今週、Tesla の投資家向けのイベント「Tesla Autonomy Day」で、自社の新たな自動運転車向けコンピューターのスペックを公開したイーロン・マスク (Elon Musk) 氏が、世界に向けて、以下の内容を明らかにしました。
- Tesla は、他のすべての自動車メーカーの水準を引き上げる。
- Tesla の自動運転車には、同社の新しい AI チップのうちの 2 つを活用したコンピューターが搭載され、そのそれぞれに CPU、GPU およびディープラーニング アクセラレーターが実装される。このコンピューターは、1 秒当たり 144 兆回 (144 Trillion Operations Per Second= TOPS) の演算能力を持ち、さまざまなサラウンド カメラ、レーダーおよび超音波機器からデータを収集して、ディープ ニューラル ネットワーク アルゴリズムを実行する。
- たとえ 144 TOPS の演算能力があっても十分とは言えないため、Tesla では、次世代チップの開発に取り組んでいる。
NVIDIA では、Tesla が繰り返し示してきた、自動運転車には圧倒的な性能を持ったコンピューターが必要である、というビジョンを長きにわたって支持してきました。
このことはまさに、NVIDIAが数年前に NVIDIA Xavier SoC の設計および構築を行った動機ともなっています。Xavier プロセッサには、プログラム可能な CPU、GPU およびディープラーニング アクセラレーターが実装されており、30 TOPS の演算能力が備わっています。また、NVIDIA は、2 つのチップ ソリューションをベースとして DRIVE AGX Pegasus と呼ばれる車載コンピューターを作り、Xavier をパワフルな GPU と組み合わせることで 160 TOPS の演算能力を実現し、さらにDRIVE AGX Pegasusにそれらを 2 セット搭載することで、演算能力を合計 320 TOPS にしました。
1 年前に発表したように、NVIDIAは、状況を傍観しているわけではありません。次世代プロセッサの 「Orin」 が登場します。
マスク氏が NVIDIA を Tesla の比較対象としているのには、そのような理由があるのです。つまり、1 秒当たり数兆回の演算能力を実現する必要があるという観点からこの問題に取り組んでいるのは、Tesla を除けば NVIDIA だけなのです。
しかし、この問題の解決にはスーパーコンピュータークラスのシステムが必要であるというマスク氏の構想には同意するものの、NVIDIAとしては、Tesla の Autonomy Day におけるプレゼンテーションには、いくつか不正確な点があり、それを修正する必要があるとも考えています。
Tesla の 2 チップ型 Full Self Driving コンピューター (FSDC) の性能を NVIDIA のシングルチップのドライバー支援システムと比較するのは、あまり適切ではありません。144 TOP の演算能力を持つ、Tesla の 2 チップ型 FSDC の比較対象とすべきは、320 TOPS の演算能力で AI による知覚、位置推定および経路計画を可能にする、NVIDIA DRIVE AGX Pegasus コンピューターであるべきです。
また、Xavier が 30 TOPS の処理能力を持っているのですが、Tesla は処理能力が 21 TOPS だと誤った声明をしています。さらに、単一の Xavier プロセッサを搭載したシステムは、完全自動運転ではなく、運転支援の AutoPilot を想定して設計されています。Tesla が主張するように、自動運転には、それよりはるか高い演算能力が必要となります。
ただし、Tesla は、もっとも重大な問題に対しては正しい認識を持っています。自動運転車は、新しい次元の安全、効率性および便利さを生み出すために不可欠なものであり、業界の未来であるという点です。もちろん、そのためには、極めて高い演算性能が必要となります。
実際、Tesla では、このようなアプローチが業界の未来にとって重要であると考えており、同社の未来もそれにかかっています。これによって、将来が左右されるのです。他のすべての自動車メーカーも、このレベルの性能を実現しなければならなくなるでしょう。
このような AI コンピューティングのパワーを得られるところは、2 社しかありません。NVIDIA と Tesla です。
そして、業界が活用できるオープンなプラットフォームを提供しているのは、そのうちの 1 社しかありません。