「人類史上最大のインフラ整備」:ダボス会議でジェンスン フアンが AI の「五層のケーキ」について語る

投稿者: Brian Caulfield

高度な技能をもつ技術者からスタートアップまで、AI の急速な拡大は、コンピューティング プラットフォームの次なる大規模な転換の始まりであり、世界の労働力にとって、タスクから目的への移行を意味します。

スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会の満員のメインステージ セッションで、NVIDIA の創業者/CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) は、人工知能 (AI) は「人類史上最大のインフラ構築」の基盤であり、世界経済全体の雇用創出を促進すると述べました。

BlackRock の CEO、ラリー フィンク (Larry Fink) 氏との対談で、フアンは AI を単一の技術ではなく、エネルギー、チップとコンピューティング インフラ、クラウド データセンター、AI モデル、そして最終的にはアプリケーション層にまで及ぶ「5 層のケーキ」であると説明しました。

AI の 5 層スタックの各層を構築して運用する必要があるため、プラットフォームの移行によってエネルギーや建設から高度な製造、クラウド運用、アプリケーション開発に至るまで、経済全体で雇用が創出されるとフアンは述べました。

アプリケーション層は、AI を金融サービス、ヘルスケア、製造業に統合することに重点を置く可能性があります。「最終的には、この最上位層で経済効果が生まれるでしょう」とフアンは言います。

エネルギー、発電から半導体製造、データセンター建設、クラウド運用に至るまで、AI の導入はすでに高度な技能を要する労働力の需要を生み出しているとフアンは述べます。さらに、最大の経済効果はアプリケーション層からもたらされると付け加えました。AI はヘルスケア、製造業、金融サービスなどの業界を変革し、経済全体の仕事の本質を変えています。

フアンは、AI が世界経済をいかに急速に変革しているかを示す指標として、ベンチャー キャピタル投資を挙げました。

フアンによると、2025 年はベンチャー キャピタルの資金調達が過去最高を記録した年の一つであり、その資金の大部分は「AI ネイティブ企業」と呼ばれる企業に流れ込みます。

これらの企業は、ヘルスケア、ロボティクス、製造業、金融サービスなど多岐にわたります。これらの業界では、「初めて、これらのモデルが基盤として活用できるほど優れたものになった」とフアンは話します。

フアンによると、これらの投資は直接雇用に繋がっているのです。

フアンは、配管工、電気技師、建設作業員、製鉄工、ネットワーク技術者、そして高度な機器の設置、運用を担当する企業のチームへの需要を強調しました。

目的のある仕事

フアンによると、AI は雇用を奪う可能性は低く、むしろ放射線科などの分野で需要を高め、看護など人手不足の影響を受ける分野では事務作業の負担軽減に役立っているといいます。

AI は放射線科における重要なツールとなっているものの、放射線科医の数はかつてないほど増えているとフアンは語ります。「原理から考えれば、放射線科医の数が増えているのは当然のことです」

放射線科医の仕事の目的は病気を診断し、患者を助けることであり、スキャン画像を解析するのは業務のうちのほんのひとつに過ぎないとフアンは説明します。

「放射線科医はスキャン画像を非常に高速に解析できるようになったため、患者と過ごす時間を増やすことができます」とフアンは言い、AI によって患者や他の臨床医との交流が促進されると付け加えました。また、より多くの患者を診察できるようになるため、放射線科医の需要も高まっています。

フアンによると、看護分野でも同様の傾向が見られるといいます。

米国は約 500 万人の看護師不足に直面しており、その一因として、看護師が勤務時間のほぼ半分をカルテ作成と記録に費やしていることが挙げられます。

「今では AI を活用して患者のカルテ作成や診察記録の書き起こしを行うことができます」とフアンは言い、Abridge やそのパートナー企業などの取り組みを例に挙げました。生産性が向上すると、成果も向上すると彼は予想します。

「病院の業績が向上すると、看護師の採用数も増加します」とフアンは述べます。「驚くべきことに、あるいは当然のことながら、AI は生産性を向上させているのです。その結果、病院はより多くの人材を採用したいと考えています」

より広い視点から見ると、自分とフィンク氏が仕事をしている様子などは、「傍目にはおそらく二人ともタイピストと思われることでしょう」とフアンは聴衆を笑わせました。

フアンによると、タイピングを自動化しても彼らの仕事がなくなるわけではありません。なぜなら、タイピングは彼らの目的ではないからで、AI は仕事の補助をすることで人々が目的を達成し、生産性を高め、労働者の価値を高めることができる、といいます。

「そこで、あなたの仕事の目的は何ですか?というのが大きな問いになります」とフアン氏は問いかけます。

スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会 2026 にて、NVIDIA の創業者/ CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) が、BlackRock 会長兼 CEO、ラリー フィンク (Larry Fink) 氏と対談する様子。画像提供:世界経済フォーラム / Thibaut Bouvier

AI を重要インフラとして

フアンは AI を国家にとって不可欠なインフラと位置付けました。「AI はインフラです」と述べ、すべての国が AI を電気や道路のように扱うべきだと主張しました。「AI は各国のインフラの一部であるべきです」

フアンは、各国に対し、現地の言語や文化を活用しながら、独自の AI 能力を構築するよう促しました。「AI を開発し、改良を続け、国家の知性をエコシステムの一部にすべきです」とフアンは主張します。

フィンク氏は、AI を活用し、その恩恵を受けることができるのは、最も教育を受けた人々だけではないのかと問いかけました。これにフアンは反論し、AI の急速な普及は、そのアクセスしやすさに起因することを強調しました。

「AI は非常に使いやすく、歴史上最も使いやすいソフトウェアです」とフアンは述べ、わずか 2~3 年で AI ツールが 10 億人近くに普及したことを指摘しました。

その結果、AI リテラシーが不可欠になりつつあるとフアンは言います。「AI の使い方、つまり、AI をどのように導き、管理し、ガードレールを作り、評価するかを学ぶことが不可欠であることは明らかです」と、フアンはこれらのスキルをリーダーシップや人材管理に例えました。

テクノロジ格差の解消

フアンは、AI は発展途上国にとって、長年の技術格差を縮めるチャンスを提供すると言います。「AI は技術格差を埋める可能性が高い」と、そのアクセスしやすさと豊富さを指摘します。

ヨーロッパに目を向けると、フアンは製造業と産業の強さが大きな強みであると強調しました。「AI は書くものではなく、教えるものなのです」と彼は言い、各国に対し、産業力と人工知能を融合させ、フィジカル AI とロボティクスを解き放つよう促しました。

「ロボティクスは一世代に一度あるかないかの機会です」とフアンは話し、特に強力な産業基盤を持つ国々にとってその重要性は大きいことを説明しました。

フィンク氏は、議論のまとめとして、世界は AI バブルには程遠いことを示唆していると述べ、代わりに別の問いを投げかけました。「私たちは十分な投資をしているのでしょうか?」

フアンもこれに同意し、「AI の上位にあるすべてのレイヤーに必要なインフラを構築する必要がある」ため、大規模な投資が必要だと述べました。この機会は「実に素晴らしいものであり、誰もが関与すべきです」とフアンは説明しました。

フアンは、2025 年は世界のベンチャー キャピタル投資が過去最大の年となり、全世界で 1,000 億ドル以上が投入され、その大半が AI ネイティブのスタートアップに投入されると改めて強調しました。

「これらの企業は、その上のアプリケーション層を構築しています」とフアンは述べ、「この未来を築くには、インフラと投資が必要になります」と続けました。

フィンク氏は、この成長への幅広い参加が不可欠だと付け加えました。

「世界中の年金基金にとって、この AI の世界に参加し、共に成長することは、素晴らしい投資になると信じています」とフィンク氏は述べます。「平均的な年金受給者や平均的な貯蓄者も、この成長の一部となるようにする必要があります。傍観者でいるだけでは、取り残されたと感じてしまうでしょう」

トップ画像:世界経済フォーラム提供