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富士フイルムがNVIDIA AI DAYS 2022で明かした、未来の画像診断支援AI開発DX

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画像診断の世界的リーダーである富士フイルムは、未来の医療に向けたDX戦略に、NVIDIAのプラットフォームをはじめとする最先端の技術を採用しながら取り組んでいます。2018年には、ヘルスケアや高機能材料等の分野で AI 開発を加速するために日本で初めて NVIDIA DGXシステムを導入しました。また、今年、心臓を撮影するために特化した富士フイルムヘルスケアのソフトウェア、Cardio StillShotにもNVIDIAのテクノロジを初めて採用し、画像再構成の分野を含めて富士フイルムグループ全体でNVIDIAとコラボレーションを進めています。

6月に開催されたNVIDIA AI DAYS 2022では、富士フイルム株式会社 メディカルシステム事業部 マネージャー 兼 富士フイルムホールディングス株式会社 ICT戦略部 マネージャーの越島康介氏が「富士フイルムが目指す未来の画像診断支援AI開発DX」と題して講演を行い、同社の戦略や数々の最新の開発情報を紹介しました。

医療ITシステムで医療課題を解決

高齢化や人口増加による医療費の増大、医療サービスの地域間格差、医師や看護師などの人材不足と過酷な労働環境は、世界各国共通で、切迫した医療課題となっています。富士フイルムは医療ITシステムを通じて医療従事者の負担の軽減を目指しており、その代表例が、病院内の画像データを管理・保管するプラットフォームである医用画像情報システム、PACS※1 (Picture Archiving and Communication System) です。PACS運用前は、X線やCTで撮影された画像はそれぞれ別に活用、保管されていましたが、PACSを使うことで院内のどこからでも閲覧可能になります。PACSや3D画像解析システムを活用することで、アナログだった運用をデジタル化、医療従事者の負担を軽減できます。

越島氏は一例として、ある病院の部門システムの中の情報のデータ量の比率を示しました。PACSに入っている画像の量は64%と圧倒的に多いことがわかります。この膨大な画像データに様々なAIアプリケーションを組み合わせることで新たな価値を生み出すことが可能です。富士フイルムのPACSである「SYNAPSE」は現在世界シェアNo.1であり、このPACSプラットフォームにAIを載せて広く世界中に普及させていくのが富士フイルムの戦略です。PACSに蓄積されている大量の画像データと高度な画像処理技術を掛け合わせて2018年に発表したAI技術ブランドが「REiLI(レイリ)」です。

「医療分野への AI の本格展開」を示すスライド

NVIDIA DGXを活用した診断支援AIプラットフォーム

富士フイルムでは、メディカル事業のDX戦略の一つとして 「顧客体験を変える」ことを掲げていますが、診断において「顧客体験を変える」とは、診断支援AIにより画像診断のトータルワークフローを圧倒的に効率化していくことです。読影医は検査、可視化、検出、分類を行い、最後にレポートをまとめます。これをAI により半自動化します。そして余裕時間を生み出すことができれば、人間にしかできない業務にあてられるようになります。このようにAIでワークフロー全体を支援することで読影効率を飛躍的に上げることができます。診断支援AIプラットフォームは発売から2年半の2021年で170以上の施設に導入され、PACSのシェア拡大にも貢献しました。

医療AI開発においては、高画質化、臓器セグメンテーション、コンピュータ支援診断、ワークフロー効率化の4つの技術ステップで進化を進めています。初めにデータの質を上げて、解剖学的な構造の把握を支援するために区域分けをし、病変の検出・計測を支援し、レポート作成を支援するという流れです。この一連のステップにおけるAIの学習を支えているのが、世界最先端のAIシステムであるNVIDIA DGXシステムです。学習させたAIは次世代AI読影支援プラットフォームや次世代AIレポートプラットフォームにも搭載・活用されています。

「医療 AI 開発における 4 つの技術アプローチ」を示すスライド

可視化、様々な病変の検出、計測・分類、所見レポート作成とワークフロー全体にAIを活用し、画像診断の質向上と効率化をサポートすることが富士フイルムの狙いです。

「最新 AI 開発情報 最終的に目指す姿」を示すスライド

全身の主要臓器のセグメンテーション技術は、ほぼ完成しています。臓器、血管、神経などを自動で抽出し、人体の地図を作ることができます。

「CT 画像に対する臓器認識」を示すスライド

セグメンテーションが難しい臓器である肝臓についても、動脈と静脈を精度良く見分け、区域を機能ごとに領域分割する技術を確立しています。ヘビーユーザーの外科医からも「従来は手作業で40分かかっていた作業が4分で済むようになった」と高評価を受けています。

セグメンテーション後は病変検出を行うAIが実行され、計測が行われ、所見文の候補が生成されます。富士フイルムはこれらを一つのプラットフォームに載せて提供しています。越島氏は画像から病変部分が特定され、サイズが計測され、所見文候補が生成される様子をデモで示しました。

「どの部位にどのような結節が見られるか」といった文章が一定のルールで自動生成されるので、ユーザーからも受け取り側は「どこに何が書かれているのかわかり易い」「記載漏れがない」「区域の記載があるのが助かる」といった声が挙がっています。

富士フイルムは最終的に、CTで全身をスキャンしたら異常アラートを鳴らし、専門医への割り当て、通知、レポート作成などを自動で行えるようにすることを目指しています。

REiLIによる新たな診断支援技術

肺がん向けには「VirtualThinSlice」という技術が開発されています。疾患部分がぼやけてしまう5mm程度の厚いスライスしかない検査でも正確な肺がん診断を行うために、より詳細なThinスライスを再現する技術です。ディープラーニングを使うことで、5mm厚のスライスから0.625mmの薄いスライスへの補完を行うことができます。この処理により結節の視認性が大幅に向上し、より緻密な3次元解剖構造を再現可能になります。

「肺がん診断向け超解像技術」を示すスライド

また、脳解析ソフトウェアも新たな技術として販売しています。画像のなかで強調したい部分をフィルタで色付けして医師に提示します。異変部位を提示することで処置の時間を短縮化できます。

このように、ITシステムに載せるAIや、富士フイルムの内視鏡やX線機器に搭載するAI等、AIを活用した同社の技術は世界中70カ国で販売されています。

また、特徴的な画像所見を確信度スコアとして提示するCOVID-19肺炎画像解析プログラムや、異常所見の可能性をヒートマップで示し、見落としを防ぐ胸部単純X線病変検出ソフトウェアなどのAI技術をデジタルX線撮影機器と軽量移動型撮影装置の組み合わせに実装したり、携帯型X線撮影装置に搭載することですることで、COVID-19スクリーニングや結核スクリーニングに活用されています。機器の画面のなかでAIが動いて疾患部位が特定されるので、その場で診断支援が可能になります。

クラウド上のNVIDIA GPUがAIの民主化を支える、「SYNAPSE Creative Space」

もう一つのメディカル事業のDX戦略として富士フイルムが掲げるのが 「ビジネスモデルを変える」ことです。希少疾患に対するAI技術の開発を進めるためには、社会全体でAI開発のハードルを下げるインフラやエコシステムが必要です。主要疾患には企業も技術力を投入できますが、希少疾患に対しては企業だけではやりきれない部分があるのが現実だからです。そこで富士フイルムではビジネスモデルとしてオープン戦略をとり、AI開発プラットフォームを外部に提供して、開発を医師にアウトソース化しています。技術ができれば企業が引き取ってプラットフォームに搭載し、社会実装を行うという考え方です。

それが2022年4月から試験サービスを行なっているクラウド型AI技術開発支援サービス「SYNAPSE Creative Space」です。プロジェクト管理、アノテーションツール、学習プラットフォーム、AI実行の環境を全てそろえ、プログラミングの知識がなくてもAI開発ができるというものであり、「AIの民主化」を目指します。

ダッシュボード、アノテーションワークリスト、学習状況管理ビュー、学習エンジン、実行ビューワなどから構成され、オールインワンでAI開発がサポートされています。複数人数でのプロジェクトや、リモートでの協働研究にも対応可能です。アノテーションも医師が使い慣れている読影ビューワベースのため使いやすく、学習済みモデルを新規画像に対する候補アノテーションのガイダンスとして使用することで効率化できます。またさまざまな階層の情報を構造化したアノテーションとして付与し、画像と一緒に学習させることができます。この学習エンジンには、Azureのクラウド上のNVIDIA GPUを活用することで、あらゆるAIのトレーニングを加速し、開発から運用までの時間を短縮しています。

「SYNAPSE Creative Space のサービス全体像」を示すスライド

「SYNAPSE Creative Space」は、最初は国立がん研究センターと共同開発して発表しました。今後は骨転移の自動検出や原発性脳腫瘍のセグメンテーションなどを社会実装の実例として進めます。将来的には医療AIの研究開発の民主化を推進するために、放射線画像以外、すなわち内視鏡画像やDICOM以外の画像への対応、複数タスクの組み合わせによるモデル構築も進めます。医療従事者の教育課程での学習教材としての活用も視野に入れています。

越島氏は実際に原発性肺がんのCADを作るというAI開発の流れを、プロジェクト作成から学習データの追加など一連のフローをデモしながら解説しました。学習のためにGPUを使うスケジュールなども設定できるため、複数の人のプロジェクト管理も容易です。前述のように、最初は少量データで学習させ、それを元にアノテーションを進めていくこともできるため、効率的な開発が可能です。

治療支援、画像診断、診療支援の3つのAI開発に注力

最後に越島氏は「富士フイルムは医療画像診断AI技術、世界シェアNo.1のPACS、先進医療機器サービスのラインナップの3つを掛け合わせることで医療アクセスの向上を実現し、社会課題の解決に貢献したいと考えている」と述べました。2030年度までには全ての国と地域に同社の医療AI技術活用サービス、製品を導入し、医療アクセスの向上を実現することが目標です。

また、AI開発においては、「今後も治療支援、画像診断、診療支援の3つを進めます。あらゆる疾患に対して最適な治療を提供し、早期診断による治療のコスト・負荷を抑制し、ワークフローを自動化することでミスのない高品質な医療の実現を目指します。」と締めくくりました。

※画像提供:富士フイルム


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