NVIDIA の創業者/CEO であるジェンスン フアン (Jensen Huang) は、先日の Mellanox の買収完了に伴い、新たに加わった従業員に向けて次のようなメッセージを送りました。
皆さん、こんにちは、
皆さんとそのご家族が、このような未曾有の状況に健康かつ安全であることをお祈りしています。
昨年 3 月 11 日、NVIDIA はハイパフォーマンス ネットワーキングにおける世界的リーダーである Mellanox の買収計画を発表しましたが、先週中国の認可が下りたことで、米国、EU、メキシコをはじめとするすべての管轄規制当局から両社の統合に対する承認が得られました。そして米国時間の2020 年 4 月 27 日をもって、NVIDIA と Mellanox が正式に 1 つの会社となることをお知らせでき大変嬉しく感じています。
Mellanox が NVIDIA のネットワーキング ブランドおよびネットワーキング事業部門として加わり、イスラエルが 2,500 名の従業員を擁する NVIDIA の最重要技術拠点の 1 つとなります。これにより、新生 NVIDIA は、データセンター コンピューティングにおける市場シェアを大幅に拡大し、データセンター アーキテクチャに関するエンドツーエンドおよびフルスタックの専門知識を手に入れ、イノベーションを加速する驚異的なスケールを獲得しました。今後、両社の優れた強みを融合させ、データセンターの強化を進めていきます。
この旅の出発点は 2018 年 11 月 18 日、SC18 で私が滞在したホテルの部屋でした。エヤル(Eyal Waldman, CEO & President of Mellanox Technologies)と私がダラスのリッツカールトン ホテルで朝 7 時に朝食ミーティングを行った際、彼から「Mellanox の買収に複数の企業が興味を示しているが、NVIDIA も入札に加わらないか」と話があったのです。私は、Mellanox を企業としても、技術面でも、製品面でも、戦略的位置づけにおいても敬愛していると伝えました。私たちはそれまでも多くのスーパーコンピューターや AI システムの開発で提携してきました。「Mellanox は素晴らしい企業だ」と私はエヤルに言いました。彼はさらに 1 時間かけて、「Mellanox が素晴らしい企業である」ことを私に語って聞かせ、私もそれに同意しました。彼は Mellanox に並々ならぬ誇りを持っていますが、それは当然のことです。会話の終わりに私はこう伝えました。「NVIDIA は最後にして最高の入札者になるだろう」と。入札は熾烈なものでしたが、NVIDIA は宣言どおり最高入札者となったのです。
NVIDIA と Mellanox は理想的な組み合わせです。その一番の理由は、両社がハイパフォーマンス コンピューティングに深い関心を寄せていることです。そして、両社ともパフォーマンスとテクノロジにおいてリーダーシップをとる体制を確立しています。NVIDIA が最新の「Top500」にランクインした最先端のスーパーコンピューターの半数を高速化させている一方で、Mellanox はトップ 10 のスーパーコンピューターのうち 6 つでネットワーキングを担っています。NVIDIA がコンピューティングを 10 ~ 50 倍高速化させると、データの転送がボトルネックとなります。アムダールの法則です。つまり、Mellanox と NVIDIA は互いの技術を高め合うことができるのです。
大局的な理由としては、データセンターの未来が再形成され、両社の強みが高まりつつあることが挙げられます。これまでのクラウド データセンターのアーキテクチャは「ハイパーコンバージド インフラ」と呼ばれ、CPU サーバーにストレージ機能が統合されていて、大規模データセンターへと “スケールアウト” されます。クラウド コンピューティングは誕生とともに業界に一大変革をもたらしましたが、現在は AI が「ハイパーコンバージド インフラ」から「Accelerated-Disaggregated (加速分離型) インフラ」へのアーキテクチャの変化を後押ししています。NVIDIA と Mellanox はこの変化の中心にいます。
AI は現代における最も強力な技術力であり、データセンターのアーキテクチャを再構築するまったく新しいコンピューティング モデルです。AI はきわめて膨大なコンピューティング リソースとデータを必要とします。汎用コンピューティング向けに設計された CPU では効率的にワークロードを処理できないことから、AI アルゴリズムの処理を高速化させるために NVIDIA が使われ、データの処理とネットワーキングを高速化させるために Mellanox が使われています。こうして、データセンターが高速化されているのです。
同時に、Kubernetes のようなデータセンター規模のワークロード オーケストレーション プラットフォームの急速な普及が、ソフトウェア開発やデータセンターの運用を大きく変えつつあります。アプリケーションやサービスがより小規模に実行可能なコンテナーへと分解され、データセンター全体で利用可能なサーバーへと展開されています。サービスによって各ワークロードを処理するのに最適な種類と数のコンピューティング要素を備えたインフラストラクチャを動的に構成することが可能になったことで、もはや大規模なモノリシック アプリケーションによってコンピューターが停止したり、アイドル状態になったりすることはありません。データセンターの稼働率、スループット、運用のしやすさやコストのすべてが改善されているのです。
データセンターは今や構成可能なコンピューターになっています。データセンターのコンピューティング要素が分解され、すなわち、CPU サーバー、GPU サーバー、ストレージ サーバーが分離され、独立してスケーリングしています。データセンターにとって、それらのコンピューティング要素をつなぐ Mellanox のネットワーキング ファブリックの重要性が非常に高まっています。
こうした両社の事業の成長は、高速なコンピューティングとネットワーキングに対するニーズを反映したものです。1 年前に買収を発表した時点での Mellanox の四半期収入は 3 億 500 万ドルでしたが、その後 4 四半期連続で過去最高を記録し、41% 増となる 4 億 2,900 万ドルの四半期収入を発表したばかりです。一方、NVIDIA のデータセンター事業もまさにその期間、6 億 8,000 万ドルから昨四半期には 10 億ドルに迫る勢いで成長し、同じく 40% 超の増収を果たしました。もっとも、これは単なる始まりにすぎません。
自然言語理解、会話型 AI、ディープ レコメンデーション システムにおけるブレークスルーが、AI の複雑さを新たなレベルへと押し上げています。こうしたモデルは複雑で、データ集約度は指数関数的に増加しています。そして、よりスマートな予測とより迅速な対応を求める絶え間ない追及が、コンピューティングの需要を高めています。
この新しい世界では、AI コンピューティング、ネットワーキング、データ処理がますます重要になっています。新たな未来を創造する深い専門知識と卓越した能力を併せ持つ NVIDIA と Mellanox は、まさに夢のチームの組み合わせといえるでしょう。
最速のコンピューティングと最速のネットワーキングが手を取り合う。それこそが、NVIDIA が DGX AI システムに Mellanox を選んだ理由です。Mellanox のスイッチやネットワーキング ファブリックが、NVIDIA 独自の研究用 AI スーパーコンピューターをつなぎ、Mellanox のデータ処理チップが、NVIDIA の EGX エッジ AI および 5G プラットフォームや AGX 自動運転車用コンピューターのネットワーキング、ストレージ、セキュリティを担います。
Mellanox のワールドクラスの皆さんとともに働けることはこの上ない喜びです。この 1 年間皆さんをより深く知ることができ、会社としても、技術面でも、製品面でも、戦略的位置づけにおいても、より一層 Mellanox を愛するようになりました。エヤルや経営陣をはじめ、Mellanox のすべての人々が本当に素晴らしい企業を築かれたと感じております。
私たちは 1 つのファミリーとなり、共に未来を創造できることを大いに期待しています。
NVIDIA の親愛なる家族として皆さまを心から歓迎いたします。
ジェンスン