チームワークで機械を動かす: FIRST ロボットコンテストにて、若きロボット開発者が互いを「パワーアップ」

投稿者: Jennifer Deauville

グレース ラム (Grace Lam) は 17 歳の若さですが、成功へ至るカギについて、既に他の多くの人よりも知っています。すなわち、最高の発明をしたり、相手を負かしたりすることだけではなく、コラボレーター (共同作業者) としての心を持つことが大切なのです。

グレースは、4 月末に開催された FIRST Robotics Competition で高い評価を獲得しました。FIRST とは、毎年恒例の学生向けイベントで、まるで剣闘士の試合のようなスリルと、応用科学/技術の知的興奮を同時に味わえます。

グレースは、カリフォルニア州北部にあるパロ アルト高校 (Palo Alto High School) に所属し、ガール スカウトと NASA から支援を受けている FIRST 女子チーム「スペース クッキーズ」 (Space Cookies) の一員です。スペース クッキーズは、27 か国から来た合計 9 万人の学生たちから成る 3,600 以上のチームとともに、今年の FIRST に参加しました。

高校生たちは、イベントの 6 週間のうちに、ロボットを設計して開発し、ライバル チーム相手に特定のタスクを実行させます。また、「コーペティション」のアイデアを体現する (たとえ熱戦の最中でも、各チームが互いに助け合う) ことも期待されています。

昨夏の NVIDIA インターンだったグレースは、業界内のジェンダー バランスを改善することを目指しており、FIRST に参加する他の学生たちに対し、NVIDIA Jetson スーパーコンピューターとディープラーニングについて、ワークショップで教える多忙な日々を過ごしています。彼女は、 DIGITS を使った画像分類に関する Deep Learning Institute ラボのリーダーを務めており、今年の夏も、他に 2 つのラボをホストする予定です。

グレースは次のようにコメントしています。「NVIDIA でのインターンシップの最中、私は素晴らしいメンターやリソースに恵まれました。しかし、多くの学生たちは、私と同じような機会を利用できず、ディープラーニングに取り組む糸口を見つけられていないということに気づきました。AI とディープラーニングは、ロボット工学、つまり FIRST だけでなく産業全般にとって、きわめて重要です」

グレースは、そのリーダーシップと恩を返そうという情熱のために、栄えある優秀賞 (Dean’s List award) を獲得しました。賞を授与した FIRST の共同創設者、ディーン ケーメン (Dean Kamen) 氏は、後に「セグウェイ」と呼ばれるようになった発明品を開発したことで知られています。


FIRST 創設者のディーン ケーメンが、グレースに優秀賞を授与。

AI ミッションに取り組んだスペース クッキーズ

今年の FIRST 大会のテーマ「POWER UP」では、アーケード ゲーム内に捕らわれたキャラクターたちを救うため、チーム間で協力して中央のボスを倒すことが課題となりました。

学生たちが開発したロボットがフィールド内を走り回ってパワー キューブを集め、プレート上に置くことで、スイッチを制御したり、スケールを傾けたりして試合を有利に運びます。キューブを人間のプレイヤーに運ぶロボットは、貴重なパワーアップを獲得します。

スペース クッキーズのロボットは、6,000 枚の画像でニューラル ネットワークをトレーニングしました。また、搭載されている Jetson TX2 の高速オンボード処理機能により、キューブの大きさ、向き、露出状況、周囲の状況などにかかわらず、キューブを特定できます。

NVIDIA は、カナダ、チリ、メキシコ、トルコなど 6 か国から来た 104 (昨年の 2 倍) の FIRST チームを支援しました。この中には、2014 年に結成された日本のチーム、Indigo Ninjas も含まれています。そのうち、スペース クッキーズを含む 43 のチームは、ヒューストンとデトロイトで年内に開催される待望の世界大会へと進出することができました。

ワークショップという形でサポートを段階的に提供

開発期間が 6 週間に限定されているうえ、多くのチームは物理的な練習場を持っていないことから、大会用のロボットを準備するのは至難の業です。


アルマンと彼が開発した VR フィールド ステーション。

そこで登場するのが、アレクサンダー D ヘンダーソン中学 (Alexander D. Henderson University School) の 1 年生で、アウルトノマス (Owltonomous) チームに所属しているアルマン (Arman) です。この中学は、ボカ ラトン (Boca Raton) のフロリダ アトランティック大学 (Florida Atlantic University) のキャンパス内にあります。

アルマンは、野心的な姿勢で FIRST に取り組んできました。彼は既に小学 2 年生のときに FIRST チームに参加しようとしましたが、若すぎて断念したことがあります。

アルマンは昨夏、「貢献したい」という強い意志のもと、FIRST の大会レギュレーションに基づくプレイイング フィールドのシミュレーション版を、VR と Unity ゲーム エンジンを利用して開発しました。しかも、開発期間はわずか 3 週間でした。

この VR シミュレーターでは、各プレイヤーが、それぞれのロボットの正確な位置と向きを見ることができます。ロボットの視点から見た VR フィールドのカメラ フィードが、NVIDIA Jetson にストリーミングされます。

これにより、今まで実際のフィールドを利用できなかったチームも、仮想上のフィールドとゲーム要素の文脈内で、ロボットの位置を特定し、それをもとにソフトウェアのアプローチやアルゴリズムを開発することが可能になります。

アルマンは、次のようにコメントしています。「僕の目標は、これを世界中のすべての FIRST チームに提供することです。そうすれば、実際のロボットを使わなくても練習できるようになります。また現在、ゲームのマルチプレイヤー版も開発中です。そこには各チームが自身のロボットやその AI 版を投入できるので、他チームとオンラインで競うことができます」

アルマンとグレースは、強い “coopertition” (協力=cooperation と競争=competition の造語) 精神を持っているため、新世代のロボット工学イノベーターによる取り組みも積極的にサポートしています。たとえ熾烈な競争の中でも、常に思いやりとチームワークを第一 (FIRST) に優先すべきであるという姿勢を示してくれています。

Jetson インターン プログラムの詳細については、
https://blogs.nvidia.co.jp/blog/2017/08/29/jetson-interns/ をお読みください。

今年の夏も、高校生向けの一連の野心的なインターンを開催する予定です。楽しい発見が待ち受けていますので、引き続き最新情報にご注目ください。