新たに建設予定のビル内に太陽光線がどう射し込むのかをNVIDIA Irayで確認

投稿者: Phil Miller

我々がシリコンバレーに作ろうとしているビルは、とてもユニークです。

完成は2年も後のことになりますが、2階建て、4万6000平方メートルあまりをカバーするアーチ型の天井と美しい天窓からどのように光が射し込むのかはすでにわかっています。それも、きっちりと。何月何日の何時ならどうなるのかまで、正確にわかっているのです。

三角形の断面がうねるような天井が、たとえば、夏真っ盛りの7月半ばの正午ならどのように光を反射するのかわかっているのです。薄暗い11月の夕方にどうなるのかもわかっています。

また、どこにいてもまぶしくないのもわかっています。明るすぎてコンピュータのスクリーンが見にくいこともないし、窓の近くでお昼を食べたら暑すぎたなんてことにもなりません。

このようなことは、最近まで不可能だと考えられていました。しかし、Gensler社のリード・アーキテクト、Hao Ko氏は、NVIDIAが提供する物理ベース・レンダリングと光線シミュレーションのソフトウェア、NVIDIA Irayを使い、ビル全体のシミュレーションを実現。ビルの図面と、窓、カーペット、パーティションなどの材質データをすべて入力し、写真に匹敵する高画質のイメージを制作しました。しかも、このイメージは、計画が修正されても、ほぼリアルタイムに更新されます。

サンタクララに建設するNVIDIAビルの中心部をNVIDIA Irayでレンダリングしたもの
サンタクララに建設するNVIDIAビルの中心部をNVIDIA Irayでレンダリングしたもの

ワークスペースの灼熱地獄化を防ぐ

Gensler社クリエイティブ・メディア・マネジャーのScott DeWoody氏は、次のように述べています。「Irayを使ったおかげで、我々のデザインだと太陽光線がどのように射し込むのかを、長期にわたって検証することができました。季節や時刻によって太陽の位置は異なるわけで、それをチェックし、執務スペース約6平方メートルごとにホットスポットがないかを確認し、そのようなホットスポットをなくしたのです。」

この作業を支えたのが、NVIDIAのMDL(Material Definition Language)です。この言語を使うと、建材の物理的特性を正確に反映するデジタル・マテリアルを記述することができます。

現実世界で測定されたデータが組み込まれたMDLマテリアルは、レイヤを組み立てたりブレンドしたり、あるいは混ぜ合わせたりしてさっとカスタマイズできます。こうして作ったものは複数アプリケーションで共有することもできますし、MDL準拠であればほかのレンダラで使うこともできます。このような機能があるから、Gensler社では、さまざまなチームやアプリケーションが関わる大がかりなプロジェクトで、現実世界の仕様に合わせ、デザインの意図を維持できたわけです。

クラウドで驚異的なグラフィックスを

DeWoody氏が仕事をしているのはヒューストンで、Ko氏がいるサンフランシスコから遠く離れているため、NVIDIA Quadroビジュアル・コンピューティング・アプライアンス15台で構成されたリモート・クラスタにアクセスする形でIrayのインタラクティブなパフォーマンスをスケーリングしたそうです。このVCAは、それぞれにハイエンドのNVIDIA Quadro GPUが8基搭載されていて、全部で120基ものGPUのパワーをリモートで活用したわけです。

DeWoody氏は、次のように述べています。「VCAは、当社ワークフローの屋台骨と言えます。これがあれば、必要なレンダリングがさっと行えるのです。ライティング・コンサルタントを隣に座らせ、時刻を正午から午後6時まで変化させたり、材料を木材からコンクリートに変更したりして、その影響をリアルタイムに確認することができます。いままで、ライティング・コンサルタントが何日もかけて計算しなければならなかったことを、わずか数分で行えるわけです。」

サンタクララに新築するNVIDIAビルの内部、中二階への階段をNVIDIA Irayでレンダリングしたもの
サンタクララに新築するNVIDIAビルの内部、中二階への階段をNVIDIA Irayでレンダリングしたもの

NVIDIAでは、Irayと一緒に、NVIDIA vMaterialsのファースト・エディションも発表しました。vMaterialsというのは、較正・検証ずみの材料、200種類以上を集めたもので、MDLをサポートしていればどのアプリケーションでも無償で利用できます。検証ずみマテリアルを必要に応じてカスタマイズして使えば、デザインのプロセスから経験値に頼る作業をなくすことができます。

信頼性の高いマテリアル、正確なライティング、流体のインタラクティビティを組み合わせた結果、Irayは、デザインを作成したりその最終形を予想したりなどを効率的かつ効果的に行える環境となっています。

Irayによる予測は誰でも行えます

Gensler社が活用したIrayテクノロジは、いま、あらゆる人に使っていただけるようになっています。NVIDIAの新しいオンライン・ストア経由で、人気の3D制作アプリケーション、Autodesk 3ds Max用プラグインが提供されるようになったからです。Autodesk Maya用プラグインも、12月中旬にはリリースされる予定です。

NVIDIA Iray SDKとvMaterialsは、CAD、AEC、レンダリングといったアプリケーションの開発者向けに厳選した開発ツール、サンプル・コード、最先端のライブラリを集めたスイート、NVIDIA DesignWorksにも含まれています。