ウイルスとの戦いがネット上に: Folding@Home が COVID-19 との戦いのために 1.5 エクサフロップスを達成

投稿者: Rick Merritt

新型コロナウイルスの解析を支援するため、70 万台もの家庭の PC にソフトウェアがダウンロードされる

ツイートの連鎖は米国時間 3 月 25 日 (水) の午後 1 時 55 分に始まりました。

それは、Folding@Home が管理する研究ネットワークが、おそらく世界で最も強力なスーパーコンピューターになった時刻でした。3 月 15 日 の新型コロナウイルスとの戦いを支援しようという呼びかけに対し、家庭用コンピューターの余剰リソースという寄付が集まり、クラウドソーシングによるエクサスケールのスーパーコンピューターが誕生しました。

たった 10 日で、支援者たちは COVID-19 の解析を支援するために、何十万台という家庭用 PC に Folding@Home のソフトウェアをダウンロードしました。

「これは驚くべき体験でした」と、Folding@Home のディレクターであるグレッグ ボウマン (Greg Bowman) 氏は述べました。Folding@Home はすべてボランティアによる研究者チームであり、ボウマン氏自身もセントルイス ワシントン大学医学部の准教授です。同学部は、Folding@Home ネットワークの活動を維持している世界の 11 の研究室の 1 つでもあります。

「現在のパンデミックに効果をもたらす可能性を最大化するため、考えられるすべてのことを並行して試す機会を得られるのは実に刺激的です」

Folding@Home は、エクサフロップの壁を打ち破ったことを Twitter で祝いました。

このニュースを知らせるツイートに、在宅で自粛生活を送る支援者たちは動画を投稿して仮想のパーティーを開きました。ビデオ クリップの生徒たちは机の上で踊り、『トップガン』のヒーローはハイタッチを交わし、クッキーモンスターはお菓子を平らげ、『スター・トレック』や『スター・ウォーズ』、アニメのキャラクターたちが大勢で歓声を上げました。動画の中ではサイモン コーウェルまでもが親指を立てていいね! しました。

Folding@Home のスコアボードは上昇を続けています。年初、わずか 3 万台で始まったネットワーク上のコンピューターは、現在 100 万台を超えています。

パフォーマンスは 1.5 エクサフロップス を超え、356,000 基を超える NVIDIA GPU も一役買っているとボウマン氏は推定しています。Folding@Home のブログ サイトでは、さらに多くのニュースが間もなく公開される予定です。

COVID-19 のスパイクの映像を公開

エクサフロップの壁を打ち破る前にも、研究者たちは驚くような研究成果を公開していました。健康な細胞に侵入する新型コロナウイルスのタンパク質のアニメーションは、抗 COVID-19 薬やワクチンのための分子標的を示せる可能性があります (上の画像をご覧ください)。

この成果は、Folding@Home が以前に行ったエボラウイルスの実験を土台にしています。これは、タンパク質 (ウイルスを含め、生き物の基本的な材料) がどのように 3D 構造に折り畳まれ、さまざまな機能を果たすのかを探究する幅広い研究の一環です。

新型コロナウイルスのタンパク質のスナップショットは、スマートフォンの自撮りのように簡単には撮れませんでした。このような科学分野の視覚化には、原子レベルに近い相互作用をシミュレートするための大規模な演算能力が必要です。

エクサフロップのスイッチを入れる

昨今のコンピューター科学者は、テニス コート数面分にもなる広さのコンピューター ルームにサーバーを積み重ねて、科学の大問題に取り組んでいます。現在世界最大のスーパーコンピューターであるオークリッジ国立研究所の Summit システム は、NVIDIA の Tensor コア GPU を 27,648 基搭載し、HPL ベンチマークで 148.6 ペタフロップスを達成しています。ランキング 2 位のローレンス リバモア国立研究所の Sierra システムも、NVIDIA GPU を使用して 94.6 ペタフロップスを達成しています。

両方のシステムを運用する米国エネルギー省は、初のエクサスケール システムを 2021 年のどこかの時点で稼働させることを目指しています。間違いなく、エクサスケールの時代はすでに始まっています。Summit は、混合精度の AI タスクの実行で 3.3 エクサフロップスを記録するなど、いくつかのマイルストーンを達成しています。

とはいえ、Folding@Home はエクサスケールのパワーをクラウドソーシングで集めた初めての取り組みとして称賛に値します。

これは素晴らしい成果です。10 億人の人々がそれぞれ 10 億台の電卓を持っていると想像してみてください。全員が同時にイコール キーを押せば、1 秒で 100 京 (10 の 18 乗) 回の演算を実行したことになります。これが 1 エクサフロップです。

様々な支援方法

押し寄せる寄付の波に乗ろうとするボウマン氏が Twitter で支援者に語ったところによると、研究者たちは、つながっているすべての PC に処理を与え続けられるよう、一時さらに多くのサーバーを求めて争奪戦を繰り広げました。

「多くの人々を代弁して言わせていただくと、これは私にも貢献できることを与えてくれて、私の精神状態にもプラスの効果をもたらしました」と、ある支援者は答えました。

英国のコンピューター技術者はユーモアを込めて言います。「Folding@Home は、うちの最上階を断続的に暖めています」

Folding@Home は引き続き、こちらからダウンロードできるソフトウェアを使って PC の時間を寄付するよう呼びかけています。一方、Folding@Home は実験データをオープンな総合研究サイト生物学などの分野に特化したサイトで公開しています。

この取り組みを加速させるために、Folding@Home はこのほど、低分子スクリーニング シミュレーションを行う新しいバッチを発表しました。これは、COVID Moonshot でどの分子を合成、分析すべきか優先順位を付けるのに役立てられます。

Folding@Home は、新型コロナウイルスと戦うために結成された多くの技術的取り組みの 1 つです。

米国エネルギー省は、多くのテクノロジ企業や大学の支援を受けて COVID-19 ハイパフォーマンス コンピューティング コンソーシアムを発足させました。このグループは 16 システムのスーパーコンピューターを共同利用し、合計で 330 ペタフロップスの処理能力を提供します。36,000 基を超える NVIDIA GPU もその一部を支えています。

これらとは別に、開発者はすでに #BuildforCOVID19 ハッカソンでプロジェクトを立ち上げています。その中での注目のプロジェクトが 4 月 10 日に発表される予定です。

NVIDIA としては、新型コロナウイルスの解析を加速するために、研究者にParabricks ソフトウェアの 90 日間無償ライセンスを提供しています。