ロボティクスの急発展: NVIDIA Isaac SDK が自律動作マシンに最新の AIをもたらす

by Claire Delaunay · March 26, 2019

Isaac アプリケーション、GEM、Robot Engine および Sim といった、ロボティクス開発者向けのツールボックスを一般向けに広く提供開始

ロボティクスの開発者たちによる、未来の自律動作マシンの開発競争が始まっています。

NVIDIA は、イノベーションと開発を加速させる、無料のロボティクス開発者向けツールボックスであるNVIDIA Isaac SDK をまもなく一般向けに提供することで、開発者たちの努力を後押しします。

NVIDIA の創業者/CEO のジェンスンフアン (Jensen Huang) は、GPU Technology Conference において多くの観客の前でこのニュースを発表しました。

ロボットの製作は、長い間困難を伴う工程でした。ロボットに知能を持たせるという課題は、統合された使いやすいソフトウェアおよびハードウェアのプラットフォームがなかったため、ずっと解決されずにいました。大規模なロボティクス開発は最近まで、操作しながらロボットのシミュレーションを行う、特別なプログラミングを必要としていました。

Isaac SDK ロボティクス開発者向けツールボックスは、それを変えるものであり、これが 4 月に、一般向けに提供されるようになります。

このツールボックスは開発者にIsaac のアプリケーション、GEM (ロボット機能のライブラリ)、Robot Engine および Sim を提供します。これにより、メーカーや研究者、スタートアップ企業は、次世代のロボットの認知、ナビゲージョンおよびマニピュレーションに AI を簡単に利用できるようになるため、数百時間の開発時間の節約が可能になります。

コアになるのは Isaac Robot Engine であり、これによって開発者はモジュール式で高速のロボティクスアプリケーションを、NVIDIAのロボティクス向けレファレンスデザインを含め、Jetson プラットフォーム上に簡単に構築できるようになります。

また20 種類以上のGEMを揃えており、ナビゲーションや認識のアルゴリズムのようなロボティクスの複雑なタスクも即座に実装して動作確認することが可能です。それらのGEM はNVIDIA Jetson AGX プラットフォーム向けに開発され最適化された、ロボティクスの基本的かつ不可欠なアルゴリズムモジュールです。

これまで業界に欠けていたのは、信頼性の高い業界標準のソフトウェアおよびハードウェアのエコシステムをもとにした、包括的なプラットフォームでした。

それをもたらすためにNVIDIAはロボティクス向けハードウェアのレファレンスデザインをオープンソースとして公開いたします。

お帰り、Carter

開発者はIsaac SDK ロボット開発者向けツールボックスを使い、Jetson AGX Xavier を搭載したNVIDIAの自律動作型デリバリー/ロジスティックロボットの「Carter」をもとにして、アプリケーションを作成することができます。

あらゆる規模の企業がこれを使って自らをナビゲートし、物をあちこちに移動させるロボットを動作させるアプリケーションを生み出すことができるのです。

Kaya と Nano の融合

また、研究者や個人の開発者はこの開発者向けツールボックスを使い、低コストの Jetson Nano を搭載したロボット「Kaya」を元にしてアプリケーションを作成し、自律動作マシンを誕生させることができます。

Jetson Nano

Jetson Nano は、個人開発者やクリエーター、ホビイスト向けの 99 ドルの開発者キットと、量産アプリケーションを見据えたエッジシステムを開発する企業向けの、すぐにでも量産製品への実装が可能な129 ドルのモジュールの 2 種類が用意されています。

価格が安くても、演算性能が低いわけではありません。中身を見れば472 GFLOPS の演算性能でAI ワークロードを実行できることが分かります。

Jetson Nano 開発者キットは現在すでに入手可能となっています。Jetson Nano モジュールは、2019 年 6 月より入手可能となります。

Isaac GEM

GEM はNVIDIA Jetson AGX プラットフォーム向けに開発され最適化された、ロボティクスの基本的かつ不可欠なアルゴリズムモジュールです。たとえば開発者は GEM によって障害物回避やライダーを使った位置推定、パスプランニング、マップ作成といった SLAM ナビゲーション機能を簡単に追加でき、音声命令検知といった人間とのインタラクションも可能になります。

Isaac Robot Engine

Isaac Robot Engine は開発者がロボットに実装するモジュラーアプリケーションを簡単に書けるようにするためのフレームワークです。Isaac Robot Engine はJetson AGX Xavier、Jetson TX2 および Jetson Nano といった、すべての NVIDIA Jetson ファミリと GPU 搭載のワークステーションの組み合わせで性能を発揮するように最適化されています。

Isaac Robot Engine は複雑で高度に並行化された演算グラフの構築に必要な、先進のモニタリングおよびデバッグ機能をユーザーに提供します。その機能には、センサーデータのロギングおよび再生、効率的なメモリー管理、ならびにウェブベースのライブでの可視化などが含まれています。

Isaac Sim

Isaac Sim により開発者はロボットをテストする過程において周辺のものを壊す心配をすることなく、シミュレーションでロボットをテストできます。そこでテストされたアプリケーションは、Jetson で動作するロボットに展開できます。

Isaac SDK を使えば、これらの高い忠実度でのシミュレーションと先進のリアルタイムレンダリングが容易に可能になります。Isaac Sim はこのツールボックス内のツールおよびフレームワークと密接に結びついており、これらの組み合わせによって、納期のプレッシャーのなかでのロボット開発を加速するために不可欠な、データとアルゴリズムのロボットへの転送を簡単に行えるようになります。

Isaac Sim はバーチャルなロボティクスラボラトリであり、その高性能な3Dシミュレーターによって未来のロボットの研究および設計をシミュレーションがない場合よりもより安価に、より早くできるようになります。

ロボットはまもなくどこでも見られるようになり、多くの人々がロボットと一緒に仕事をし、生活するようになるでしょう。安全性を確保するには新しく、よりよい方法でロボティクスシステムを設計しテストする必要があります。

Isaac Sim により、これまで数か月かかっていた開発およびテストが数分でできるようになるかもしれません。