通信業界は数十年にわたり世界の革命的な変化を後押しし、電話やテレビ、オンライン ストリーミング、自動運転車まで、あらゆるものを世に送り出してきました。そして長い間、自らのビジネスで進化を牽引する存在であると考えられてきました。
世界中の通信業界のプロフェッショナル 400 名以上を対象とした最近の調査では、今後の AI 戦略の策定と実行に対する慎重な姿勢が明らかになりました。
通信業界における AI の活用方法や、今後の展望についての全体像をお伝えするために、さまざまな AI トピック、インフラストラクチャへの支出、主なユース ケース、最大の課題、展開モデルに関してアンケート調査を実施し、その結果を NVIDIA 初の「通信事業者における AI 活用状況」調査レポートにまとめました。
調査に協力してくださったのは、携帯電話会社、固定電話会社、ケーブル テレビ会社の経営幹部、マネージャー、開発者、IT アーキテクトなどの方々です。調査は、2022 年 11 月中旬から 2023 年 1 月中旬にかけての 8 週間で実施されました。
AI 活用の意欲に見合った投資が必要
調査結果から、2 つの一貫したテーマが明らかになりました。業界関係者の 73% は AI を、収益拡大やオペレーションおよび持続可能性の強化ツールとして、あるいは顧客維持率を高めるためのツールとして捉えています。5G の収益性に懐疑的な見方がある中で、通信事業者は AI による効率化が、投資を回収するための最も有望な方法であると考えています。
しかし、社内での AI プロジェクトの実施に関する質問では、回答者の 93% が、年間の設備投資額に占める AI への支出の割合はあまりにも少ないと感じているようです。
AI プロジェクトへの支出額をたずねたところ、昨年については約 50% が、一昨年については 60% が 100 万ドル未満であったと回答しています。2022 年に AI に関する支出が 5,000 万ドル以上だったという回答者はわずか 3% です。
こうした慎重な支出の理由はどこにあるのでしょうか。それは、回答者の約 44% が費用対効果を十分に数値化できていないことを挙げており、AI を活用したソリューションの導入をめぐる期待と現実に乖離が見られます。
スキルの高い人材が不足していることや、インフラストラクチャが不十分であることなど、技術的な課題も AI 導入の妨げとなっています。これに続く大きな課題は、回答者の 34% が挙げている、データ サイエンティストの不足です。データ サイエンティストはどの業界でも引く手あまたであるため、通信業界も積極的に人材確保に乗り出す必要があるということでしょう。
また、回答者の 33% が AI プロジェクトの予算不足を挙げており、AI の推奨者は意思決定者と緊密に連携して、説得力のある AI 導入のユースケースを用意できるようにする必要があることもわかります。
同様に、データを使用するテクノロジ ソリューションの場合、データの可用性、取り扱い、プライバシー、セキュリティに関する懸念は、特にデータ プライバシーやデータ レジデンシーに関する世界各地の法律 (GDPR など) の観点から、いずれもしっかりと対処すべき重要な課題として挙げられました。
AI の利用状況
通信業界に在籍する回答者の約 95% が、AI を利用していると述べています。しかし、6 ヶ月以上 AI を利用していると答えたのは 34% にすぎず、23% は AI のさまざまな選択肢について情報収集中であると答えています。18% は AI プロジェクトの試行/パイロット段階であると回答しています。
AI プロジェクトが試行段階または導入段階であると回答した人の過半数が収益とコストの両面でプラスの影響があったと認めています。AI の導入により過去 1 年間に収益が向上したという回答は約 73% に上りました。また 17% は、ビジネスの特定の部分で 10% を超える収益増を実現したと答えています。
同様に、AI の導入により、この 1 年間のコストが削減されたという回答は 80%、ビジネスの特定の部分で 10% を超えるコスト削減を実現したという回答は 15% でした。
AI の利用は広範囲に及ぶ
通信業界は、リソースを AI に投入する場合の最適な領域について、深く多層的な見識を示しています。主な優先事項としては、コスト削減、収益拡大、カスタマー エクスペリエンスの向上、業務効率の創出などが挙げられています。
しかし、導入に関しては、運用効率の向上に焦点を置いた AI が明らかに勝者となっています。5G のような新しい通信ネットワークの複雑なオペレーションは、AI などの新しいソリューションに適しているため、これはある程度予想されたことです。この業界は、あらゆる国で国家の重要なインフラストラクチャに対して責任を負い、50 億以上のカスタマー エンド ポイントをサポートし、そのうえ常に 99% を超える信頼性を確保することが求められています。これまでにも、通信事業者は、ネットワーク運用、基地局の配置計画、トラックルーティングの最適化、機械学習によるデータ分析のために、AI を活用したソリューションを検討してきました。カスタマー エクスペリエンスを向上するために、レコメンデーション エンジン、バーチャル アシスタント、デジタル アバターを採用している事業者もあります。
短期的には、特にパートナーと連携して、さらに効果的な通信インフラストラクチャを構築し、新たな収益機会を創出することに焦点が当てられているようです。
そのノウハウは、初期段階のテスト向けのものから広範な導入に向けたものへと移行していくでしょう。
「通信事業者における AI 活用状況: 2023 年トレンド調査」レポートをダウンロードして、詳しい結果とインサイトをご確認ください。
通信事業者が AI を活用してどのようにオペレーションを最適化し、カスタマー エクスペリエンスを向上させているかをぜひ詳細をご覧ください。