変形性関節症――骨のつなぎ目を保護する軟骨が摩耗することによって生じるこの疾患は、激しい関節の痛みを引き起こし、身体障害の主な原因の 1 つとなっています。さらに、この一般的な骨疾患は、初期の段階で発見・予防することがきわめて難しい疾患の 1 つでもあります。
米国だけでも、膝/股関節置換手術の大半が変形性関節症によるものです。この疾患のもっとも一般的な症状は膝への影響で、60 歳を超える男女の発症率はそれぞれ 10% と 13% に上ります。これらの数字は、高齢化と肥満の蔓延によって増加の一途をたどると見られ、公的医療制度や福祉に莫大な負担がかかることが予想されます。
この状況を打開しようと、オーストリアのスタートアップであり NVIDIA の Inception プログラムのメンバーでもある ImageBiopsy Lab が、ディープラーニングを利用して、膝の変形性関節症をはるかに効率的かつ費用対効果の高い方法で診断できるようにしようと取り組んでいます。
より的確に、速く、力強く
現在のところ、変形性関節症の進行はほぼ止められないと考えられています。診断はもっぱら医師による 2 次元 X 線画像の視覚的評価と、患者の背景の理解に頼るもので、そのプロセスには時間とリソースがかかり、正確な診断と明確な治療計画が出るまでの時間が長引くこともあります。
変形性関節症は薬で治すことができないため、治療では症状の緩和と機能性の回復に焦点が置かれます。つまり、初期診断がより早く正確なほど、その症状を抑えやすくなるわけです。
ImageBiopsy Lab は、コンピューター ビジョンとディープラーニング アルゴリズムを使って、医師が 2 次元画像を 3 次元的に正確に理解できるようにしようとしています。NVIDIA の GPU を利用してアルゴリズムのトレーニングを行うことで、医師が膝関節周辺の正確な測定値を得られるようにしました。さらにデータを処理しなくても、その結果から患者の変形性関節症の重症度がわかります。
ImageBiopsy Lab の IB Lab BMAx ソリューションを実際に使って説明する、整形外科および整形外科手術のスペシャリスト、 Michael Riedl 医師
担当医師は、サーバーから X 線を読み込んでからその画像を手作業で評価しなくても、リアルタイムで自動的に分析された X 線写真を手に入れ、骨の強度を知ることができます。これらのプロセスが自動化されることで、手作業での画像の評価に比べて時間を最大 90% 短縮することが可能になり、診断と治療計画の作成に専念できる時間をより長く確保できるようになります。また、初期段階が自動化されることで、これまでは患者 1 人の診断にかかっていた時間で 4 人を完全に診断できるようにもなります。
他にも、客観的に測定されたパラメーターが得られることで、明確に方針を定めて治療を開始できるため、症状の進行を遅らせることが可能になります。
ImageBiopsy Lab の CEO 兼共同創立者であるリヒャルト リュハール (Richard Ljuhar) 氏は、次のように説明します。「NVIDIA の GPU が持つ優れた能力のおかげで、ネットワークのトレーニングを加速させることができ、当社の製品をずっと速く展開できるようになりました。」
Inception プログラム
ImageBiopsy Lab は、NVIDIA の Inception プログラムに参加する 2,200 社を超えるスタートアップの 1 つです。この仮想アクセラレータ プログラムでは、スタートアップ各社にテクノロジ、専門知識、マーケティング サポートを提供しています。