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隈研吾建築都市設計事務所、NVIDIA RTX A5500で建築ビジュアライゼーションを加速、メタバースに向けてNVIDIA OmniverseとVRを検証

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建築設計の分野では、建物の完成予想図などにCGによるビジュアライゼーションが利用されています。ビジュアライゼーション ソフトの性能も向上し、レイトレーシングなどによるフォトリアリスティックな映像が得られるようになりましたが、その分、コンピューターへの負荷が高くなっています。また、VR HMDの普及によって、設計の現場でもVRを活用することが増えてきています。VRでは右眼用と左眼用の映像を用意する必要があり、描画負荷は2倍になります。そのため、より高性能なGPUが求められています。

建築ビジュアライゼーションにVRを活用

隈研吾氏は、国立競技場や高輪ゲートウェイ駅などの設計にも携わる、日本を代表する建築家です。その隈研吾氏が率いる隈研吾建築都市設計事務所(以下、KKAA)では10年以上前に専任のCGチームを社内に結成し、CGを活用してきました。KKAAは、さらなるビジュアライゼーションの進化を求めて、高い処理能力が要求されるマルチアプリケーション ワークフローに必要なパフォーマンス、信頼性、機能を提供するNVIDIAの最新GPU、NVIDIA RTX A5500グラフィックスカードを搭載したHPのワークステーション「HP Z8」を導入しました。その詳細についてご紹介します。

KKAAでは、古くからCGに力を入れてきましたが、その使い方も年々進化してきたと、設計室長の松長知宏氏は語りました。「もともとビジュアライゼーションをメインにやってきましたが、だんだん業務が拡大していって、静止画パースというよりは動的なアニメーションの依頼も増えています。また、設計の段階から3Dを使っていますが、その3Dモデリングをプログラムでやるようなことも担当しています。」

隈研吾建築都市設計事務所 設計室長 松長知宏氏

新しいソリューションやツールを積極的に試し、いいと思ったものはどんどん取り入れていくこともKKAAの流儀です。松長氏とともにCGチームを率いる土江俊太郎氏は次のように語りました。「私も松長と一緒に映像やインタラクティブなものを作るプロジェクトをいくつか担当しています。実行部隊的な側面もありますので、Unreal EngineやChaos Vantage、NVIDIA Omniverseといった新しいツールをいろいろ試して、どういう案件、どういうプロジェクトで、どういうツールが使えそうか検証しています。」

隈研吾建築都市設計事務所 土江俊太郎氏

建築におけるビジュアライゼーションは、昔は手描きのパースの代わりに、CGで完成予想図を1枚作って見せるというものがほとんどでしたが、今はアニメーションやVRなどのより高度なビジュアライゼーションが要求されるようになりました。CG活用によって建築設計業務がどう変わってきたのか、松長氏は次のように語りました。「建築設計者自らが、ある程度までCGによる絵を作れるようになってきたことが、最近のトレンドです。以前は、設計者が2Dの図面を作りCG担当者がそれを立ち上げ3Dにすることが多かったのですが、10年くらい前から設計者自身がRhinocerosを使って、3Dで設計するようにもなりました。しかし、当時はまだ高度なビジュアライゼーションまではいけず、スクリーンショットを撮ったりして説明していたのですが、最近はGPUの性能も上がり、Enscapeのような使いやすいビジュアライゼーションソフトが出てきたことで、設計者自らが簡単に見栄えのよい建築パースを作れるようになりました。」

設計者自らがビジュアライゼーションまでできるようになったことは、設計者にとっても大きなメリットです。モデリングした絵だけでは、ガラスなどの質感や光の感じが分かりにくかったのですが、ビジュアライゼーションによって、建材などのテクスチャを貼ったり、人を置いたり、そういうことを反映したパースが簡単に作れるようになったので、設計者も自分で設計を行いながら、例えば天井の高さを検証したり、外部との繋がりのために軒を下げたりといった修正ができるようになりました。

Omniverseで、テクスチャ貼り付け、日照の検証も可能

さらに、アニメーション、動画、メタバースのニーズが増えてきたことについて、松長氏は次のように語りました。「数年前から動画の依頼が増えてきました。ただ、我々インハウスでやっていますので、多くのプロジェクトを捌く必要があります。動画はかなりリソースが必要なので、そんなにたくさんは作れませんでした。また、最近はメタバースについての関心が高く、実際の建物ではなく、メタバース上にしか存在しない建築のデザインも頼まれるようになってきました。そこは我々としても、面白くて挑戦しがいがありますし、設計者もCGスタッフもいる我々だからこそできることでもあります。」

このように、建築業界におけるビジュアライゼーションの重要性はますます高まっていますが、そこで課題となってきたのが処理速度とクオリティです。松長氏は次のように指摘します。「設計者がきれいな絵を描けるようになってきた中で、専任のCGチームには、より早く、クオリティの高いものを出すことが要求されます。また、インハウスでやる意味は、レスポンスの速さを実現するためですよね。社内からビジュアライゼーションを依頼されて『締め切りを過ぎているので間に合いません』と我々が言い出したらちょっと厳しいと思います。外注と変わらなくなりますので。インハウスである意味というのは、どんな球を投げられても、中だから処理できますという状態にしておくことですよね。そのためにも、GPUのパフォーマンスが求められます。」

KKAAでは、以前からNVIDIAのGPUを搭載したHPのワークステーションを導入し、ビジュアライゼーションに活用してきましたが、今回、さらなるパフォーマンスを求めて、最新のRTX A5500を搭載した「HP Z8」をテスト導入しました。その効果は、まさに驚異的なものでした。土江氏は次のように説明しました。「今回まず、Chaos Vantageを使ってどれくらいGPUを使った動画の書き出し速度が変わるかを検証しました。以前使っていたのは1世代前のRTX 5000でしたが、RTX A5500で同じ動画を書き出してみると、性能表通り、2.5倍くらいの差がでました。本当に性能通りの差が出たと感動しました。弊社が手がける建物の設計は、細かな意匠が多かったり、規模が大きかったり、光が複雑に反射したりするものが多く、負荷が高いのですが、それでも1世代違うだけで2.5倍もの差が出たことには驚きました。」

土江氏の検証によると、15フレームの動画を20秒間書き出すのに、以前のRTX 5000では2時間程度かかっていましたが、RTX A5500では30分ちょっとで書き出しが終わったそうです。これは非常に嬉しいと、土江氏は語ります。「2時間かかっていたものが30分ちょっとで出るのなら、十分実用的です。お昼ご飯を食べにいっている間に出るくらいですので。特に国際コンペ時など時間の制約が厳しい案件では、書き出しと編集でトライアンドエラーを繰り返しながらクオリティをあげていくのが難しい場合も多く、これまで動画の内製はあまりできていなかったのですが、この程度の時間で処理できるなら実践で投入できるのではないかと思います。」

Vantageでは人工照明がアニメーションに対応していませんが、NVIDIA Omniverseなら、人工照明のアニメーションもサポートしていると土江氏は指摘します。また、Omniverseでも検証を行いましたが、Omniverseではパストレースという新しいアルゴリズムを採用し、ほぼリアルタイムでの描画が可能です。Rhinocerosとのコネクターも用意されておりOmniverseと連動することもできます。

OmniverseとRhinoceros をライブシンク

KKAAは、VRの活用にもいち早く取り組んできました。3、4年前には、簡易VRスコープを使って、静止画で書き出した映像を自由な視点で見るソリューションを実現しています。今回、メタバースに向けた取り組みとして、現在ベータ版が試用できるOmniverse XRと最新のVR HMD3機種、HTC VIVE Focus 3、HP Reverb G2、Varjo Aeroを検証してみました。松長氏は、その3台について次のように語りました。「それぞれ特徴がありますが、画質ならやはり超高解像度のVario Aeroが一番優れています。VIVE Focus3はスタンド アロンタイプなのでケーブル不要で自由に動けることが利点ですね。HP Reverb G2は3モデルの中で最も低価格ですが、画質は十分で、コスト パフォーマンスが魅力です。」

Omniverse XRによるリアルタイムレイトレースVR

Omniverse XRは、前処理なしでリアルタイムでのレイトレースVRが可能で、それぞれのVR HMDに応じた快適なVR体験が可能です。Omniverse Enterpriseのマルチ ユーザー コラボレーション機能と連動することで、将来的にはメタバースの中で複数のユーザーがデザイン作業を行うことができます。さらにOmniverseの企業向けライセンス版Omniverse EnterpriseはNVIDIA 仮想 GPU (vGPU) 環境との組み合わせにより、クラウドでの展開も可能で、ハイブリッドワークも実現します。

建築向けのOmniverseのコラボレーションに関してはこちらをご参照ください。

※Omniverse XRはOmniverse Create XRに名称を変更しました。

ページトップ画像提供:隈研吾建築都市設計事務所


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