パンデミックによる人手不足と資材不足、および急激なインフレにより、企業は物流の再考を余儀なくされており、店舗、倉庫、ルート全体に新しいソリューションを構築するために NVIDIA AI の力を活用

グローバル サプライチェーンはもはや、目新しい話題ではないのかもしれません。しかし、世界中の家庭や企業では今なお、大きなトピックとして取り上げられます。空きの目立つ棚、記録的な値上げ、船の出入りのない港、罹患したトラック運転手。こうしたことが至る所で混乱を引き起こしています。

エンド ユーザーに製品やサービスを提供するために資材を用意している企業では、これほど多くの未確定要素に悩まされることはこれまでなかったと感じています。樹脂やアルミニウムから塗料や半導体に至るまで、原材料の不足は過去最高水準に近づいています。製品を実際に製造しても、最終目的地に配送するコンテナや労働者、トラックの運転手が不足しているため、貨物船や倉庫に置かれたままになっています。そして、消費者の家計や給料は、価格の上昇に圧迫されています。

9 兆ドル規模にのぼる物流業界では、オートメーション（自動化）への投資や AI、 およびビッグ データの利用により、サプライチェーン全体にわたる知見を得ることで現状に対処しています。分析会社の PitchBook Data Inc. によると、サプライチェーン技術のスタートアップ企業に多額の資金が注ぎ込まれており、2021 年の第 1 四半期から第 3 四半期の間にベンチャー基金を 243 億ドルも集めています。これは 2020 年の通年の合計額を 58% 上回る額です。

AI への投資

これらの投資の背景には、企業がテクノロジやアクセラレーテッド コンピューティングをより強固な基盤を見つけるための鍵と考えているということがあります。ラスベガスで開催されている物流およびサプライチェーン会議、Manifest 2022 で、物流業界は AI と機械学習を使用してサプライチェーンを改善し、コスト効率を高める方法を議題に取り上げています。参加者は、労働力不足への対応、配送センターのスループットの向上、配送ルートの効率化などを目標に挙げています。

箱入りシリアルを例に取ると、倉庫から家庭への配送にかかる料金がかつてないほど高くなっています。倉庫や配送センターでの従業員の離職率は 30% から 46% に上がっていますが、問題はそれだけではありません。

この苦況を軽減するために、世界的なマテリアルハンドリング会社である Dematic は、Kinetic Vision など複数の企業のソフトウェアの評価を進めています。Kinetic Visionは、自動倉庫システムにインテリジェンスをもたらすコンピューター ビジョン アプリケーションをNVIDIA AI プラットフォーム上で開発しています。

Kinetic Vision や SF Technology などの企業は、カメラで撮影した動画データを使用してパッケージ商品のライフサイクルの各工程を最適化することにより、スループットを最大 20% 加速し、小売業者へのコストの負担額が 1 分あたり 3,000 ～ 5,000 ドルにもなるというコンベアのダウンタイムを削減しています。

Gideon、6 River Systems、Symbotic などの自律動作ロボット企業も、NVIDIA AI プラットフォームを利用して倉庫や配送センター内で資材を効率的に運搬する無人搬送車によって配送センターのスループットを向上させています。

また、クラウド経由で分散エッジ インフラストラクチャ全体で AI アプリケーションを安全に展開、管理、拡張する NVIDIA Fleet Command を利用すれば、これらのソリューションをリモートで安全に導入して管理でき、数百の流通センターに大規模に展開できます。

デジタル ツインとシミュレーション

店舗や配送センターのレイアウトを改善することも、コスト効率向上の鍵になっています。仮想世界シミュレーションと 3D デザイン コラボレーション プラットフォームである NVIDIA Omniverse を利用すると、流通センターをバーチャルで設計して完全に忠実にシミュレートできます。フォトリアリスティックで物理的に正確な仮想環境により、ユーザーはワークフローとスループットを向上させることができます。

例えば、小売業者は Omniverse プラットフォームでソリューションを開発して、配送センターのデジタル ツインで原材料や従業員のプロセスの流れを設計、テスト、シミュレートした上で、それらを最適化して現実の世界に投影させることができます。

デジタル ヒューマン シミュレーションを使って新しいワークフローをテストすれば、従業員の負担を軽減して生産性を向上できます。また、ロボットのトレーニングや操作は NVIDIA Isaac ロボティクス プラットフォームで行うことができ、最も効率の高いレイアウトとワークフローが作成されます。

Kinetic Vision は、NVIDIA Omniverse を利用して、工場や、小売および消費者向けパッケージ商品の流通センターを最適化するためのデジタル ツイン テクノロジとシミュレーションを提供しています。

頼りになる AI

メーカー、サプライチェーン オペレーター、小売業者はそれぞれ、独自のアプローチを用いて課題解決に取り組んでいますが、同時に AI を主要な差別化のポイントと位置づけ、AI に頼っています。

McKinseyによると、AI を早くから採用した企業は AI 対応のサプライチェーン管理の実装に成功し、遅れを取った競合他社と比較して、物流コストを 15%、在庫水準を 35%、サービス水準を 65% 向上させることができました。

グローバル サプライチェーンは少なくとも 2023 年まで正常な状態にもどらないと予測する専門家もいます。そのため、企業は何よりも最終収益を重視した対策を講じようとしています。

サプライチェーンや物流業界向けの最新 AI ソリューションに NVIDIA AI がどのように役立っているかについての詳細は、Manifest 2022 での講演で語られました。