今年のサンダンス映画祭ニューフロンティア部門で話題をさらうのは、5分間のVR映画体験の『Giant』でまちがいないでしょう。
これは、共同製作者でもあるMilica Zec監督が経験した戦禍で荒廃したセルビアにおける子ども時代をもとにしたVR映画で、交戦地帯で生き残ろうと奮闘する家族の暮らしを追体験することができます。VR映画が自分自身の本能や日常の様々な選択などを自覚するのにとても効果的であることがわかります。
サンダンス映画祭ニューフロンティア部門にはこの10年間、アーティストとテクノロジストが協力し、物語という世界を広げようと作りあげた作品が登場してきました。今年は、あちこちに30件ものVR体験および11件ものインスタレーションが用意されていました。
Zec監督は、次のように述べています。「バーチャルリアリティなら、紛争地帯のど真ん中にいるとはどういうことなのか、見て聞いて感じることができます。いま、この瞬間にも何百万人もの家族が世界中で苦しんでいるわけですが、その恐れや苦しみも肌で感じることができます。」
現実に近い体験を提供するために
Zec監督と共同製作者のWinslow Turner Porter III世氏は、『Giant』の撮影に現実の俳優を起用しました。DepthKit SDKを使い6Kで撮影したあと、特殊効果や編集、仕上げにはHP Z840ワークステーションでNUKE、FLAME、After Effectsを使用しています。theColourSpaceでDaVinci Resolveによるカラーグレーディングを担当したのはJuan Salvo氏です。Salvo氏は、テクニカル・プロデューサ、フィニシング・アーティスト、デプス・パイプライン・デザイナも兼任し、制作に深く関わっています。
これらの要素は、開発者のJack Caron氏、Todd Bryant氏、Omer Shapira氏、Uros Otasevic氏が、Unreal Engine 4ゲーム・エンジンを使い、リアルタイムにコンポジティングしてまとめあげました。なお、処理は、すべて、NVIDIA Quadro M6000 GPUで高速処理されています。
Salvo氏は、次のように述べています。「VRインストールの場合、アップタイムに神経をとがらせることになります。小さなことでも、。特にサンダンス映画祭で問題は許されません。よって、信頼性の高いプラットフォームが必要なのです。発熱も少なく信頼性が高いQuadroなら万全です。」
VRのためのプラットフォーム
サンダンス映画祭に出展されたVRインスタレーション、『Giant』を支えているのは、Quadro M6000 1個、64GBのRAM、1TBのCrucial SSD、8コアのXeon CPU 2個を搭載したHP Z840ワークステーションが3台です。特製のショー・コントローラ・アプリを使い、この3台をオープン・サウンド・コントロールで同期して、Oculus Riftヘッドマウント・ディスプレイで観るという構成になっています。
Porter氏は次のように述べています。「ワークステーション用のさまざまなカードを使ってフレームレートを調べたのですが、いずれも、45フレーム/秒が限界でした。そして、Quadro M6000を試してみました。これほど速いGPUは見たことがなく、その上万全のVR用プラットフォームなので単なるカード以上の存在です。フレームレートは90フレーム/秒になり、解像度もこれ以上はないというレベルに達しています。」
1月30日(土)まで開催されておりますので、アメリカはユタ州、パークシティにいらっしゃる際は是非お立ち寄りください。