金融詐欺が増えています。世界的な取引の数が伸び、デジタル技術が進歩するにつれて、企てられる詐欺の複雑さと頻度も増加の一途をたどっています。
セキュリティ企業である McAfee は 2018 年のレポートで、サイバー犯罪が世界経済にもたらす損失額は年間約 6,000 億ドル、世界の GDP の 0.8% に上ると試算しています。
サイバー犯罪の中でも横行している (そして回避可能な) ものの 1 つがクレジット カード詐欺で、オンライン取引の普及に伴い悪化傾向にあります。
これを受け、世界的金融サービス企業である American Express は、不正な取引を防ぐディープラーニングの生成モデルと時系列モデルの開発を進めています。
American Express の機械学習研究担当バイス プレジデントであるドミトリー エフィモフ (Dmitry Efimov) 氏は、次のように述べています。「当社にとって最も戦略的に重要なユース ケースは、トランザクション詐欺の検出です。より正確に不正な購入手続きを発見し拒否するための手法を開発することで、顧客と販売業者の保護に役立てたいと考えています。」
ビッグデータへの投資
同社の取り組みは複数のチームに渡り、GAN (敵対的生成ネットワーク) を使用して、データ量の少ないセグメントから合成データを生成する研究が行われました。
金融詐欺に関するユース ケースでは、機械学習システムが過去の取引データに基づいて構築されることがほとんどです。それらのシステムではディープラーニング モデルを使用して、受信した支払いをリアルタイムでスキャンし、不正取引に関連するパターンを特定し、異常を検出します。
新製品の発表のように、GAN は追加のデータを生成して、より正確なディープラーニング モデルのトレーニングと開発に役立つ場合があります。
数千万もの顧客と販売業者から成るグローバル統合ネットワークを抱える American Express では、大量の構造化データと非構造化データを処理しています。
取引データのタイム スタンプをはじめ、数百のデータ機能を使用して、 American Express のチームは、LSTM や時系列畳み込みネットワークなどの時系列に基づくディープラーニング手法を取引データに適応させることで、従来の機械学習アプローチよりも優れた結果を生み出せることを発見しました。
同社の取り組みはこうして実を結びます。
「これらの手法は、顧客体験に大きな影響を与え、American Express は意思決定プロセスを自動化することにより、検出スピードを向上させ、損害を防ぐことができます」と、エフィモフ氏は言います。
NVIDIA の GPU で取引を締結
American Express は、大量の顧客と販売業者のデータを処理するために、8 基の NVIDIA V100 Tensor コア GPU を搭載した NVIDIA DGX-1 システムを採用し、TensorFlow と PyTorch の両ソフトウェアを使ってモデルを構築することにしました。
NVIDIA の GPU を利用した同社の機械学習手法は、顧客の債務不履行率の予測や信用限度額の設定にも使われています。
「当社の実稼働環境では、スピードがきわめて重視され、数ミリ秒での意思決定を行う必要があるため、NVIDIA の GPU を採用することが最善の解決策となるわけです。」 (エフィモフ氏)
来年にはこのシステムの運用が開始されることから、同社のチームは、NVIDIA TensorRT プラットフォームを利用してハイパフォーマンスのディープラーニング推論を実現し、モデルをリアルタイムで展開できるようにする計画です。これにより、American Express の詐欺や信用損失率が改善されます。
エフィモフ氏は、来る 3 月にカリフォルニア州サンノゼで開催される GPU Technology Conference (GTC) で、チームの活動を発表する予定です。American Express の信用リスク管理に関するユース ケースの詳細について学ぶために、GTC に登録してください。この世界最大級の AI カンファレンスでは、業界を越えたコンピューティングの主要なテーマに関する洞察やトレーニングのほか、専門家と直接交流できる機会も提供します。