小児集中治療室ほど、決断が重要になる場所は他にありません。
子どもたちは呼吸器疾患、外傷、手術後のケアの問題、敗血症、およびその他の感染症など、複雑で、多くの場合は慢性的な疾患を抱えてやってきます。その多くは急患です。
ロサンゼルス小児病院のデータ科学者であるデイヴィッド・レッドベター(David Ledbetter)氏と研究チームは、子どもたちにとって最適な薬物療法を特定するため、GPUを活用したディープラーニングを使用して、小児ICUから得た10年分もの医療記録というビッグ・データを処理しています。
レッドベター氏の最も重要な目標は、患者に最高の治療成果をもたらすことです。
最近シリコンバレーで開催されたGPUテクノロジ・カンファレンスのトーク・セッションで、レッドベター氏は満員の聴衆に向けて次のように語りました。「小児ICU室を見ると、目に入るのは無数の配線です。見落としがちなのは、そこに患者もいるのだという点です。私たちは患者に注目したいのです。」
ビッグ・データの活用
GPUがますます強力になり、科学者はディープラーニングを応用できるようになっています。ディープラーニングとは、急速に開発が進む人工知能の一分野で、コンピュータに巨大なデータセット内のパターンを学習させます。
ディープラーニングのモデルを学習させるため、レッドベター氏のチームでは、ロサンゼルス小児病院の小児ICUに入院した患者の記録から、約13,000件のいわゆる「患者のスナップショット」を作成しました。
このスナップショットは、患者の生命状態、心拍数、血圧、および実施した治療の相互作用を詳しく示しています。レッドベター氏とチームは、これらのデータを2つの独立したニューラル・ネットワーク・モデルに送り込みました。これにはTITAN X GPUを使用し、学習は数時間で完了しました。
治療成果の向上
畳み込みニューラル・ネットワークを使用することで、生存の確率を予測でき、再帰型ニューラル・ネットワークを使用することで、生理機能を時系列で予測できました。これにより、患者の生命状態とICUで実施した処置との主な関連性を理解するのに役立ちました。
レッドベター氏は次のように述べています。「患者を安定状態に持ち込むことができれば、あとは患者自身の生体防御が働いてくることが期待できました。医師が重視しているのは、時間の経過に対する生存率です。80%の生存率が、1時間経てば50%に低下してしまい、これは大きな差です。そこで私たちは、治療成果がどう変化するかという観点で、治療を評価します。」
命を救う決断に使えるぎりぎりの時間の中で、「私たちは大きな違いをもたらすことができます」とレッドベター氏は述べています。医師に情報を提供することは、「子どもたちにより良い治療をするため、情報を使って私たちは全力を尽くしていると確信する」のに役立つのです