AI が新しい商用車の形を生み出す

by Katie Burke · March 15, 2021

メーカーは NVIDIA DRIVE を利用して、より安全で効率的な配送と物流を実現

「自動運転車」というと、車が自分で運転する姿をイメージする人は多いと思います。しかし、この「自動、自律」という概念は、個人の移動手段に留まらずさまざまなものに変革をもたらしています。

自動運転トラックとは、AI を利用して、配送拠点でのオペレーションから長距離輸送に至るまでのあらゆる業務を自動化する商用車です。配送の需要の増加とドライバー不足によって業界が重圧を抱えていることに加え、高速道路などのカーブが少ない道路での運用が現実味を帯びてきたことで、このようなインテリジェントなトラックは、初の自動運転車両として公道に大規模展開できる可能性を秘めています。

このテクノロジでは、長距離の高解像度センサーや、さまざまなディープニューラルネットワーク、高性能でエネルギー効率の高いコンピューティングを使用することにより、日常のロジスティクスにおける安全性や効率性が向上します。

e コマースや翌日配送の増加により、トラック輸送は世界を前進させる上でますます重要な役割を果たしています。アメリカの専門家による推定では、全貨物の 70% 以上がトラック輸送であり、食料品店やガソリンスタンドなどの最も重要な事業では、トラックがなければ数日以内に物資が不足するとのことです。

ドライバー不足が加速するにつれ、この傾向が真実味を帯びてきます。全米トラック協会の報告によると、トラック業界は過去15年間もドライバーの確保に苦労しているとのことです。同協会では、この傾向がさらに続く場合、2028 年までに 16 万人のドライバーがトラック業界に必要になるだろうと推定しています。さらに、ドライバーに課せられる連続運転可能時間の制限も、トラック輸送のオペレーションに重くのしかかってきます。

自動運転では、ドライバーの労力を減らして24時間稼働を実現できるため、トラック需要による負担が軽減し、効率性が向上します。実際、自動運転トラックのスタートアップ企業である TuSimple と米国郵便公社が最近実施した試験運用では、自動運転トラックがハブからハブへのルートで予定より早く到着したことが繰り返し実証されました。

また、自動運転トラックはハブからハブへのルートでは、フェンスで囲まれたエリアや高速道路に制限されているため、自動運転トラックのほとんどは、都市部の交通や近くを走る車両などの問題に対処する必要がないため、障害物を気にすることなく大規模展開が可能です。

この画期的な開発を可能にした要素の 1 つに、NVIDIA DRIVE プラットフォームなどの中央集中型のハイパフォーマンスコンピューティングがあります。この自動運転トラックには冗長性、多様性の高いディープニューラルネットワークを処理する機能が搭載され、人間による監視を必要とせずに運用することができます。今後数年間で配送やロジスティクスに革命を起こすことになるでしょう。

長距離輸送を実現する拡張可能なソリューション

自動運転は拡張可能なテクノロジです。米国自動車技術者協会 (SAE) によるカテゴリごとの定義では、ドライバーによる制御がまだ必要なアシスト運転 (レベル 2) や、人間の監視が不要の完全自動運転 (レベル 4 / レベル 5) などとなっています。AI コンピューティングは、自動運転ソフトウェアの機能に合わせて拡張することができるのです。

さらに、こうしたシステムはトラック輸送の過酷な環境に対応できなければなりません。平均的なマイカー利用者は年間約 13,500 マイルを運転するのに対し、トラック運転手は平均で、年間 10万マイルもの距離を運転します。

NVIDIA DRIVE は、トラックの長距離移動による摩耗に耐えるように設計されている一方で、レベル 2 の AI 運転支援から完全運転自動化まで簡単に拡張できる唯一のソリューションです。

この汎用性と耐久性は今日、すでに開発中です。Locomation をはじめとする企業は、1 人のドライバーが先頭のトラックを運転し、後続の完全自動運転トラックが縦に並んで付いていく、隊列走行のパイロットに、このコンピューティングプラットフォームを活用しています。トラックメーカーの FAW とスタートアップ企業の PlusAI は、自動運転トラックの大規模な車列走行を共同で開発しています。TuSimple は自社の車列走行の開発に NVIDIA DRIVE を利用しています。

公道への展開

自動運転技術は、現在のトラック輸送における慣行を改善するだけでなく、業界にまったく新しい可能性を開いています。

世界最大手のトラックメーカーである Volvo Group は、NVIDIA DRIVE を活用して、公共交通機関、貨物輸送、ごみやリサイクル品の収集、建設、採掘、林業などを対象に、自動運転 AI 車両のトレーニング、テスト、導入を進めています。

同社は「Vera」というパイロット運用中のトラックを使用して、配送拠点内や工業道路上でのキャブレス車両のオペレーションも視野に入れています。

自動運転トラックのスタートアップ企業である Einride も、キャブレス車両の開発に取り組んでいます。同社は最近、NVIDIA DRIVE AGX Orin を搭載した、次世代のトラック「Pod」を発表しました。この未来型の電気輸送車は、限定施設内でのオペレーションから、裏道や高速道路での完全自動運転にまで対応することができます。