ユーリヒ総合研究機構が、高性能な NVIDIA GPU による高速化によって、JUWELS スーパーコンピューティング システムを強化
長年にわたってヨーロッパの高性能コンピューティングの正統としての地位を守っているユーリヒ総合研究機構が、その王冠に新たな宝石を加えようとしています。
ドイツ語で Forschungszentrum Jülich として知られている、このセンターが、JUWELS という名称のスーパーコンピューティング システムを、ブースター モジュールによって増強しようとしています。スケーラブルなワークロードに対して最高のアプリケーション性能で対処するために設計された、このシステムは来年導入される予定です。
Atos、Mellanox、ParTec および NVIDIA が共同開発したブースター モジュールは、数千の GPU が搭載され、完全に統合されると、演算ピーク性能が現在の 12 PFLOPS レベルから、70 PFLOPS 以上と大幅に向上するものと予想されています。
ブロック単位での HPC システム構築
初期の JUWELS スーパーコンピューターは、モジュラー スーパーコンピューティング アーキテクチャにもとづいて構築されました。昨年運用を開始したシステムの最初のモジュールは、当初より複数の補完モジュールを追加する設計になっていました。
HPC およびハイ パフォーマンス データ アナリティクスのシステムを構築するための、この革新的な方法は、ビルディング ブロックの原理にもとづいています。つまり、それぞれのモジュールは、具体的なアプリケーション グループのニーズを満たすように構築されます。その後、モジュールが必要に応じて共通のシステム ソフトウェア レイヤを使って動的に組み合わされます。
ユーリヒ総合研究機構のディレクターであるトーマス リッペル (Thomas Lippert) 氏は、次のように述べています。
「モジュール式 スーパーコンピューティング アーキテクチャは、最高のテクノロジを、妥協することなく、柔軟に組み込むことを可能にします」
最新世代の NVIDIA GPU に Mellanox の 200 Gb/s HDR InfiniBand を組み合わせた、新しいブースター モジュールは、JUWELS のクラスタとしては、これまでで最大規模となっています。このブースター モジュールには、大規模なシミュレーションと機械学習のワークロードのために、帯域幅と浮動小数点処理を最適化したアーキテクチャが備えられています。
より多くのブレイン パワーを
このブースターが貢献するイニシアティブの 1 つにヒューマン ブレイン プロジェクトがあります。このフラッグシップ プロジェクトはユーリヒ総合研究機構神経科学医学研究所の脳科学者であるカトリン アムンツ (Katrin Amunts) 氏が主導し、ヨーロッパの 130 以上の大学、教育病院および研究センターの 500 人以上の科学者を連携させるというものです。
2013 年に欧州委員会が設立したこのプロジェクトは、神経科学、医学および最新の情報テクノロジのための欧州の統一的なテクノロジ プラットフォームを構築することを目的としており、それにはスーパーコンピューティングが欠かせません。
このプロジェクトのサイエンティストたちは、脳とその疾病について書かれたデータを、かつてない規模で収集、整理および共有しています。これらすべてのデータを一元化するために、ユーリヒのチームと各国の協力者たちは、これまでで最も詳細な脳地図を作ろうとしています。これは簡単な仕事ではありません。ヒトの脳は、およそ 860 億のニューロンと 100 兆の接続部分があり、人間の知る最も複雑なシステムの 1 つとなっています。
サイエンティストたちは、極薄の組織学的脳切片の画像数千枚を分析することで、この課題を解決しようとしています。JUWELS のクラスタを使って、このような脳切片を 3D のコンピューター モデルに再構築する方法で、メモリと性能のボトルネックの多くを解消することが可能になっています。
気候変動を解明する
新しいJUWELS ブースターは、地球のエコシステムにとって最大のリスクである、気候変動を引き起こすプロセスについての洞察を得ることも可能にしつつあります。
ユーリヒの「気候科学シミュレーション ラボラトリ」では、地球のシステムの数値モデリングで JUWELS をすでに使用しているサイエンティストたちのコミュニティを支援しています。研究者たちが 21 世紀のこの大きな課題に取り組む際、ブースターはその効率性の向上に貢献するでしょう。