NVIDIA は、コンピューター グラフィックスのエキスパートが一堂に会す世界最大の国際会議である SIGGRAPH 2022 において、リアルタイム 3D デザイン コラボレーションおよび世界シミュレーション プラットフォームである NVIDIA Omniverse を活用しているクリエイターや開発者にとって、重要なアップデートを発表しました。
Omniverse の世界の新たな波はクラウドへの移行です。Omniverse Kit、Nucleus、Audio2Face および Machinima アプリの新機能により、ユーザーは物理的に正確なデジタル ツインやリアルなアバターを開発する能力が向上し、仮想世界の構築と体験のあり方を再定義できます。
Omniverse は、個人、組織を問わず、業界全体にわたって複雑な 3D グラフィックス ワークフローの大幅な加速を可能にします。エンジニアから研究者、アニメーター、デザイナーまで、世界中の Omniverse ユーザーがこのプラットフォームのコア レンダリング、物理、AI テクノロジを使用して、広大な仮想世界やリアルなシミュレーションを構築しています。
Omniverse コミュニティでは、NVIDIA RTX 対応 Studio ノートPC、ワークステーション、OVX サーバーを使用していますが、Omniverse のクラウド移行により、ユーザーは Mac や Chromebook など、RTX 以外のシステムを使用してバーチャルに作業を行えるようになります。
さらに、バーチャル アシスタントやデジタル ヒューマンの構築、カスタマイズを容易にする NVIDIA Omniverse Avatar Cloud Engine (ACE) が、新しい Omniverse Connector およびアプリケーションとともに本日発表されました。
リアルタイムで、現実世界の精度を 3D 仮想世界にもたらす
大きな進歩として、サードパーティー アプリケーション間の接続やコラボレーションを行っている開発者に高速かつ高性能の非破壊的なライブ ワークフローを提供する OmniLive により、Omniverse ユーザーは USD ワークフローにおけるインタラクションや柔軟性を高めることができます。
Live レイヤーではセッションの参加者を把握できるため、チームはオーナーシップの割り当てのほか、コラボレーション セッションの保存、廃棄、一時停止も容易に行うことができます。また、OmniLive により、USD のカスタム バージョンをシームレスにライブシンクすることも可能になり、Omniverse Connector の開発がはるかに容易になります。
Omniverse ユーザーは、リアルな物理シミュレーションのための高度なリアルタイム エンジンである NVIDIA PhysX の最新アップデートにより、AI や産業シミュレーションの新たな波を体験することもできます。
NVIDIA PhysX のアップデートにより、Omniverse ユーザーは世界で最も高度なレベルの物理ソルバーを開発できるようになり、物理法則に従った 3D 仮想世界の構築が可能になります。新機能は、スケーラブルな SDF (Signed Distance Field) シミュレーション、ソフトボディ シミュレーション、布の操作のためのパーティクル クロス シミュレーション、ソフト コンタクト モデルなどです。
Omniverse Kit のその他のアップデートは次のとおりです。
- 合成データ生成改善: これにはトレーニング用シーンの作成に役立つアセットの拡充や、USD/SimReady アセットの拡充によるコンテンツ ライブラリーの改善が含まれます。
- Viewport 2.0: Omniverse Kit をベースとするすべてのアプリケーションのための新しいビューポートです。Viewport 2.0 では、ユーザーはカスタム ユーザー インターフェースを開発したり、複数のビューポートを同時に使用したりすることができます。
- レイアウト ツールの改善: ビューポートにおけるコンテンツの操作性向上を実現しています。ユーザーは、整列、スナップ、ランダム化などの機能を使用して、膨大な量のコンテンツを素早くレイアウトでき、ステージ生成プロセスの改善につながります。
- 新しいレビュー ツール: ユーザーがコラボレーション セッション中に変更を評価し、チーム メンバーに伝えることを可能にします。
- ActionGraph の改善: 新しい「ダイレクト イン ビューポート」ボタンと改善により、ユーザーはアクション グラフだけを使用してビューポート内で直接コンフィギュレーターを構築できます。
Omniverse を拡充する新しい Connector と 3D アセット
Omniverse には、新しいカスタマイズ可能なビューポート、改善されたユーザー インターフェース、強化されたレビュー ツール、無償の 3D アセット ライブラリーのメジャー リリースが新たに含まれています。ユーザーは、いくつかの無償 USD シーンおよびコンテンツ パックを利用して、これまで以上に素早く仮想世界を構築することができます。
また、NVIDIA は、Autodesk Alias、Autodesk Civil 3D、Blender、Open Geospatial Consortium、Siemens JT、SimScale、Unity など、さまざまな新しい Omniverse Connector の開発を進めています。ベータ版として提供される Omniverse Connector は、PTC Creo、SideFX Houdini、Visual Components です。
さらに、パートナーも Omniverse 対応コネクターのアップデートを継続的にリリースしています。
- Maxon の Redshift Hydra Renderer および OTOY の OctaneRender Hydra プラグイン、Omniverse Connector: アーティストやデザイナーが各自のお気に入りのレンダラーを Omniverse 内で直接使用できるようにします。
- Ipolog の スピンオフ企業であるSyncTwin: 産業用デジタル ツインの開発を可能にする、Omniverse 上で構築された新しいツール スイートとサービスを提供します。
- Prevu3D: 3D 点群をデジタル ツイン用の高品質インタラクティブ メッシュに変換するソリューションで、USD のサポートにより、Omniverse でのワークフローが可能になりました。
- Lightning AI: Omniverse Replicator を使用して合成データを生成する機械学習アプリを構築しました。
AI によりアニメーションやアバターが一段とレベルアップ
AI により、Omniverse ユーザーはリアルな顔の特徴と動きを持つ生き生きとした 3D キャラクターを素早く作成できます。
クリエイターは、Omniverse Audio2Face アプリを使用してナレーション トラックをバーチャルにマッチさせることより、3D キャラクターのアニメーション作成を簡素化できます。Audio2Face は、声だけに基づいて顔アニメーションを作成できる AI モデルを搭載しています。最新アップデートにより、ユーザーはアバターの感情の経時的な変化を指示できるようになりました。つまり、クリエイターは喜び、驚き、怒り、悲しみなどの主な感情を容易に組み合わせることができるということです。
Audio2Face のその他のアップデートは次のとおりです。
- Audio2Emotion: オーディオ クリップから感情を推論する AI によってアバター感情制御を自動的に合わせる新機能です。
- フルフェイス アニメーション: Omniverse ユーザーがアバターの皮膚だけでなく、目、歯、舌の動きも指示できるようにすることで、より完全な顔アニメーションを実現します。
- キャラクター設定: Character Transfer リターゲティング ツールは、目、歯、舌を構成するメッシュを定義する使いやすいツールによるフルフェイス アニメーションをサポートしました。
Omniverse Machinima 機能も拡張されています。Machinima アプリの最新アップデートとして、シーケンサー への Audio2Face と Audio2Gesture の統合が挙げられます。これにより、AI を利用したパフォーマンスの再生や編集が容易になります。ポーズ トラッカーの改善と相まって、ユーザーは 1 つのアプリケーションから直接パフォーマンス全体を実行できるようになります。
Omniverse Machinima には、#MadeinMachinima コンテストのパートナーをサポートするために、『Post Scriptum』、『Beyond the Wire』、『Shadow Warrior』からの新しいコンテンツも含まれています。
最後に、Omniverse DeepSearch がOmniverse Enterprise ユーザー提供されるようになりました。これにより、チームで AI の力を利用して、タグなしの巨大なアセット データベースを直感的に検索することが可能になります。DeepSearch は、質的または曖昧な入力での検索においても、正確な結果を提供することで、クリエイターが仮想シーンに最適な外観や照明を開発するのを支援します。
伝説的なスタジオである ILM が DeepSearch を利用して完璧な空を作成する様子をご覧ください。
AI を利用したリアルなデジタル ヒューマンの開発
同じく SIGGRAPH 2022 で発表された Omniverse ACE は、アバター開発を容易にするクラウドベースの AI モデルおよびサービスのコレクションです。
NVIDIA のビジョン AI からスピーチ AI、自然言語処理、Audio2Face、Audio2Emotion までのさまざまなアバター技術を包含しており、すべてがクラウドでアプリケーション プログラミング インターフェースとして動作します。
Omniverse ACE を使用すれば、開発者は、パブリックまたはプライベート クラウドで、ほぼすべてのエンジンにわたってアバター アプリケーションの開発、構成、デプロイが可能です。
Unreal EngineのMetaHuman画像提供:Epic Games
さらなる仮想世界開発のためのより強固な基盤の構築
Omniverse Nucleus は、Omniverse のデータベースおよびコラボレーション エンジンで、さまざまなクライアント アプリケーション、レンダラー、マイクロサービス間における仮想世界の表現の共有や変更を可能にします。
Nucleus の最大のアップデートの 1 つは、新しいヘッドレス シングル サインオン認証です。これは、ユーザーはユーザー インターフェースにアクセスしてログインする必要なくツールを作成したり、タスクを実行したりできるようにする機能です。
Omniverse Nucleus のその他のアップデートは次のとおりです。
- Nucleus Navigator: コンテンツの操作・管理用アプリである Nucleus Navigator は、Omniverse Enterprise に対する NGSearch および DeepSearch のサポートに加えて、検索機能も改善されています。
- Nucleus Cache: データ転送の最適化に使用できるサービスである Nucleus Cache は、バグが修正されたほか、パフォーマンスの向上が含まれています。
Omniverse の実際の動作をご覧ください
NVIDIA のパートナーは、Omniverse の最新機能を SIGGRAPH 2022 で紹介しました。その中には Adobe、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft などのソフトウェアおよびクラウドサービス ベンダーが含まれます。
また、Dell や HP などのパートナーは、オンプレミスまたはハイブリッドの形式で Omniverse を稼働する RTX 対応 NVIDIA-Certified Systems のデモも行われました。
ASUS は MoonShine と協業しています。MoonShineは、台湾を拠点とするアニメーションや仮想制作で知られ、視覚効果に注力する企業です。両社は、NVIDIA Omniverse によってスーパーチャージされる最も包括的な仮想制作ソリューションを SIGGRAPH 2022 で出展しました。
以下のビデオをご覧いただき、ASUS のクリエイター ソリューションと Omniverse によって、どのように業界レベルの制作プロセスを強化できるのかをご覧ください。
そのほかに、NVIDIA のパートナーによる AI や仮想世界などのトピックに関するプレゼンテーションも行われました。SIGGRAPH 2022 での NVIDIA 関連セッションをご覧いただき、上述の画期的なテクノロジについて学ぶことができます。
NVIDIA Omniverse は無料で利用できます。今すぐダウンロードして創作を始めましょう。
Omniverseの最新の発表に関する詳しい情報は、NVIDIA による特別講演、ならびに 『The Art of Collaboration: NVIDIA, Omniverse and GTC』 ドキュメンタリー プレミア をご覧ください。