夕日の写真を撮ったら太陽がゆがんだように写って失敗したことはありませんか?
この現象はカメラの問題ではありません。大気の揺らぎによって光線の進路がゆがめられることが原因です。これは長年の間、天文学者の悩みの種でした。
幸運にも、パリ・ディドロ大学とパリ天文台のチームが、GPUを使ってこのゆがみを補正し、欧州超大型望遠鏡(E-ELT:現在建設中、2024年に運用開始)のような巨大な望遠鏡から解像度が今までよりはるかに高い画像を得る方法を見つけました。
ヨーロッパの学術機関や企業などの複数のパートナーから支援を受け、430万ドルがつぎ込まれたGreen Flashプロジェクトは、リアルタイム・コントローラのプロトタイプを製作することに焦点を当てています。このコントローラによって、オリンピックのスイミング・プールと同じサイズの巨大な望遠鏡を構成する、可変形状ミラーに毎秒数百万のコマンドを送ります。これにより、望遠鏡の画像品質が著しく安定することが期待されています。
パリ・ディドロ大学の準教授、ダミアン・グラタドゥール(Damien Gratadour)氏は、先月のGPUテクノロジ・カンファレンスで、プロジェクトの進行状況について最新情報を報告し、GPUがコントローラの性能に与える影響と、望遠鏡全体に与える影響の評価について講演しました。
グラタドゥール氏のチームは、主に大型望遠鏡の光学システムを構築することに注力しています。
「私たちは、こうした巨大な望遠鏡から、できる限り鮮明な画像を得るため、文字どおり光線を補正しています。」とグラタドゥール氏は述べています。
光学システムでは収差が発生して高速で広がるため、補償光学を使って収差を補正します。グラタドゥール氏によると、GPUは、このような収差を計測する波面センサーからの大規模な画像をリアルタイムで処理可能にし、補償光学に革命を起こしています。
しかし、E-ELT規模の望遠鏡で補償光学を利用することはまだできません。そこで、グラタドゥール氏のチームは、GPUをコントローラに搭載し、ジッタを低減させ、永続的なカーネルを実現し、常にデータを分析できるようにすることで、補償光学と同様な効果を得ようとしています。
そして、GPUを他の形でも活用することが予定されています。グラタドゥール氏のチームは、規模を小さくした望遠鏡のプロトタイプを製作し、6台もの高解像度カメラを搭載して、GPUが性能に与える効果をCPUやFPGAと比較して解析する予定です。
夕日の写真はきれいにならないかもしれませんが、天文学者の展望は間違いなく鮮明になるでしょう。