GPUによる機械学習の革新

投稿者: Stephen Jones

機械学習は、最も重要なコンピューティングの発展のひとつです。

機械学習手法の進化により、いま、人工知能の研究が爆発的に進んでいます。そして、優れたアプリケーションやサービスが次々と生まれているのです。

リアルタイムの通訳。自律型ロボット。顔の分析による感情の認識。このほかにも、さまざまな応用が考えられます。

このようなアプリケーションを支える高度なディープ・ニューラル・ネットワークを訓練するには、膨大なコンピューティング・パフォーマンスが必要となります。トレーニングは、超高速のスーパーコンピュータを使っても数日から数週間もかかるため、これは大きな問題です。

だから、機械学習の研究者や開発者は、いま、NVIDIAのTeslaアクセラレーテッド・コンピューティング・プラットフォームとディープラーニング・ソフトウェア開発キット――ディープ・ニューラル・ネットワークを高速化するツールとライブラリのスイート――に熱い視線を注いでいます。

GPUアクセラレーションを採用すれば、CPUのみの場合に比べ、ニューラル・ネットワークのトレーニング速度を10倍から20倍までスピードアップできます。つまり、数日や数週間もかかっていたトレーニング期間を数時間に短縮できるのです。そうなれば、構築するニューラル・ネットワークの大型化や高度化が可能になり、驚くほどインテリジェントな次世代アプリケーションが生みだせるようになります。

大手がこぞって機械学習にGPUを採用

Facebookも、ついに、GPUの採用に踏みきりました。本日、ディープ・ニューラル・ネットワークのトレーニングに特化した次世代システム、“Big Sur”を発表したのです。

NVIDIA Tesla M40
NVIDIA Tesla M40:ディープ・ニューラル・ネットワークのトレーニング用として設計されています。

Big Surには、エンタープライズ・データセンタにおけるディープ・ニューラル・ネットワークのトレーニング用として開発されたNVIDIAの新しいTesla M40 GPUアクセラレータが採用されています。このGPUの採用により、Big Surの速度が従来システムの倍まで高まり、今後は、Facebookがトレーニングできるニューラル・ネットワークの数が倍増します。その結果、アプリケーションのインテリジェンスも精度も急上昇するものと思われます。

また、Facebookでは、パートナー各社と協力してOpen Compute Projectを推進し、Big Surの仕様をオープンソース化しようと考えています。これが実現すれば、他社にとっても、さまざまな種類の機械学習にGPUを活用しやすくなります。

機械学習にGPUを採用する企業はほかにもあります。

先月、コグニティブ・コンピューティング・プラットフォームのWatsonがNVIDIA Tesla K80 GPUアクセラレータをサポートしたとの発表がIBMからありました。

WatsonのPOWERアーキテクチャにGPUを追加すると、検索・ランクのAPI機能が1.7倍に向上しますし、総合的な処理能力は10倍になります。この結果、自然言語処理など、Watsonの主要アプリケーションの機能が大きく向上するものと思われます。

機械学習を進歩させるNVIDIA Deep Learning SDK

機械学習にGPUが急速に普及しているのは、NVIDIAのDeep Learning SDKが登場したからです。これはパワフルなツールとライブラリを集めたスイートで、ディープ・ニューラル・ネットワークのトレーニングを構成するさまざまなブロックが手に入ります。

まずはDIGITS。NVIDIAのディープラーニング用GPUトレーニング・システムです。ネットワークの挙動をリアルタイムに可視化できるので、所有するデータに最適なディープ・ニューラル・ネットワークを短時間で設計することができます。コードを書く必要はありません。

NVIDIAのCUDAディープ・ニューラル・ネットワーク、cuDNNも用意されています。このネットワークのルーチンは最適化されているので、ローレベル・パフォーマンスのチューニングに時間を取られることなく、ニューラル・ネットワークの設計とトレーニングに集中することができます。

このほかにも、cuBLAS、cuSPARSE、NCCL、CUDA Toolkitなど、機械学習の作業負荷に最適化されたライブラリやツールが豊富に用意されています。

ディープラーニング・フレームワークの基礎

NVIDIAのGPUとDeep Learning SDKにより、いま、機械学習が急速に進歩しています。GPUアクセラレーテッドのディープラーニング・フレームワークを構築し、ディープ・ニューラル・ネットワークのトレーニングを行う企業がどんどん増えているのです。

そのようなフレームワークの例にMicrosoftのCNTKフレームワークやGoogleのTensorFlowが挙げられます。いずれも、オープンソース・ソリューションとして公開されています。ディープ・ニューラル・ネットワークの設計やトレーニングにはオープンなフレームワークのCaffeやTheano、Torchなどが広く利用されていますが、その選択肢が増えたわけです。

AI分野は、いま、競争が激化しています。その競争を支えているのが機械学習です。機械学習のエンジンとして、GPUは、今後も、さまざまな分野の産業や研究でイノベーションを実現していくことでしょう。