するのにも役立ちます。パーム油のような商品は東南アジアで広範な森林破壊を引き起こしており、数社の生産業者は今年、サプライ チェーンにおける森林破壊をゼロにすることを誓っています。

米国カリフォルニア州のパロアルトに拠点を置く Orbital Insight は、畳み込みニューラルネットワークを使用して、衛星画像とレーダーのデータを分析して、サプライ チェーンの監視、不動産、地図作成、インフラストラクチャに活用しています。同社の地理空間 AI アルゴリズムは、Amazon Web Services 上の NVIDIA GPU によって高速化されています。

クラウド上の GPU を使うことによって、チームは必要に応じて使用の規模を拡大縮小でき、巨大な衛星画像の推論を 100 倍高速化できる、と同社のシニア コンピューター ビジョン科学者であるマニュエル ゴンザレス リベロ (Manuel Gonzalez-Rivero) 氏は述べています。

北極圏の AI: 3vGeomatics

現在、気候変動の中でも急速に脅威を増しているのが、永久凍土の融解です。主にカナダ北極圏などの極域で見られる永久凍土は、表土層の下にある氷、岩石、堆積物から成ります。有機物に富んでおり、世界の永久凍土には地球の大気に含まれる量の 2 倍にあたる 1 兆 5000 億トンの炭素が含まれると推定されています。

画像提供: 米国国立公園局 Climate Change Response。
CC BY 2.0 に基づき Wikimedia Commons によってライセンス許諾。

2100 年までに永久凍土の 70% が解けて、膨大な量の炭素が大気中に放出される可能性があります。気候変動による永久凍土の融解は、地滑りや侵食も引き起こし、地域社会や重要なインフラを脅かします。

Inception スタートアップの 3vGeomatics は、カナダ宇宙庁のプロジェクトとして、InSAR と呼ばれるリモート センシング レーダー人工衛星ベースの技術を使って、カナダ北極圏の永久凍土の融解を監視しています。

レーダー人工衛星からの衛星画像は、それぞれが何十億ピクセルから成り、何千平方キロメートルもの範囲に及びます。NVIDIA のデータ センター GPU を多数備えたオンプレミス サーバーを介して画像分析を行うことで、処理速度を数千倍に向上させることが可能になりました。

3vGeomatics の最高技術責任者であるパルワント グーマン (Parwant Ghuman) 氏は次のように述べています。「以前は、衛星画像を分析して結果を出すのに数か月もかかり、クライアントに 5 週間前に地滑りがありましたと伝えることしかできませんでした。しかし GPU を活用することで、今現在のリスクに関する実用的な情報を提供できるようになりました」

石油、ガスの流出を予防: Azavea

米国の石油ガス業界は、推定で毎年 1,300 万トンのメタンを大気中に流出させていますが、そのほとんどは予防可能なものです。主要な原因のひとつが、第三者が天然ガスのパイプラインの上を掘っていると気づかずに掘削することによる掘削被害です。

フィラデルフィアを本拠に、市民や社会にインパクトを与えるための地理空間分析ツールを作成しているスタートアップの Azavea は、航空サービス会社の American Aerospace と協力して、既知のパイプライン上の建設を検出する取り組みを行っています。そのトレーニングとエッジでの推論には NVIDIA GPU が使われています。

画像提供: American Aerospace

飛行機やドローンに配備されたニューラルネットワークが、地上に見える建設車両やトラックを検出し、パイプラインに損傷を与える恐れのある掘削の可能性について石油ガス会社に警告することができます。

Azavea の調査担当バイス プレジデントであるロブ エマニュエル (Rob Emanuele) 氏は次のように述べています。「現在、パイロットは既知のパイプラインの上空を低高度で飛行して、建設車両を示すものはないかと窓の外を見て確認しているだけです。当社の製品があれば、パイロットは地上のはるか上空を飛行して、AI が建設車両のある場所を検出するので、はるかに安全に飛行できるようになります」

Azavea の AI アルゴリズムは、同社のオープンソースの航空写真向けディープラーニング フレームワークである Raster Vision で開発されており、リアルタイム推論のためのテストが、NVIDIA RTX ノート PC を使って小型飛行機の中で行われています。将来的にはこれに変わって、組み込み GPU が無人航空機やドローンに配備されるようになることでしょう。

GPU テクノロジが環境プロジェクトをはじめとする社会的影響力のある取り組みをどのように推進しているか、詳細をご覧ください。

メイン画像提供: NASA